一時所得とは?計算方法や税率・確定申告不要なケースや雑所得との違いも!


一時所得には何が含まれる? 確定申告不要なケースも!
「懸賞や競馬で大金を手に入れた!」「生命保険の満期保険金が入金された」など、突発的に大きな金額が入った場合は、一時所得として確定申告が必要な場合があります。 では、一時所得にはどのようなものが含まれ、一時所得がいくらあった場合に確定申告が必要なのでしょうか? この記事では、一時所得に含まれるものや雑所得との違い、確定申告における一時所得の計算方法などを解説します。
- 目次
一時所得とは?

まずは、一時所得がどのような所得なのか詳細を確認しておきましょう。
一時所得とは営利目的や労働の対価ではない所得のこと
一時所得とは、営利目的や労働の対価ではない所得のこと。以下の条件をすべて満たす所得になります。
一時所得とは
- 利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・退職所得・山林所得・譲渡所得のいずれにも該当しない
- 営利目的でない所得
- 労務の対価でない所得
つまり、臨時的な収入があった場合は一時所得に該当する可能性があるため注意しましょう。
一時所得に含まれるもの
では、具体的にどのような収入が一時所得に含まれるのでしょうか?
一時所得に含まれるもの
- 懸賞や福引の当選金
- コンテストなどで受け取った賞金
- 競馬・競輪・競艇・オートレースなどの払戻金
- 生命保険の満期保険金・解約返戻金
- ふるさと納税の返礼品
- 法人から贈与された金品
- 遺失物や埋蔵金の発見者が受け取る報奨金 など
ただし、生命保険の満期保険金や解約返戻金を、年金形式のように分割で受け取る場合は、雑所得に該当します。
また、宝くじやサッカーくじの払戻金は、法律で課税されないことが定められているため、一時所得を含むどの所得にも該当しません。
一時所得が50万円超ある場合は原則的に確定申告が必要
一時所得が発生した場合に気になるのが確定申告。確定申告とは、1年間の所得や控除額を計算して、所得税を申告納税する手続きのことです。
一時所得が50万円を超える場合は、勤務する会社で年末調整をしていても、自分で確定申告が必要になるため注意しましょう。
なお、実際には各種控除が適用された結果、確定申告が不要になるケースもあります。
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※1:国税庁|No.1490 一時所得
※2:国税庁|【確定申告書等作成コーナー】一時所得とは
確定申告が不要なケース
一時所得があっても、以下に該当する場合は確定申告の必要はありません。
一時所得があっても確定申告が不要なケース
- 給与所得者の場合:給与所得以外の所得が一時所得のみで、一時所得が90万円以下
- 年金受給者の場合:年金収入以外の所得が一時所得のみで、一時所得が90万円以下
- 一時所得以外の収入がない場合:一時所得の金額が146万円以下
上記のケースは、特別控除や基礎控除を差し引いた結果、確定申告不要の範囲内に納まるため、確定申告の必要はありません。
一時所得と雑所得の違い
一時所得と似た所得に「雑所得」があります。
雑所得とは、以下の10種類に分類される所得のうち、雑所得以外のいずれにも該当しない所得のことです。
■所得の区分
名称 | 概要 |
---|---|
利子所得 |
|
配当所得 |
|
不動産所得 |
|
事業所得 |
|
給与所得 |
|
退職所得 |
|
山林所得 |
|
譲渡所得 |
|
一時所得 |
①利子所得・配当所得・不動産所得・ ②営利目的でない所得 ③労務の対価でない所得 |
雑所得 |
|
雑所得には労務の対価として受け取れる側面がある点が、一時所得と異なります。
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一時所得の計算方法とは?

一時所得として得た収入は、全額が一時所得になる訳ではありません。一時所得は「収入金額−収入を得るためにかかった費用−50万円」で計算します。
収入を得るためにかかった費用とは経費のようなものです。競馬の払戻金の場合は馬券の購入費用、生命保険の満期保険金の場合は払込済保険料が該当します。
さらに、一時所得には50万円の特別控除があるため、収入から経費を差し引き、その後に最大50万円が差し引けます。
ただし、確定申告を行ううえで必要な課税一時所得は、一時所得の1/2の金額を申告します。「収入金額−収入を得るためにかかった費用−50万円×1/2」が課税一時所得になるため、注意しましょう。
一時所得の税率はどのように決まる?

確定申告は、1年間の所得や控除額を計算して所得税を申告納税する手続きのこと。課税一時所得の金額がわかったら、所定の税率を乗じて所得税を計算しますが、一時所得の税率はどのように決まるのでしょうか?
所得税の計算方法は大きく分けて「総合課税」と「申告分離課税」の2種類があります。
総合課税と申告分離課税
- 総合課税:総合課税対象の所得を合計し、その合計所得に対して税額を計算する方法
- 申告分離課税:他の所得と合算せずに該当所得を分離して税額を計算する方法
一時所得の課税方法は総合課税です。所得税を計算する際は、まず課税一時所得を含む以下の所得の合計金額を計算します。
総合課税対象の所得
- 利子所得(源泉分離される所得・特定公社債等の利子等を除く)
- 配当所得(源泉分離される所得を除く)
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 譲渡所得(土地・建物・株式等の譲渡による所得を除く)
- 一時所得(源泉分離される所得を除く)
- 雑所得(株式等の譲渡による所得・源泉分離される所得を除く)
合計所得金額を計算したら、以下の表で税率を確認し、所得税を計算します。
■所得税の税率
総所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円以上 | 5% | 0円 |
1,950,000円以上 | 10% | 97,500円 |
3,300,000円以上 | 20% | 427,500円 |
6,950,000円以上 | 23% | 636,000円 |
9,000,000円以上 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円以上 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
なお、2013年から2037年までは、所得税の他に復興特別所得税として「基準所得税×2.1%」も課税されるため、注意しましょう。(小数点以下、切り捨て)
※4:国税庁|No.2260 所得税の税率
※5:国税庁|No.2220 総合課税制度
※6:国税庁|No.2240 申告分離課税制度
生命保険の一時金や満期保険金は贈与税の対象になる可能性もある

生命保険の満期保険金などは一時所得に該当しますが、契約者と受取人が異なる場合は所得税ではなく贈与税の対象になるため、注意が必要です。
■契約形態による税金の違いの例(満期保険金の場合)
契約形態 | 契約者 | 被保険者 | 受取人 | 税金 |
---|---|---|---|---|
契約者と | 夫 | 夫 | 夫 | 所得税 |
夫 | 妻 | 夫 | ||
契約者と | 夫 | 夫 | 妻 | 贈与税 |
夫 | 妻 | 妻 | ||
夫 | 妻 | 子 |
贈与税は、1月1日から12月31日までの間に110万円を超える金額を贈与された場合に発生します。
一時所得に関するQ&A

最後に、一時所得に関するQ&Aをご紹介します。
Q:ふるさと納税の返礼品は一時所得に含まれる?
A:含まれます。ただし、実際には確定申告不要なケースが多いです。
ふるさと納税の返礼品は、経済的利益が無償である「寄付行為」に対する返礼品のため、営利目的ではないと判断されます。そのため、一時所得に含まれます。
一時所得の金額は「収入金額−収入を得るためにかかった費用−50万円」で計算します。返礼品の場合の収入金額は「寄付金額×0.3」で概算できます。
ふるさと納税の場合の「収入を得るためにかかった費用」は0円。そのため、「(寄付金額×0.3)−50万円」の金額が0円以下の場合は、一時所得が発生しません。結果的に、ふるさと納税の返礼品を受け取っていても確定申告が不要になります。
計算上は、寄付金額が167万円以上になると、一時所得が発生することになるため、注意しましょう。
なお、一時所得を計上するのは、返礼品を受け取った年です。寄付した年と返礼品を受け取った年が異なる場合は、返礼品を受け取った年の一時所得に含まれます。
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Q:一時所得は扶養認定に影響する?
A:原則的には影響します。
生命保険の満期保険金などを受け取り、課税一時所得の金額が48万円を超えた場合は、扶養から外れることになるため、注意しましょう。
Q:一時所得は年末調整で申告できる?
A:一時所得は年末調整で申告できないため、自身で確定申告が必要になります。
給与所得者で、「給与所得・退職所得以外の合計金額」が90万円(課税所得20万円)を超える場合は、自身で確定申告が必要になるため、注意しましょう。
Q:確定申告の必要があるのにしない場合はどうなる?
A:申告期限後に確定申告した場合は、延滞税や無申告加算税が課せられます。
確定申告の期限は、原則2月16日〜3月15日の間です。申告期限後に確定申告した場合は延滞税や無申告加算税が課せられるため、注意が必要です。
期限内に確定申告をしなかった場合のペナルティ
- 延滞税:期限の翌日から所得税を完納するまでの日数に応じて、最高14.6%の延滞税が課せられる
- 無申告加算税:納税額が50万円以下は15%、50万円超は20%の無申告加算税が課せられる
ただし、以下の条件を満たす場合は、無申告加算税は課せられず延滞税のみになります。
無申告課税が課せられないケース
- 期限後1ヶ月以内に自主的に確定申告した
- 法定納期限までに全額納付した
- 期限後の確定申告をした日の前日から過去5年以内に、無申告加算税もしくは重加算勢を課せられたことがない
また、青色申告をしている人が期限内に確定申告をしないと、控除金額が最大65万円から最大10万円に減額されます。さらに、繰戻し還付も受けられなくなってしまいます。
万一、期限内に確定申告することを忘れてしまった場合は、気づき次第すぐに申告を行うよう心がけましょう。
まとめ・一時所得が50万円を超える場合は確定申告が必要
一時所得とは営利目的や労働の対価ではない所得のこと。懸賞や福引の当選金、コンテストの賞金や競馬の払戻金、生命保険の満期保険金やふるさと納税の返礼品などが該当します。
一時所得が50万円を超える場合は、勤務する会社で年末調整をしていても、原則的には自分で確定申告が必要になるため注意しましょう。
参考資料
国税庁|No.1490 一時所得
国税庁|【確定申告書等作成コーナー】一時所得とは
国税庁|No.1500 雑所得
国税庁|No.2260 所得税の税率
国税庁|No.2220 総合課税制度
国税庁|No.2240 申告分離課税制度
国税庁|No.4402 贈与税がかかる場合
国税庁|ふるさと納税の返礼品の収入計上時期
国税庁|No.2024 確定申告を忘れたとき
この記事の監修者

岡地 綾子 【ファイナンシャル・プランナー】
2級ファイナンシャル・プランニング技能士。 年金制度や税金制度など、誰もが抱える身近な問題の相談業務を行う。 得意分野は、生命保険・老後の生活設計・教育資金の準備・家計の見直し・相続など。