遺族年金が廃止されるって本当?2025年の制度改正のポイントを解説!


遺族年金は廃止されるって本当!? 制度改正のポイントも!
近年、SNSなどを中心に「遺族年金が廃止される」との話題があがっていますが、それは事実なのでしょうか?専業主婦の人や遺族年金を受給中の人の中には不安を感じる人もいるでしょう。 この記事では、遺族年金廃止の真実や2025年の制度改正のポイントなどを解説します。
- 目次
遺族年金とは?

遺族年金とは、国民年金や厚生年金に加入している人が亡くなった場合に、遺族に対して支給される公的年金のことです。
遺族年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類があり、亡くなった人が加入していた年金により受け取れる遺族年金の種類が決まります。
■夫が亡くなった場合の妻が受け取れる年金の種類
亡くなった人 | 遺族年金の | 年金の種類 |
---|---|---|
自営業 | 子のいる妻 | 遺族基礎年金 |
子のない妻 | 寡婦年金 | |
会社員 | 子のいる妻 | 遺族基礎年金 |
子のない | 遺族厚生年金 | |
子のない | 遺族厚生年金 |
遺族年金を受給できるのは、生計を支えていた人が亡くなった場合です。そのため、万一の場合に自分がいくら遺族年金を受け取れるのか把握しておくことはとても重要です。
遺族基礎年金の対象者・受給期間
遺族基礎年金は、受給資格のある国民年金の被保険者が亡くなった場合に受け取れます。
受給対象者は、子のいる配偶者もしくは子です。ただし、子は以下の条件を満たしている場合に限られます。また、「亡くなった人に生活を維持されていた」ことが前提となるため、注意しましょう。
子の要件
- 18歳到達年の3月末までの子
- 障害等級1級・2級である20歳未満の子
遺族基礎年金の受給期間は、子が18歳に到達する年の3月末までとなります。障害等級1級・2級をもつ子の場合は20歳になるまでです。
※1:日本年金機構|遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
遺族厚生年金の対象者・受給期間
遺族厚生年金は、一定の要件を満たした厚生年金の被保険者が亡くなった場合に受け取れます。
受給対象者は、以下のうち優先順位の高い人です。遺族厚生年金も「亡くなった人に生活を維持されていた」ことが前提となります。
■以下のうち優先順位の高い人

子の要件は、遺族基礎年金と同様に以下の通りです。
子の要件
- 18歳到達年の3月末までの子
- 障害等級1級・2級である20歳未満の子
受給期間は、被保険者死亡時の年齢により異なります。
■年金加入者死亡時の年齢による受給期間
妻 | 夫 | |||
---|---|---|---|---|
年齢 | 30歳以上 | 30歳未満 | 55歳以上 | 55歳未満 |
子あり | 年金加入者が死亡した日の | 子に支給される | ||
子なし | 年金加入者が | 年金加入者が | 60歳から生涯 | 受給なし |
子の受給期間は、年金加入者が死亡した日の翌月から18歳に到達する年の3月末までとなります。障害等級1級・2級をもつ子の場合は20歳になるまでです。
なお、父母と祖父母は夫と同じ要件、孫は子と同じ要件になります。
※2:日本年金機構|遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
遺族年金が廃止されるって本当?

近年、SNSなどを中心に「遺族年金が廃止される」との話題があがっていますが、実際はどうなのでしょうか?
廃止ではなく2025年から見直しの予定がある
現在のところ、遺族年金が廃止になるという発表はありません。ただし、遺族年金制度の見直しが検討されています。
2024年7月に厚生労働省より遺族年金制度の一部見直し案が発表され、2025年から改正が始まる予定とされています。
遺族年金が改正されるのはなぜ?
大黒柱を失った家族の生活を支える遺族年金。なぜ、改正が行われるのでしょうか?
今回の改正の主な目的は、男女間の格差の減少です。現行制度の遺族厚生年金は、子のない55歳未満の夫には受給権がないなど、男女間の格差が問題視されていました。
しかし、一昔前に比べると就業状況は大きく変化しています。共働き世帯が増えた現在、「妻が死亡した場合の夫に対する保障も手厚くすべき」との考えから、今回の改正が検討されるようになりました。
遺族基礎年金改正のポイントとは?

では、今回の改正でどのような点が変わるのでしょうか?ここでは、遺族基礎年金の改正のポイントを解説します。
遺族基礎年金の改正のポイント
- 現行
- 「遺族基礎年金の生活維持要件に該当しない親の養育する子」は受給できない
- 改正後
- 以下に該当する場合の支給停止規定を見直す予定
■元配偶者に引き取られた場合

現行制度では「父母が離婚→夫が死亡→子に受給権が発生→母に引き取られる」場合、母と生計を共にするため子の遺族基礎年金が支給停止されますが、改正後は見直される予定です。
■配偶者が再婚した場合

現行制度では「父親が死亡→母親に受給権が発生→母親が再婚→母親の遺族年金支給停止→子が新しい父母と同居」の場合、父母と生計を共にするため子の遺族基礎年金は支給されませんが、改正後は見直される予定です。
■直系血族の養子になった場合

現行制度では「父親が死亡→子に受給権が発生→祖父母と養子縁組」の場合、父母と生計を共にするため子の遺族基礎年金は支給停止されますが、改正後は見直される予定です。
■配偶者の収入が850万円以上の場合

現行制度では「父親が死亡→母の収入が850万円以上ある→子は母と同居」の場合、収入要件を満たさない母と生計を共にするため、子の遺族基礎年金は支給停止されますが、改正後は見直される予定です。
※3:厚生労働省|遺族年金制度等の見直しについて
※4:厚生労働省|遺族年金制度等の見直しについて②
遺族厚生年金改正のポイントとは?

次に、遺族厚生年金の改正のポイントを確認してみましょう。主な改正ポイントは以下の5点です。
改正のポイント
- 受給期間が無期限から5年間へ短縮
- 有期給付加算の新設
- 死亡時分割の新設
- 850万円の年収要件の廃止
- 中高齢寡婦加算の廃止
■現行のイメージ(20〜50代の18歳未満の子のいない配偶者)

■改正後のイメージ(20〜50代の18歳未満の子のいない配偶者)

詳細を確認していきましょう。
受給期間が無期限から5年間へ短縮
1つ目は、受給期間が無期限から5年間へ短縮されることです。
現行の制度では、「子いる妻」や「子のない30歳以上の妻」の受給期間は無期限ですが、改正後は5年間の有期給付に段階的に変更されます。
また、現行の制度では、「子のない55歳未満の夫」には受給資格がありませんが、改正後は5年間の有期給付に変更されます。
配慮が必要な人には5年目以降も継続給付されることもある
受給期間が無期限から5年間に短縮されることで、生活が困窮する可能性も考えられます。そのような配慮が必要な人には、5年間の有期給付の後も給付が継続されることもあります。
配慮が必要な人
- 障害状態にある障害年金受給者
- 前年の所得に基づいて支給額の調整が必要な人
有期給付加算の新設
2つ目は、有期給付加算の新設です。
5年間の有期給付に変更すると受給総額が減少するため、「有期給付加算」が新設される予定になっています。
現行の遺族厚生年金の金額は、死亡した配偶者の老齢厚生年金の報酬比例部分の4/3ですが、改正後の5年間の有期給付期間で受け取れる金額は、報酬比例部分の4/3より多くなる予定です。
死亡時分割の新設
3つ目は、死亡時分割の新設です。
死亡時分割とは、死亡した被保険者の厚生年金の加入期間を分割して、配偶者の老齢厚生年金の加入期間に上乗せする制度です。
老齢厚生年金は、厚生年金の加入期間により年金受給額が異なります。加入期間が長いほど年金受給額も増えるため、死亡時分割により配偶者の加入期間が増えれば、配偶者が受け取れる年金受給額も増えることになるのです。
なお、上乗せの対象期間は、結婚してから被保険者の死亡時までの期間になります。
850万円の年収要件の廃止
4つ目は、850万円の年収要件の廃止です。
現行の制度では、遺族年金を受給できるのは年収が850万円未満、もしくは所得が655.5万円未満という要件があります。しかし、改正後には年収要件が廃止される予定のため「収入があるため遺族年金を受け取れない」というケースがなくなります。
中高齢寡婦加算の廃止
5つ目は、中高齢寡婦加算の廃止です。
中高齢寡婦加算とは、配偶者が死亡してから自身の老齢基礎年金を受給できるまで年金が無支給にならないように穴埋めするような支給のこと。遺族厚生年金に加算される制度の1つです。
■中高齢寡婦加算が支給されるケースの例①

■中高齢寡婦加算が支給されるケースの例②

上記のように、遺族基礎年金の支給停止から老齢基礎年金が支給されるまでの期間に支給されます。金額は、年間で612,000円です。(2024年現在)
現行ではこの中高齢寡婦加算制度がありますが、改正後は男女間の格差を無くすため段階的に廃止される予定になっています。
※3:厚生労働省|遺族年金制度等の見直しについて
※4:厚生労働省|遺族年金制度等の見直しについて②
遺族年金の見直し・廃止に関するQ&A

最後に、遺族年金の見直し・廃止に関するQ&Aをご紹介します。
遺族年金を今もらっている人はどうなる?
遺族年金をすでに受給している人は、現行制度の内容が維持されるため、改正による影響はありません。
現行の内容が適用されるのはどんな人?
60歳以上の人の配偶者や、すでに遺族年金を受給している人は、改正後も現行制度の内容が適用されます。
なお、20代〜50代の18歳未満の子のいる配偶者は、子を養育する期間は現行の制度内容が適用され、養育期間後から5年間の有期給付になります。
改正されるのはいつから?
2025年から、約25年かけて段階的に改正される予定です。
まとめ・遺族年金は廃止されないが制度内容の見直しが予定されている
近年SNSなどを中心に「遺族年金が廃止される」との話題があがっていますが、現在のところ、遺族年金が廃止になるという発表はありません。ただし、遺族年金制度の見直しが検討されています。
2024年7月に厚生労働省より遺族年金制度の一部見直し案が発表され、2025年から改正が始まる予定とされています。
改正の主な目的は、男女間の格差の解消。現行制度では、子のない55歳未満の夫には遺族年金の受給資格はありませんが、改正後は受給資格が発生します。
ただし、受給期間が無期限から5年間の有期給付に変更されるなど、一部の人にとっては大きな影響が予想される変更もあります。
遺族年金は大黒柱を失った家族を支える重要な制度です。この機会に、遺族年金の詳細を把握してみてはいかがでしょうか?
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参考資料
日本年金機構|遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構|遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
厚生労働省|遺族年金制度等の見直しについて
厚生労働省|遺族年金制度等の見直しについて②
この記事の監修者

岡地 綾子 【ファイナンシャル・プランナー】
2級ファイナンシャル・プランニング技能士。 年金制度や税金制度など、誰もが抱える身近な問題の相談業務を行う。 得意分野は、生命保険・老後の生活設計・教育資金の準備・家計の見直し・相続など。