年金を払わないとどうなる?差し押さえや将来の年金額への影響を徹底解説


年金を払わないと財産を 差し押さえられるって本当!?
「年金を払わないとどうなるの?」そんな疑問を持つ人は少なくありません。国民年金保険料を未納のまま放置すると、将来の年金額が大幅に減るだけでなく、万一のときに必要な遺族年金や障害年金が受け取れなくなる可能性があります。 さらに、延滞金の発生や財産の差し押さえといった深刻な事態に発展することも考えられます。 この記事では、年金を払わない場合の具体的なリスクや払えないときに使える免除・猶予制度を解説します。
- 目次
- 国民年金保険料は払わないといけない?「払わない」という選択肢はあり?
- 国民年金保険料を払わないとどうなる?
- 将来年金を受け取れなくなる・受給額が減額される
- 遺族年金や障害年金を受け取れなくなる
- 延滞金が発生する
- 財産を差し押さえされる
- 年金保険料を払わないと年金受給額にどれくらい影響がある?
- 国民年金保険料を払えない場合はどうすればいい?
- 国民年金保険料の免除申請を行う
- 国民年金保険料の納付猶予猶予申請を行う
- 年金の未納に関するQ&A
- 学生特例で年金を払わないままだとどうなる?
- 会社に勤めたら自分で年金を払わなくてもいい?
- 60歳を過ぎたら年金は払わなくていい?
- 年金を払っていない期間がどれくらいなら後から支払える?
- 海外に在住している間は年金を払わなくていい?
- 未納期間があるかどうか確認するには?
- 年金を払わないと信用情報に影響する?
- 貯金があれば年金を払わなくても大丈夫?
- まとめ・年金保険料は「払わない」選択をせずに免除や猶予を検討して
国民年金保険料は払わないといけない?「払わない」という選択肢はあり?

「どうせ将来もらえないから」「老後は自分で備えるから」という理由から、国民年金保険料を払わない選択を考える人もいます。
しかし、「国民年金法」第7条では、日本国内に住む20歳以上60歳未満の人はすべて国民年金に加入することが定められています。また、第88条では、被保険者には保険料の納付義務があると明記されています。
つまり、国民年金保険料の納付は国民の義務であり、「払わない」という選択肢は認められていません。
そして、払わない期間が長くなれば、将来受け取れる年金額は確実に減ります。
財政状況は100年間の見通しを踏まえて少なくとも5年ごとに検証されており、「将来もらえない」という話は過剰に受け止めないことが重要です。年金は老後の生活を支える大切な制度であることを理解しておきましょう。
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国民年金保険料を払わないとどうなる?

国民年金保険料を払わないまま放置すると自分の将来の年金受給だけでなく、家族にも深刻な影響を及ぼす可能性があります。
将来年金を受け取れなくなる・受給額が減額される
国民年金保険料を払わないと、将来年金を受け取れなくなったり受給額が減額されたりする可能性があります。
年金の受給額は、保険料を納めた期間に応じて決まります。満額(2025年度は831,700円)を受け取るためには、480ヶ月の納付が必要です。納付期間が半分なら、年金額も約半分に減ってしまいます。
また、老齢基礎年金を受給するためには、「保険料納付済期間・保険料免除期間・猶予期間」を合算した期間が10年以上必要です。受給資格を満たしていない場合、年金は一切受け取れません。
老後に年金を受け取れない場合は老後資金を全額自己負担で用意する必要があるため、生活の質の低下や医療・介護費への対応が困難になる、などのリスクが高くなるでしょう。
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遺族年金や障害年金を受け取れなくなる
国民年金保険料を払わないと、万一のときに必要な遺族年金や障害年金を受け取れなくなります。
遺族年金と障害年金
- 遺族年金とは:国民年金や厚生年金に加入している人が亡くなった場合に遺族に対して支給される公的年金:
- 障害年金とは:病気や怪我により日常生活が制限されることになった場合に受け取れる公的年金
遺族年金も障害年金も受給するためには一定の要件を満たす必要があり、要件の中には「年金保険料納付要件を満たしている」ことが含まれます。つまり、国民年金保険料を払わないと万一のときに受け取れる年金が受け取れなくなってしまうのです。
年金は「予期せぬ事態への備え」という側面もあることを理解することが大切です。
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延滞金が発生する
国民年金保険料を払わずに後から支払う場合は、延滞金が発生してしまいます。
国民年金保険料の支払い期限が過ぎると、日本年金機構から「最終催告状」が送付されます。指定期限までに納付しなければ延滞金が加算され、元の保険料より高額を支払う必要が生じてしまいます。
財産を差し押さえされる
国民年金保険料を払わずに放置していると、最悪の場合は財産を差し押さえられる可能性もあります。
ただし、突然差し押さえが行われる訳ではありません。以下のように段階を踏み、それでも年金保険料を払わない場合、財産の差し押さえが行われることがあります。
財産差し押さえまでの流れ
- 催告状・特別催告状が届く:日本年金機構から電話・訪問・書面などによる納付督促が実施される
- 最終催告状が届く:強制徴収対象者に赤い封筒の「最終催告状」が届く
- 督促状が届く:この段階から延滞金が発生する
- 差し押さえ予告通知書が届く:銀行口座・自動車・不動産などの差し押さえ予告の通知書が届く
- 差し押さえが実施される
財産の差し押さえは、年間所得300万円以上かつ未納期間7ヶ月以上が対象になりやすく、世帯主や配偶者の財産まで差し押さえられる可能性があります。つまり、年金の未納は自分だけの問題ではなく、家族にも影響が及ぶ問題なのです。
年金保険料を払わないと年金受給額にどれくらい影響がある?

では、年金保険料を払わないと、年金受給額にどれくらいの影響があるのでしょうか?ここでは、「1ヶ月・1年・10年・20年・30年」未納した場合の保険料と年金受給額をシミュレーションしてみます。
なお、保険料は2025年度の月額17,510円、年金受給額は2025年度の831,700円を基本として計算しています。また、厚生年金は未加入としています。
未納期間 | 払込保険料 | 老齢基礎年金 |
---|---|---|
なし | 8,404,800円 | 831,700円 |
1ヶ月 | 8,387,290円 | 829,968円 |
1年 | 8,194,680円 | 810,908円 |
10年 | 6,303,600円 | 623,775円 |
20年 | 4,202,400円 | 415,850円 |
30年 | 2,101,200円 | 207,925円 |
金額だけ見るとそれほど大きな違いはないように感じる人もいるかもしれませんが、老齢基礎年金は生きている限り支給されます。
1年間では大きな差ではなくても、一生涯支給されると考えると大きな差になり、老後の生活に大きな影響を及ぼす要因になるでしょう。
※2:日本年金機構|国民年金保険料
※3:日本年金機構|令和7年4月分からの年金額等について
国民年金保険料を払えない場合はどうすればいい?

国民年金保険料を払わずに放置すると、さまざまなリスクが生じます。しかし、年金保険料の納付義務は40年間。この40年の間に、失業や療養などにより国民年金保険料の納付が難しいことも考えられます。
そんなときは、国民年金保険料の免除制度や納付猶予制度を申請しましょう。
国民年金保険料の免除申請を行う
年金保険料免除申請制度とは、保険料の納付が経済的理由で困難な場合に免除される制度。本人・配偶者・世帯主の前年の所得が一定以下の場合や失業した場合、申請することにより、年金保険料の全額もしくは一部が免除されます。
免除される割合は、前年の所得により「全額・4分の3・半額・4分の1」の4種類のいずれかになります。
■前年の所得の目安と免除割合
免除割合 | 前年の所得 |
---|---|
全額 | (扶養親族等の数+1) |
4分の3 | 88万円+扶養親族等控除額 |
半額 | 128万円+扶養親族等控除額 |
4分の1 | 168万円+扶養親族等控除額 |
扶養親族等控除額とは
- 70歳以上の同一生計配偶者|老人扶養親族1人当たり:48万円
- 16歳以上23歳未満の扶養親族1人当たり:63万円
- 上記以外の同一生計配偶者|扶養親族1人当たり:38万円
免除されている期間は老齢基礎年金の受給資格の算定期間に含まれますが、受給額は全額納付した場合に比べて低額になります。

老齢基礎年金の受給額の計算方法
- ①納付済月数+(全額免除月数×1/2)+(3/4免除月数×5/8)+(半額免除月数×6/8)+(1/4免除月数×7/8)を求める
- ②老齢基礎年金の満額×(①の金額÷480)で老齢基礎年金受給額を求める
なお、年金受給額を満額にしたい場合は、免除・猶予期間中の年金保険料を追納することも可能。10年以内なら、満額までの不足分の年金保険料を後から納付できます。
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国民年金保険料は追納するべき?分割納付や年末調整のやり方も解説!
国民年金保険料の納付猶予猶予申請を行う
年金保険料納付猶予制度とは、保険料の納付が経済的理由で困難な場合に猶予される制度のことです。
本人・配偶者の前年の所得が「(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円以下」である20歳以上50歳未満の人が対象で、申請することにより、年金保険料の納付が猶予されます。申請する月が1〜6月の場合は、前々年の所得で判断されます。
なお、猶予されている期間は老齢基礎年金の受給資格の算定期間に含まれますが、受給額を計算する際の納付月数には反映されません。
年金の未納に関するQ&A

最後に、年金の未納に関するQ&Aをご紹介します。
学生特例で年金を払わないままだとどうなる?
学生納付特例で猶予された期間は、年金受給資格にはカウントされますが、年金額には反映されません。追納しない場合は将来の年金額が減ってしまうため、余裕資金ができたときに追納を検討しましょう。
会社に勤めたら自分で年金を払わなくてもいい?
会社員として厚生年金に加入すると、保険料は給与から自動天引きされるため、自分で振り込み手続きをする必要はありません。ただし、支払っていないわけではなく給与からは控除されています。
60歳を過ぎたら年金は払わなくていい?
60歳に到達した翌月以降は、国民年金の納付義務はなくなります。ただし、受給資格期間が足りない場合は任意加入して保険料を支払うことが可能です。
※5:日本年金機構|老齢基礎年金を受けるのに必要な加入期間を満たしていませんが、60歳を過ぎても国民年金に加入できますか。
年金を払っていない期間がどれくらいなら後から支払える?
国民年金保険料は、納付期限から2年以内であれば後から支払うことが可能です。
※6:日本年金機構|保険料を納めなかった期間がありますが、今から納めることができますか。
海外に在住している間は年金を払わなくていい?
海外移住で日本国内の住所がなくなると、国民年金の納付義務はなくなります。ただし、将来の年金受給額を確保するために任意加入することも可能です。
※7:日本年金機構|日本国外・国内へ出入国する方へ 国民年金の手続きが必要です!!
未納期間があるかどうか確認するには?
国民年金の未納期間があるかどうかは、郵送で届く「ねんきん定期便」やWEBの「ねんきんネット」で確認できます。
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年金を払わないと信用情報に影響する?
国民年金の未納情報は、直接信用情報に記録されません。ただし、年金保険料をクレジットカード払いにして支払いを滞納した場合は、信用情報に遅延履歴が残ります。
貯金があれば年金を払わなくても大丈夫?
貯金があっても国民年金の納付は国民の義務のため、払わなくて大丈夫ということはありません。
将来の安心のために年金保険料は納付し、老後資金の貯蓄も並行するのが賢明です。また、iDeCoやNISAも検討して、早い段階で将来設計を立てましょう。
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まとめ・年金保険料は「払わない」選択をせずに免除や猶予を検討して
国民年金保険料を払わないままにしておくと、将来の年金受給額の減額や受給資格の喪失、さらには延滞金や財産の差し押さえといった深刻なリスクが考えられます。
しかし、免除や猶予といった救済制度を活用すれば、将来の受給資格を守ることが可能です。
「払わない」という選択肢ではなく、「制度を知って適切に対処する」ことが大切です。年金保険料の納付に少しでも不安を感じたら、早めに年金事務所や自治体の窓口で相談しましょう。
参考資料
厚生労働省|国民年金の保険料の納付義務
日本年金機構|国民年金保険料
日本年金機構|令和7年4月分からの年金額等について
日本年金機構|国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度
日本年金機構|老齢基礎年金を受けるのに必要な加入期間を満たしていませんが、60歳を過ぎても国民年金に加入できますか。
日本年金機構|保険料を納めなかった期間がありますが、今から納めることができますか。
日本年金機構|日本国外・国内へ出入国する方へ 国民年金の手続きが必要です!!
この記事の監修者

岡地 綾子 【ファイナンシャル・プランナー】
2級ファイナンシャル・プランニング技能士。 年金制度や税金制度など、誰もが抱える身近な問題の相談業務を行う。 得意分野は、生命保険・老後の生活設計・教育資金の準備・家計の見直し・相続など。