理学療法士の現実|年収が低いって本当?年齢別の平均年収や年収アップの方法も
理学療法士の現実! 年収1000万を目指すには?
景気に左右されない医療介護分野で働ける理学療法士。年収がどのくらいか気になる人も多いでしょう。この記事では、理学療法士の現実と今後、平均年収や年収アップを目指す方法を解説します。
- 目次
- 理学療法士の平均年収はどれくらい?
- 理学療法士全体の平均年収は約430万円
- 年代別の平均年収|20代・30代・40代でどう変わる?
- 施設規模別の平均年収|100人未満施設と1000人以上施設でどう変わる?
- 経験年数別の平均年収|1年目と15年以上でどう変わる?
- 公務員理学療法士の平均月額給与は約36.8万円
- 医療介護職の平均年収ランキング
- 理学療法士の現実とは?年収が低いって本当?
- 理学療法士の年収は労働者全体と比較するとやや低い
- 理学療法士の年収が低い原因は複数ある
- 需要より供給の方が高くなりつつあることが理学療法士の現実
- 訪問介護などの分野に幅を広げると理学療法士の今後は明るい
- 理学療法士で年収1000万円を目指すには?年収アップの方法
- 今の職場で昇進を目指す
- スキルアップできる資格を取得する
- 独立・開業する
- 副業する
- まとめ・新たな資格取得で理学療法士の活躍の幅を広げよう
理学療法士の平均年収はどれくらい?
理学療法士(Physical Therapist)とは国家資格を取得しているリハビリのプロです。
ケガや病気による後遺症などにより、身体機能に支障をきたす人のリハビリをサポートすることが主な仕事。「立つ・歩く・座る」などの基本動作が問題なくできるようサポートします。
そんな重要な理学療法士の年収はどのくらいなのでしょうか?ここでは、厚生労働省のデータを基に理学療法士の年収をご紹介します。
理学療法士全体の平均年収は約430万円
理学療法士全体の平均年収は4,306,800円です。
内訳
- 月収:300,700円
- 賞与など:698,400円
- 年収:4,306,800円
一方、全産業の平均年収は「月収311,800円・賞与884,500円・年収4,626,100円」です。理学療法士の平均年収は産業全体よりやや低いものの、ほぼ平均的であることがわかります。
年代別の平均年収|20代・30代・40代でどう変わる?
では、年代によって平均年収はどのように変わるのでしょうか?以下は、理学療法士の年代別の平均年収です。
■理学療法士の年代別の平均年収
年齢 | 月収 | 賞与など | 年収 |
---|---|---|---|
20〜24歳 | 252,300 | 330,200 | 3,357,800 |
25〜29歳 | 271,900 | 657,600 | 3,920,400 |
30〜34歳 | 292,900 | 699,300 | 4,214,100 |
35〜39歳 | 317,400 | 746,100 | 4,554,900 |
40〜44歳 | 341,200 | 881,400 | 4,975,800 |
45〜49歳 | 354,400 | 927,100 | 5,179,900 |
50〜54歳 | 346,400 | 993,600 | 5,150,400 |
55〜59歳 | 388,100 | 1,044,600 | 5,701,800 |
60〜64歳 | 328,400 | 687,500 | 4,628,300 |
65〜69歳 | 315,700 | 881,000 | 4,669,400 |
※1:厚生労働省|令和4年賃金構造基本統計調査の概況を基に作成
年齢が上がるに連れ年収も上がり、50代でピークを迎えることがわかります。ただし、他の業種に比べると年齢による昇給の幅は少なめです。
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施設規模別の平均年収|100人未満施設と1000人以上施設でどう変わる?
働く施設の規模によっても平均年収は異なります。
■施設規模別の平均年収
施設規模 | 月収 | 賞与など | 年収 |
---|---|---|---|
100人未満 | 317,000 | 507,800 | 4,311,800 |
100人以上 | 290,600 | 681,200 | 4,168,400 |
1000人以上 | 319,000 | 900,900 | 4,728,900 |
※1:厚生労働省|令和4年賃金構造基本統計調査の概況を基に作成
1000人規模の施設の方が多少年収が高い傾向にあります。なお、国公立の施設と民間の施設でも多少の差はあるようです。
経験年数別の平均年収|1年目と15年以上でどう変わる?
一般的には、同じ職種を長く経験するほど平均年収が上がる傾向にあります。では、理学療法士はどうでしょうか?
■経験年数別の平均年収
経験年数 | 月収 | 賞与など | 年収 |
---|---|---|---|
初任給 | 239,100 | 57,500 | 2,926,700 |
1〜4年 | 259,800 | 604,800 | 3,722,400 |
5〜9年 | 277,000 | 699,000 | 4,023,000 |
10〜14年 | 305,900 | 765,700 | 4,436,500 |
15年以上 | 340,100 | 975,700 | 5,056,900 |
※1:厚生労働省|令和4年賃金構造基本統計調査の概況を基に作成
他の職種と同様に、経験年数に比例して平均年収も上がることがわかります。経験年数が15年を超えると、産業全体の平均年収も超えてきます。
平均初任給は約23.9万円
理学療法士の平均初任給は約23.9万円。賞与を含めた年収は約292.6万円です。産業全体の平均初任給は約22.8万円のため、月収だけを比較すると理学療法士の初任給はやや高い方になります。
公務員理学療法士の平均月額給与は約36.8万円
公務員理学療法士とは、公務員として理学療法士の仕事を行う人のこと。理学療法士の資格に加えて、公務員試験にも合格する必要があります。
公務員理学療法士の働く場所は、主に国立病院や自治体の公立病院、市役所などの行政機関です。
総務省のデータによると、理学療法士を含む「薬剤師・医療技術職」の平均月額給与は約36.8万円、各種手当を含む月額は約39.3万円です。
一般的な理学療法士の平均月額給与は約30万円のため、公務員の方が多少高い月額であることがわかります。
医療介護職の平均年収ランキング
医療介護業界には、理学療法士の他にもさまざまな職種があります。いつの時代も景気に左右されない医療介護業界の中で、平均年収が高いのはどのような職種なのでしょうか?
■医療介護職の平均年収ランキング
順位 | 職種 | 月収 | 賞与など | 年収 |
---|---|---|---|---|
1 | 医師 | 1,069,100 | 1,135,700 | 13,964,900 |
2 | 歯科医師 | 622,900 | 629,300 | 8,104,100 |
3 | 獣医師 | 494,700 | 929,800 | 6,866,200 |
4 | 助産師 | 398,700 | 1,057,700 | 5,842,100 |
5 | 薬剤師 | 414,600 | 858,700 | 5,833,900 |
6 | 診療放射線 | 368,700 | 1,013,000 | 5,437,400 |
7 | 臨床検査 | 347,300 | 921,600 | 5,089,200 |
8 | 看護師 | 351,600 | 862,100 | 5,081,300 |
9 | 保健師 | 333,800 | 807,200 | 4,812,800 |
10 | その他の保健 | 313,100 | 675,800 | 4,433,000 |
11 | 理学療法士 | 300,700 | 698,400 | 4,306,800 |
12 | 歯科技工士 | 328,700 | 354,300 | 4,298,700 |
13 | 准看護師 | 296,200 | 627,300 | 4,181,700 |
14 | その他の | 287,300 | 708,900 | 4,156,500 |
15 | 介護支援 | 284,500 | 643,900 | 4,057,900 |
16 | 保育士 | 266,800 | 712,100 | 3,913,700 |
17 | 歯科衛生士 | 282,700 | 432,300 | 3,824,700 |
18 | 栄養士 | 264,200 | 620,300 | 3,790,700 |
理学療法士は11位で、ほぼ中間に位置します。受験資格を得るまでに最低6年かかる医師や薬剤師は、医療介護業界の中でも特に高い年収を得られることがわかります。
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理学療法士の現実とは?年収が低いって本当?
ここまで理学療法士の年収についてさまざまな角度から確認してきました。「理学療法士の年収は低い」という噂を聞いたことがある人もいるかもしれませんが、それは本当でしょうか?
ここでは、理学療法士の現実を確認していきましょう。
理学療法士の年収は労働者全体と比較するとやや低い
理学療法士全体の平均年収は4,306,800円、全産業の平均年収は4,626,100円です。つまり、理学療法士の平均年収は産業全体よりやや低いことが現実です。
初任給は産業全体よりやや高いのに全体的な平均年収が低くなってしまうことには、どのような原因があるのでしょうか?
理学療法士の年収が低い原因は複数ある
理学療法士の年収がなぜ低いのか、考えられる原因は主に以下の3点です。
理学療法士の年収が低い原因
- 昇給率が低いため
- 診療報酬制度による制限があるため
- 理学療法士が増加しているため
昇給率が低いため
1つ目は、理学療法士の昇給率は他の職種に比べて低いためです。
以下は、初任給を0基準とした場合の理学療法士と電気通信技術者の昇給率を比較したものです。
経験年数 | 理学療法士 | 電気通信技術者 | ||
---|---|---|---|---|
月収 | 昇給率 | 月収 | 昇給率 | |
初任給 | 239,100 | 0 | 266,800 | 0 |
1〜4年 | 259,800 | 6.2 | 283,300 | 6.1 |
5〜9年 | 277,000 | 16.9 | 340,600 | 27.6 |
10〜14年 | 305,900 | 36.0 | 375,600 | 40.7 |
15年以上 | 340,100 | 61.4 | 446,600 | 67.3 |
※1:厚生労働省|令和4年賃金構造基本統計調査の概況を基に作成
理学療法士の昇給率より電気通信技術者の昇給率の方が大きいことがわかります。一般的には賞与などの特別手当も基本給を基にしているため、昇給率が低いと年収も上がりづらくなってしまうのです。
診療報酬制度による制限があるため
2つ目は、診療報酬制度による制限があるためです。
理学療法士の仕事は分単位で診療報酬の点数が割り振られます。リハビリ指導は1単位20分と決められているため、実働8時間の場合24単位までしか働けません。
実際の業務にはリハビリ以外の業務を行う必要もあるため、1日の平均単位数は18〜24程度。さらに、診療報酬点数は経験年数で変わらないため、理学療法士1年目の人が行っても20年目のベテランが行っても点数に違いはありません。
つまり、経験が給与に反映されにくい仕組みになっているのです。
理学療法士が増加しているため
3つ目は、理学療法士が増加しているためです。
理学療法士の数は年々増加しています。以下は、日本理学療法士協会が発表している理学療法士の数の推移です。
■理学療法士の数の推移
※3:公益社団法人日本理学療法士協会|会員の分布を基に作成
ここ10年間で4万人以上増加していることがわかります。高齢化により需要数も増加していますが、現在は供給の方がやや上回っていることが現実です。
理学療法士は需要と供給が同等、もしくは供給がやや上回っていることから求人数が多くありません。そのため、求人数に対しての応募数が多く、結果、給与が上がりづらくなってしまうのです。
需要より供給の方が高くなりつつあることが理学療法士の現実
理学療法士の数は今後も増加すると予想されています。そのため、今後はさらに需要より供給の方が高くなる可能性があるでしょう。
これから理学療法士になろうと思っている人や理学療法士で年収アップを目指したい人は、他の資格を取得して業務の幅を広げる必要があるかもしれません。
訪問介護などの分野に幅を広げると理学療法士の今後は明るい
理学療法士として仕事の幅を広げるならば、訪問介護がおすすめです。
供給より需要の方が高い介護業界では、常に働く人が足りない状態です。理学療法士のスキルを活かすのであれば、訪問介護が狙い目です。
訪問介護とは、利用者の自宅に訪問して、食事や入浴排泄などの身体介護や掃除・洗濯・調理などの生活援助を行う仕事。自宅でリハビリ指導を行う「訪問リハビリ」もあります。
介護業界では、理学療法士の知識やスキルがある人は高待遇で迎えてくれます。そのため、介護の分野に視野を広げてみれば、理学療法士の今後は明るいでしょう。
理学療法士で年収1000万円を目指すには?年収アップの方法
年収は働くうえでの大きなモチベーション。「好きな仕事で年収1000万円を目指したい」と考える人もいるでしょう。
しかし、一般的な施設で働く場合、理学療法士として年収1000万円を超えるのは難しいことが現実です。ただし、努力次第で今の年収を上げることは可能です。
ここでは、理学療法士として働きながら年収をアップさせる方法をご紹介します。
今の職場で昇進を目指す
1つ目は、今の職場で昇進を目指すことです。
一般的には、管理職になれば役職手当が支給されるようになります。施設ごとに金額は異なりますが、手当が大きい施設の場合、年間で100万円程度増えることもあるでしょう。
理学療法士は若い世代でも管理職になれる可能性の高い仕事です。まずは、今の職場の昇進規定を確認してみましょう。
スキルアップできる資格を取得する
2つ目は、スキルアップできる資格を取得することです。理学療法士としてスキルアップできるような資格を取得することで、仕事の幅が広がったり能力手当が付与されたりする可能性があります。
認定理学療法士
認定理学療法士は、専門性の高い技術や知識を身につけることを目的として、日本理学療法士協会が運営している資格です。
21の分野に分かれており、自分の選んだ分野の資格を取得することでその分野のスペシャリストとして認められます。
■認定理学療法士の分野
神経理学療法 |
|
---|---|
運動器理学療法 |
|
内部障害理学療法 |
|
生活環境支援 |
|
物理療法 |
|
教育管理理学 |
|
認定理学療法士を取得するためには、まず、登録理学療法士の資格を取得するなどの前提条件を満たす必要があります。
その後、選んだ分野の認定試験に合格することで認定理学療法士になれますが、5年ごとに更新する必要もあります。
なお、2023年3月末時点での認定理学療法士の数は14,567名です。理学療法士全体の約10.6%しかいないため、取得すればそれぞれの分野で活躍の幅が広がるでしょう。
専門理学療法士
専門理学療法士は、理学療法士の中でもっとも専門性の高い資格です。13の分野に分かれており、自分の選んだ分野の資格を取得することでその分野のスペシャリストとして認められます。
専門理学療法士の分野
- 基礎理学療法
- 神経理学療法
- 小児理学療法
- 運動器理学療法
- スポ-ツ理学療法
- 心血管理学療法
- 呼吸理学療法
- 糖尿病理学療法
- 地域理学療法
- 予防理学療法
- 支援工学理学療法
- 物理療法
- 理学療法教育
「選んだ分野のスペシャリスト」という意味では認定理学療法士と似ていますが、専門理学療法士の方がより上位資格になります。
専門理学療法士になるためには、各分野の研修や都道府県学会などに参加後、学術大会で発表・論文の提出など、さまざまな勉強を行う必要があります。また、認定理学療法士と同様に5年ごとに更新を行わないとなりません。
なお、2023年3月末時点での認定理学療法士の数は1,712名です。理学療法士全体のわずか1.25%しかいないため、取得すればそれぞれの分野で活躍の幅が広がります。
介護系の資格
介護業界に幅を広げて働く場合、介護系の資格は取得しておくことをおすすめします。まずは、介護職の入門である「介護職員初任者研修」を取得しましょう。
他には、以下の研修を受けると理学療法士としての幅が広がるでしょう。
理学療法士におすすめの介護系研修
- 重度訪問介護従事者養成研修:重度の肢体不自由者を訪問介護でサポートする仕事の研修
- 福祉用具専門相談員:利用者に適した福祉用具のアドバイスや選定をする仕事の研修
- 介護予防運動指導員:利用者の筋力トレーニングや食事指導を行う仕事の研修
介護系の資格は、今後仕事だけでなくプライベートでも役に立つかもしれません。
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独立・開業する
3つ目は、独立や開業をすることです。給与や賞与に限界を感じる場合は、思い切って独立することも1つの方法です。
ただし、日本では理学療法士の資格だけでは医療保険適用となる施設の開業はできないため、医療保険適用とならない「整体院」として開業することをおすすめします。
その場合は、柔道整復師や鍼灸師の資格も取得するとより施術の幅が広がるでしょう。
なお、アメリカやオーストラリアなどのリハビリ先進国では、理学療法士でも開業が可能。理学療法士の社会的地位が日本よりも高いため、独立したい人は海外を視野にいれてみるのもいいかもしれません。
副業する
4つ目は、副業することです。「今の施設で頑張りたい。でも、収入も増やしたい」という場合は、理学療法士の知識やスキルが活かせる副業を検討してみましょう。
理学療法士が活かせる副業
- 訪問リハビリ
- スポーツトレーナー
- ジムのトレーナー など
訪問リハビリは副業として行うことも可能。一般的には1訪問当たりの単価が定められており、訪問リハビリの単価は高めといわれています。
例えば「1訪問40分(614単位)・1単価10円の場合」、1件訪問すると6,140円の収入になります。1日の訪問数が多くなれば収入も比例して上がるうえ、自分のペースで働けるため、本業への影響も大きくありません。
また、近年はマンツーマンで指導するパーソナルジムの需要が高いため、ジムのトレーナーもおすすめです。
まとめ・新たな資格取得で理学療法士の活躍の幅を広げよう
理学療法士の平均年収は、約430万円。産業全体の平均年収と同等もしくはやや低めです。また、年々理学療法士の数は増加しているため、今後は今よりも求人数が少なくなる可能性があります。
高齢化社会が進む中、訪問介護や訪問リハビリは需要の高い仕事で、理学療法士のスキルが活かせます。副業にもおすすめです。せっかくの理学療法士としての知識やスキルを無駄にしないよう、活躍の幅を広げてみてはいかがでしょうか?
年収1000万円を目指せる職業!手取り額や税金・年金受給額も紹介
参考記事
厚生労働省|令和4年賃金構造基本統計調査の概況
総務省|令和4年地方公務員給与の実態
公益社団法人日本理学療法士協会|会員の分布
公益社団法人日本理学療法士協会|各資格の取得状況
この記事の監修者
岡地 綾子 【ファイナンシャル・プランナー】
2級ファイナンシャル・プランニング技能士。 年金制度や税金制度など、誰もが抱える身近な問題の相談業務を行う。 得意分野は、生命保険・老後の生活設計・教育資金の準備・家計の見直し・相続など。