初めてでもわかる自筆遺言書の書き方|例文や注意点を総まとめ!


自筆遺言書の書き方と例文 手書き?パソコンでも大丈夫?
相続トラブルを防ぎ、自分の想いを確実に家族へ伝えるために欠かせないのが「遺言書」。遺言書の中でも費用をかけずに作成できる自筆遺言書は、多くの人が選ぶ方法です。 しかし、書き方のルールを守らないと、遺言の内容が無効になるケースもあります。 この記事では自筆遺言書の正しい書き方を中心に、手書きが必要な範囲やパソコンで作成できる部分、すぐに使える例文や作成時の注意点を解説します。 初めて遺言書を書く人でも安心して準備できるようわかりやすく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
- 目次
- 遺言書とは?
- 遺言書とは故人の意思を正確に伝えるための重要な書類
- 自筆遺言書とは遺言者本人が財産目録を除く全文を手書きで作成する遺言書
- 公正証書遺言書とは公証人が遺言者の意思を聞き取り書面にする遺言書
- 遺言書を書く前に!事前にやるべきこと
- 財産を把握する
- 誰にどの財産を相続させるのか決めておく
- 遺言執行者を決めておく
- 【自宅or法務局の自筆証書遺言保管制度】保管方法を決めておく
- 自筆遺言書の正しい書き方と例文
- 手書きですべての内容を記入する
- 署名押印する
- 正確な日付を記入する
- 訂正がある場合は二重線で消し正しい内容を記入・署名押印も必要!
- 遺言書を書いておいた方がいいのはどのような人?
- 結婚していて子どもがいない人
- 相続人がいない人
- 離婚歴があり前妻や前夫との間に子どもがいる人
- 孫や子どもの配偶者などに財産を渡したい人
- 親族以外の人に財産を渡したい人
- 特定の相続人に多くの財産を渡したい人
- 相続人同士の関係が悪い場合
- 自筆遺言書を書く際の注意点
- 複数人で作成しない
- ビデオや音声録音による遺言は法的には無効
- あいまいな言葉を使わない
- 【全財産を1人に相続する】は遺留分の侵害になる可能性があるため注意が必要
- 家族に遺言書の存在を伝えておく
- 自筆遺言書の書き方に関するQ&A
- 遺言書を書く用紙や筆記用具に指定はある?
- 遺言書が複数枚になった場合はどうすればいい?
- 【遺言書】と【遺言状】に違いはある?
- まとめ・正しい書き方を理解して意思がしっかり伝わる遺言書の作成を!
遺言書とは?

まずは、遺言書とはどのような書類なのかを確認しておきましょう。
遺言書とは故人の意思を正確に伝えるための重要な書類
遺言書とは、故人の意思を正確に伝えるための重要な書類のこと。遺言書を書いた人が亡くなった後に「誰に・どの財産を・どのように引き継がせるか」という相続に関する意思や、子どもの認知などの身分に関する事項を法的に残すことが可能です。
遺言書を民法で定められた方式で作成することで、相続人は遺言書の内容に従って手続きを行うことになります。遺言書は相続トラブルを防ぎ、残された家族がスムーズに手続きを進めるための重要な書類なのです。
遺言書で決められること
遺言書に記載することで法的効力が認められる内容は「法定遺言事項」と呼ばれ、主に以下のような内容を定めることが可能です。
遺言書で決められること
- 遺産の分割方法の指定
- 誰がどの財産をどれだけ相続するかの指定
- 相続人以外の人に財産を渡す「遺贈」の指定
- 遺言執行者の指定
- 財産の寄付先の指定
- 生命保険金受取人の変更
- 特別受益の持ち戻し免除
- 相続人の廃除および廃除の取り消し
- 子どもの認知
- 未成年の子どもの後見人の指定
- 財産目録の添付
上記の他に、遺言者の気持ちや考えを伝えるための「付言事項」を書くことも可能です。ただし、付言事項には法的効力はないため、注意してください。
「長男は家業を継いでくれたため、多めに相続させたい」「献身的に介護してくれた長男の嫁にも感謝の気持ちとして財産を渡したい」など、相続させたい理由を記しておくことで、相続人が遺産配分に納得しやすくなり、トラブルを防ぐ効果が期待できます。
自筆遺言書とは遺言者本人が財産目録を除く全文を手書きで作成する遺言書
自筆遺言書とは、遺言者本人が財産目録を除く全文を手書きで作成し、日付と氏名を記入して押印する形式の遺言書のことです。
自筆遺言書の特徴
- 手軽に作成できる
- 費用がほとんどかからない
- 内容を秘密にできる
- 保管方法を選べる
自筆遺言書は、紙・ペン・印鑑があればいつでも作成でき、内容の修正や書き直しも自由に行える点がメリットです。公証役場を利用する必要がないため、作成費用も抑えられます。
また、誰にも見せずに作成・保管できるため、内容を生前に知られたくない場合にも向いています。自宅の他に法務局で安全に保管してもらうことも可能です。
公正証書遺言書とは公証人が遺言者の意思を聞き取り書面にする遺言書
公正証書遺言書とは、公証人という法律の専門家が遺言者の意思を聞き取り、公的な書面として作成する遺言書のことです。遺言者が口頭で内容を伝え、それを公証人が文章化し、証人の立ち会いのもとで完成させます。
公正証書遺言の特徴
- 不備による無効の心配がほとんどない
- 原本が公証役場で保管されるため、紛失や偽造のリスクが低い
- 字を書くことが難しい場合でも作成できる
費用や手間は自筆遺言書よりかかりますが、「確実に有効な遺言書を残したい」「相続関係が複雑でトラブルが予想される」という場合には、公正証書遺言がおすすめです。
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遺言書を書く前に!事前にやるべきこと

遺言書は書く前の事前準備が重要です。内容があいまいだったり、財産の記載漏れがあったりすると、かえって相続人同士の争いの原因になることもあるため、しっかり準備を行いましょう。
ここでは、遺言書を作成する前に必ず押さえておきたいポイントを解説します。
財産を把握する
遺言書を書く際にまず行うべきことは、自分がどのような財産をどれだけ持っているのかを正確に把握することです。
遺言書に記載されていない財産が後から見つかると、その財産は誰が相続するのかを巡ってトラブルになる可能性があるため、財産を把握することはもっとも重要になります。
まずは、以下のような資料を集めて、財産を一覧化してみましょう。
財産を把握するために必要な書類
- 登記簿謄本・固定資産税の課税証明書
- 預貯金通帳・取引明細書
- 証券会社・FX会社・暗号資産取引所の残高証明書
- ゴルフ会員権の証書
- 生命保険証書
- 絵画や骨董品などの動産の明細書・鑑定書
- 借用書や金銭消費貸借契約書などの負債に関する書類
プラスの財産だけでなく、借入金などのマイナスの財産も含めて整理しておくことが重要です。
誰にどの財産を相続させるのか決めておく
次に、「誰に」「どの財産を」「どれだけ」引き継がせるのかを具体的に決めておきましょう。遺言書では、あいまいな表現はトラブルのもとになります。
例
長男には○○銀行○○支店の定期預金(口座番号○○○○)
次男にはA株式会社の株式○○株
上記のように、財産の種類や口座、数量まで明確に記載することが重要です。
「遺産をAとBに半分ずつ相続させる」
「金融資産2,000万円を兄弟で半分ずつ、残りはすべて妻に相続させる」
上記のような書き方をすると、現金や株式など複数の金融資産がある場合、何をどのように分けるのか、個人個人で解釈が分かれ、争いの原因になりかねません。遺言書では「具体性」が何より重要になります。
遺言執行者を決めておく
遺言執行者も事前に決めておくと安心です。遺言執行者とは、遺言の内容を実際に実行する役割を担う人のこと。相続手続きや名義変更、財産の分配などを遺言の内容どおりに進める権限を持っています。
遺言執行者を決めておくと、いざというときに相続人同士の関係性に左右されず、客観的に手続きを進めることが可能です。
遺言執行者は、信頼できる相続人や、弁護士・司法書士などの専門家を指定しておくことがおすすめ。相続関係が複雑な場合や相続人同士の仲が良くない場合は、第三者の専門家を指定しておくといいでしょう。
【自宅or法務局の自筆証書遺言保管制度】保管方法を決めておく
遺言書を保管しておく方法も事前に決めておきましょう。
遺言書の主な保管方法
- 自宅
- 法務局の自筆証書遺言保管制度を利用する
自宅で保管する方法は費用もかからず手軽ですが、家族が見つけてくれなかったり、紛失してしまったりするリスクが考えられます。
また、改ざんのリスクもあるため、これらのリスクが心配な場合は法務局の自筆証書遺言保管制度を検討してみましょう。
自筆証書遺言保管制度を利用すれば、遺言書を法務局で安全に保管してもらえるため、紛失・隠匿・偽造・廃棄といったリスクが大幅に軽減されます。
さらに、通常の自筆遺言書は相続開始後に家庭裁判所での「検認」が必要ですが、自筆証書遺言保管制度を利用している場合は検認が不要となり、相続手続きがスムーズに進む点もメリットです。
自筆遺言書の正しい書き方と例文

自筆証書遺言は、もっとも手軽に作成できる遺言書ですが、法律で定められた方式を守らなければ無効になってしまいます。「内容は正しいのに形式不備で使えない」という事態を防ぐためにも、以下の基本ルールは必ず押さえておきましょう。
※2:政府広報オンライン|知っておきたい遺言書のこと。無効にならないための書き方、残し方
※3:政府広報オンライン|知っておきたい相続の基本。大切な財産をスムーズに引き継ぐには?【基礎編】
手書きですべての内容を記入する
正しい書き方のポイント1つ目は、遺言者本人が全文を手書きで作成することです。
遺言書に書く内容
- 表題の「遺言書」
- 本文
- 日付
- 氏名
これらはすべて自筆でなければならず、パソコンによる作成や第三者による代筆は認められていません。たとえ署名だけが自筆であっても、本文が印刷されたものであれば無効になってしまいます。
現在、法務省では遺言書のデジタル化や押印の要否について検討が進められていますが、現行制度では「手書き」が原則であることを覚えておきましょう。
財産目録だけはパソコンで作成しても問題ない
例外として、財産目録のみはパソコンによる作成や代筆が認められています。財産目録とは、以下のような内容を一覧にまとめた書類のことです。
財産目録の主な内容
- 不動産・預貯金・有価証券などの資産
- 借入金などの負債
- それぞれの金額や数量の合計
ただし、財産目録をパソコンで作成した場合や、通帳のコピー・不動産の全部事項証明書などを添付する場合には、すべてのページに遺言者の署名と押印が必要になります。
また、手書きの遺言本文と、パソコン作成の財産目録は同一用紙に混在させることはできません。
一般的な遺言書の例文
例として、一般的な遺言書の例文を確認してみましょう。
遺 言 書
遺言者〇〇〇〇は、次のとおり遺言する。
第1条 遺言者は、遺言者の妻▢▢▢▢(昭和○○年○○月○○日生)に、遺言者が有する次の財産を相続させる。
(1) 土地
東京都○○区○○ ○丁目○番○号
地積○○㎡
(2) 建物
東京都○○区○○ ○丁目○番○号
家屋番号 ○○番○
種類 居宅
床面積 1階○○㎡
2階○○㎡
第2条 遺言者は、遺言者の長男▢▢▢▢(昭和○○年○○月○○日生)に、遺言者名義の株式を相続させる
▢▢▢▢の株式 2万株
▢▢▢▢の株式 3万株
第3条 遺言者は、遺言者の次男▢▢▢▢(昭和○○年○○月○○日生)に、遺言者名義の預貯金を相続させる
○○銀行○○支店 普通口座 口座番号○○○○○○○
第4条 上記に記載のない遺言者の有する財産があった場合、そのすべてを妻▢▢に相続させる。
第5条 遺言者は、長男▢▢を遺言執行者に指定する。
令和○年○月○日
住所 東京都○○区○○ ○丁目○番○号
遺言者 〇〇〇〇 ㊞
上記の他に意思を伝えたい場合は、「付言事項」を追加してもいいでしょう。
全財産を1人に相続させたい場合の例文
全財産を同居している長男に相続させたい場合の例文は、以下の通りです。
第1条 遺言者は、遺言者の長男▢▢▢▢(昭和○○年○○月○○日生)に、遺言者が有するすべての財産を相続させる。
第2条 遺言者は、長男▢▢▢▢を遺言執行者に指定する。
(付言事項)
お母さんが亡くなった後、長年、面倒を見てもらった長男▢▢▢▢には、全財産を相続させることで報いたいと望んでいます。
次男の▢▢は兄に異議を述べることなく、これからも兄弟仲良く助け合っていってください。
特定の人に財産を相続させたい場合は、できるだけ付言事項に理由を伝えておくといいでしょう。
署名押印する
正しい書き方のポイント2つ目は、必ず遺言者本人の署名と押印を行うことです。
署名する際の氏名は、住民票や戸籍の表記どおりに記載する必要があります。また、財産目録や添付資料がある場合は、書類1枚ごとに署名押印する必要があるため、注意しましょう。
印鑑は認印でも法律上は有効ですが、かすれや不鮮明な印影は無効と判断される可能性があります。トラブル防止の観点からは、実印を使用する方が信頼性は高いといえます。
正確な日付を記入する
正しい書き方のポイント3つ目は、正確な日付を記入することです。
遺言書には、作成日を特定できる正確な日付の記載は必須要件です。「2026年1月15日」のように、年月日を明確に記載しましょう。
「○月吉日」などのあいまいな表現や、日付の記載がない遺言書は無効になってしまいます。また、複数の遺言書が存在する場合は、もっとも新しい日付のものが有効になります。
訂正がある場合は二重線で消し正しい内容を記入・署名押印も必要!
正しい書き方のポイント4つ目は、誤字や内容の変更が生じた場合には、正式な方法で修正することです。
遺言書の訂正に関する基本ルール
- 訂正箇所に二重線を引く
- 余白に正しい内容を記入
- 「○字削除、○字加入」などと明記する
- 訂正箇所の近くに署名押印する
訂正部分に印鑑がない場合、訂正自体が無効となるだけでなく、場合によっては遺言書全体の効力が否定される可能性もあるため注意が必要です。なお、修正テープや黒塗りでの訂正は認められていません。
遺言書を書いておいた方がいいのはどのような人?

遺言書は誰でも作成しておくことが望ましいものですが、遺産が少なく相続人が1人しかいない場合など、必ずしも必要性が高くないケースもあります。
一方で、家族構成や人間関係、財産の状況などによっては、遺言書がないことで大きなトラブルに発展する可能性もあります。
ここでは、遺言書を準備しておいた方がよい代表的なケースを紹介します。
結婚していて子どもがいない人
1つ目は、結婚していて子どもがいない人です。
子どものいない夫婦の場合で配偶者が亡くなると、残された配偶者だけでなく、亡くなった人の父母も相続人になります。父母がすでに死亡している場合は、兄弟姉妹が相続人となります。
その結果、配偶者は義理の両親や兄弟姉妹と遺産分割の話し合いを行うことになり、日頃の関係性によっては協議が難航するケースも少なくありません。
遺言書で「すべての財産を配偶者に相続させる」と明記しておけば、こうした話し合いを避け、配偶者の生活を守りやすくなります。
相続人がいない人
2つ目は、相続人がいない人です。
「配偶者も子どもも兄弟姉妹もいない」「相続人となるはずだった人が全員先に亡くなっている」場合などは、法律上の相続人が存在しない状態になります。
この場合、遺産は相続財産清算人の管理のもと、債権者への弁済や療養看護に尽くした人などの「特別縁故者」への分配が行われ、最終的に残った財産は国庫に帰属します。
しかし、遺言書を作成しておけば、友人やお世話になった人、寄付したい団体などの法定相続人以外の相手に財産を遺すことが可能です。
離婚歴があり前妻や前夫との間に子どもがいる人
3つ目は、離婚歴があり前妻や前夫との間に子どもがいる人です。
法律上では、離婚していても、前の配偶者との間に生まれた子どもは法律上の相続人になります。

再婚後に新たな配偶者や子どもがいる場合は、交流のない相続人同士で遺産分割協議を行うことになるため、感情的な対立が生じやすくなります。
しかし、遺言書によって遺産の分け方をあらかじめ決めておけば、再婚家庭特有の複雑な相続関係によるトラブルを未然に防ぐことが可能です。
孫や子どもの配偶者などに財産を渡したい人
4つ目は、孫や子どもの配偶者などに財産を渡したい人です。
通常、孫や子どもの配偶者は法定相続人にはなりません。これらの人に財産を渡したい場合は、遺言書で「遺贈」として明確に指定しておくことで、感謝の気持ちや支援の意思を確実に伝えられます。
親族以外の人に財産を渡したい人
5つ目は、親族以外の人に財産を渡したい人です。
内縁の配偶者、生前に長く支えてくれたパートナーや友人など、法律上の親族ではない人は、たとえ長年同居していたとしても相続人にはなりません。
こうした相手に財産を残したい場合、遺言書の作成は必須です。希望通りに財産を渡すためには遺言書の作成を忘れないよう注意が必要です。
特定の相続人に多くの財産を渡したい人
6つ目は、特定の相続人に多くの財産を渡したい人です。
長男や事業の後継者など、特定の相続人に多くの財産を承継させたい場合は、遺言書による明確な指定が重要です。
ただし、他の相続人には「遺留分」という最低限の取り分が保障されているため、その権利を侵害しないよう注意しましょう。
相続人同士の関係が悪い場合
7つ目は、相続人同士の関係が悪い場合です。
相続人間の仲が悪い場合や将来トラブルに発展しそうな事情がある場合も、遺言書を用意しておくことがおすすめです。
遺言書を書く際には単に遺産配分を記すだけでなく、なぜその分け方にしたのかという理由を付言事項として残しておくと、相続人の理解を得やすくなり、感情的な対立が起きにくくなるでしょう。
自筆遺言書を書く際の注意点

自筆遺言書は手軽に作成できる一方で、書き方や考え方を誤ると無効になったり、相続トラブルの原因になったりすることがあります。
ここでは、自筆遺言書を書く際の注意点を解説します。
複数人で作成しない
1つ目の注意点は、複数人で作成しないことです。
遺言書は本人が単独で作成する必要があり、夫婦や親子など複数人が一緒に1通の遺言書を作成する「共同遺言」は法律上無効とされています。
「夫婦で一緒に財産の分け方を書きたい」と考える場合でも、遺言書はそれぞれ1通ずつ、自分の意思を記したものを作成しなければなりません。
ビデオや音声録音による遺言は法的には無効
2つ目の注意点は、ビデオや音声録音による遺言は法的には無効となることです。
遺言は書面で作成することが法律で定められており、ビデオレターや音声録音だけでは法的効力を持ちません。
動画や音声は家族に気持ちを伝える手段としては有効ですが、「これが遺言になる」と誤解してしまうと、相続手続きの際に何の効力もないことになります。想いを映像や音声で残したい場合でも、それとは別に正式な遺言書を作成するようにしましょう。
あいまいな言葉を使わない
3つ目の注意点は、あいまいな言葉を使わないことです。
遺言書では、表現のあいまいさはトラブルの原因になるため、明確な言葉で書くことが重要になります。
財産を引き継がせたい場合
相続人に対しては「相続させる」
相続人以外に対しては「遺贈する」
上記のように、法的に意味が明確な言葉を使いましょう。
「渡す」「譲る」「任せる」「管理を頼みたい」「託す」といった表現は解釈の余地があり、相続なのか単なる管理委託なのかが不明確になるおそれがあります。誰が最終的に取得するのかが一目で分かる言葉を使うことが重要です。
【全財産を1人に相続する】は遺留分の侵害になる可能性があるため注意が必要
4つ目の注意点は、「全財産を1人に相続する」という意思は、遺留分の侵害になる可能性があることです。
遺留分とは、民法で定められた、兄弟姉妹以外の法定相続人が最低限取得できる遺産の割合のこと。
兄弟姉妹以外の法定相続人には遺留分があるため、「全財産を長男に相続させる」など、他の相続人の遺留分を無視した内容の遺言書を作成すると、遺留分侵害額請求を受ける可能性があるため、注意が必要です。
特定の相続人に多くの財産を承継させたい場合でも、他の相続人の遺留分に配慮した配分や、付言事項で理由を説明するなど、相続人全員が納得できるような内容にしておくことが大切です。
家族に遺言書の存在を伝えておく
5つ目の注意点は、家族に遺言書の存在を伝えておくことです。
せっかく遺言書を作成しても、自分が亡くなった後に遺言書が発見されなければ意味がありません。自宅で保管する場合は、信頼できる家族に遺言書を作成していることと、保管場所を伝えておくことが大切です。
なお、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用すれば、死亡後に相続人へ通知が届くため、遺言書が見つけてもらいやすくなります。
自筆遺言書の書き方に関するQ&A

自筆遺言書を作成する際には、「どんな紙を使えばいいの?」「何枚になっても大丈夫?」「タイトルは遺言書と遺言状、どちらが正しい?」など、細かな疑問を持つ人も多いでしょう。ここでは、よくある質問をQ&A形式でわかりやすく解説します。
遺言書を書く用紙や筆記用具に指定はある?
自筆遺言書に関しては、法律上、用紙の大きさや紙質に特別な指定はありません。便せんやA4サイズのノート、レポート用紙など、一般的な紙でも問題なく作成できます。
縦書き・横書きの決まりもなく、読みやすい形式であればどちらでも構いません。
筆記用具についても原則として制限はなく、ボールペン・万年筆・筆ペン・毛筆などが使用できます。ただし、文字が消えやすい鉛筆やシャープペンシルは、改ざんや判読不能を防ぐ観点から避けた方が無難です。
なお、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用する場合は、「用紙はA4サイズ」「筆記具はボールペンや万年筆など消えにくいもの」という実務上の要件が設けられています。
遺言書が複数枚になった場合はどうすればいい?
自筆遺言書は複数枚になっても問題ありません。ただし、ページの差し替えや抜き取りを防ぐための対策をしておくことが重要です。
遺言書が複数枚になった場合の対応
- ホチキスで綴じ、契印をする
- 封筒に入れて封をする
契印は、1ページ目と2ページ目の間、2ページ目と3ページ目の間というように、すべてのページのつなぎ目に押印すること。「この一連の書類が1つの遺言書である」ことを証明でき、後からページが差し替えられるリスクを減らすことが可能です。
【遺言書】と【遺言状】に違いはある?
「遺言書」と「遺言状」に法的な違いはありません。どちらも同じ意味で、遺言の内容を記した書面を意味します。
一般的には表題として「遺言書」と書かれることが多いですが、自筆証書遺言のタイトルを「遺言状」としても、要件を満たしていれば効力に影響はありません。
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相続税対策に生命保険が効果的な6つの理由と対策方法!検証結果も
まとめ・正しい書き方を理解して意思がしっかり伝わる遺言書の作成を!
自筆遺言書は費用をかけずに自分の意思を法的に残せる身近な方法ですが、書き方のルールを守らなければ無効になるおそれがあります。本文・日付・署名の書き方や訂正方法などの要件を正しく理解し、財産や相続人を具体的に記載することが重要です。
「誰に、何を、どのように遺したいのか」という想いを確実に形にするためにも、例文や注意点を参考にしながら、早めに自筆遺言書を準備ぢておくことが、家族への思いやりと安心につながるはずです。
参考資料
法務省|「自筆証書遺言保管制度」
政府広報オンライン|知っておきたい遺言書のこと。無効にならないための書き方、残し方
政府広報オンライン|知っておきたい相続の基本。大切な財産をスムーズに引き継ぐには?【基礎編】
この記事の監修者

岡地 綾子 【ファイナンシャル・プランナー】
2級ファイナンシャル・プランニング技能士。 年金制度や税金制度など、誰もが抱える身近な問題の相談業務を行う。 得意分野は、生命保険・老後の生活設計・教育資金の準備・家計の見直し・相続など。








