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基礎年金番号通知書とは?今ある年金手帳はどうすればいいかを社労士が解説

谷口芳子 【社会保険労務士】

年金手帳が廃止になり、新たに「基礎年金番号通知書」が代わりに機能することになりました。基礎年金番号通知書と年金手帳を今後どのように扱えばいいか、社会保険労務士が解説します。

目次

基礎年金番号とは

まずは基礎年金番号について解説します。
基礎年金番号とは、年金制度に加入するすべての国民に対して割り振られた「1人につき1つの」固有の番号です。10桁の数字で、4桁と6桁の組み合わせ(例:1234-567890)から構成されています。

基礎年金番号は、国民年金保険、厚生年金保険、共済組合など、すべての公的年金制度で共通している番号です。
たとえば、会社を退職して独立し、フリーランスとして個人事業主になった場合、厚生年金や共済組合などから国民年金へと切り替えますが、その際に基礎年金番号が変わることはありませんし、離婚や就職などで配偶者の扶養からはずれて第3号被保険者から第1号被保険者や第2号被保険者になる場合も、基礎年金番号は変わりません。

なお、1996(平成8)年12月までは、加入する年金制度ごとに異なる番号を使用していたため、年金を請求する際に調査の時間がかかっていましたが、1997(平成9)年1月以降は基礎年金番号として一つのものに統一され、請求までにかかる時間が短縮できるようになりました。

参考:基礎年金番号とは何ですか。|日本年金機構

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新しい基礎年金番号通知書とは

「基礎年金番号通知書」という言葉に覚えがある人もいるかもしれません。公務員などで共済組合に加入している人には、1997(平成9)年以降に年金手帳と同じサイズの通知書が交付されていたからです。

2022(令和4)年4月から年金に加入した人や、共済組合以外の加入履歴がない人には、新しい形の基礎年金番号通知書が交付されます。

なぜ年金手帳から基礎年金番号通知書に変更されるのか

年金手帳の廃止は、2020(令和2)年5月に成立した法律によるものです。
年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」のなかに「国民年金手帳から基礎年金番号通知書への切替え」が盛り込まれています。

切り替えの主旨を説明する文面のなかには、「被保険者情報が既にシステムで管理がなされていること及び個人番号の導入によって、手帳という形式で果 たす必要性がなくなっている」との記載があります。
また、業務の簡素化と効率化という意図もあるようです。さらに、手帳からカードになったことで大幅なコストダウンにもなりますので、税金の節約にもつながりそうです。

基礎年金番号通知書はどんな形?

基礎年金番号通知書の表面と裏面の画像
基礎年金番号通知書は上記のような様式になります。
縦54mm、横85mmの長方形をした黄色い紙で、クレジットカードなどと同じサイズです。
かつて縦長で大きかった国民健康保険などの保険証が、お財布に入るくらいの小さなカード型に変わり、持ち運びや保管がしやすくなったことと似ています。

年金手帳が廃止されて基礎年金番号通知書になると何が変わる?

これまで企業等に就職した人の年金手帳は、事業所(勤務先)あてに届きましたが、基礎年金番号通知書はすべて個人の住所に届きます。
国民年金に加入する20歳の人は、20歳になってから約2週間で通知書が届く見込みですが、厚生年金に加入した人の場合は、企業が届け出た順に手続きを行うため、交付までの期間は一定ではありません。

年金事務所や、年金関係の事務手続きを行う全国の事務センターは、業務が集中する年度替わりなどのタイミングに多忙となるため、3月から4月のタイミングで誕生日を迎える人の場合、基礎年金番号通知書の到着が遅くなることもあるかもしれません。とはいえ到着が遅れても年金に加入する日が遅れるわけではありませんので、ご安心ください。

基礎年金番号通知書が必要なときはどんなとき?

基礎年金番号通知書が必要となる状況は、年金手帳と同じです。年金の各種手続きや就職・転職のときなど、これまで年金手帳の提示が必要だったタイミングに、通知書を役場や会社などに提示することになります。
なお、年金手帳をお持ちの人に、この通知書が新たに交付されることはありません。年金手帳はそのままお持ちください。

年金手帳の歴史

世代によって年金手帳の色が違うことはよく知られていますが、オレンジや青色の手帳の前に、茶色の年金手帳の時代があったことはご存知でしょうか。
そこで、年金手帳がどのように変わったのか、簡単に触れておきます。
オレンジ色と青色の年金手帳
年金の仕組みはもともと、1954(昭和29)年5月に厚生年金制度としてスタートしました。その時に交付されていたのは、厚生年金被保険者証といい、最初は手帳ではありませんでした。

1960(昭和35)年10月からは、国民年金に加入した人に、茶色い表紙の「国民年金手帳」が交付されました。
国民年金も厚生年金も同じ手帳になったのは1974(昭和49)年11月からで、オレンジ色の表紙の「年金手帳」です。
表紙の色が青くなったのが1997(平成9)年1月です。40代半ばの世代の方で、「年金手帳の色が変わった」と、ご家族や先輩に珍しがられた人もいるのではないでしょうか。

筆者(監修者・谷口)の周りにも「自分の年金手帳は青い」と若さ自慢をする人がいて、自慢の種はどこにでもあるものだと感心した記憶があります。
オレンジ色の世代でも、1997(平成9)年以降に再交付された場合は青い手帳ですので、逆に恥ずかしいと言っている人もいたものです。

年金手帳や基礎年金番号通知書をなくしたときの再発行の手順

年金手帳は廃止となりますので、年金手帳を紛失・毀損した場合は、手帳ではなく基礎年金番号通知書が再交付されます。
続いては、年金手帳や基礎年金番号通知書をなくした場合の再交付の手順をお伝えします。

再発行を受ける場所

企業などにお勤めの人は、勤務先を通じて申請します。個人が申請する場合は、近くの年金事務所か、住まいの市区町村窓口で受け付けてもらえます。提出方法は下記の3通りがあります。

  1. 電子申請(企業などが申請するとき)
  2. 郵送
  3. 窓口持参


再発行の際に必要な書類

再発行の際には「基礎年金番号通知書再交付申請書」という書類を提出する必要があります。用紙は年金事務所や、市区町村役場の窓口でもらうか、日本年金機構のホームページからダウンロードすることも可能です。
この申請書にマイナンバーカードを添付して、年金事務所や市区町村の役場に提出をします。郵送の場合は、マイナンバーカードの表裏両面のコピーが必要です。

マイナンバーカードがない場合は、添付書類が2つ必要です。

  1. マイナンバーが確認できる書類(マイナンバー記載の住民票の写し、通知カードなど)
  2. 写真つきの本人確認書類(運転免許証、パスポートなど)


郵送の場合は申請書に添付書類のコピーを添えて申請します。

以上、簡単に説明しましたが、個人で再交付を申請する際は、年金事務所または市区町村の窓口にご確認ください。
公的な書類は何でもそうですが、再発行の手続きは大変面倒ですので、なるべく無くしたり汚したりしないように気をつけてください。

基礎年金番号通知書や年金手帳以外で基礎年金番号を確認する方法

青い表紙の年金手帳と封書で届いた「ねんきん定期便」
自分の基礎年金番号を知りたいけれど、通知書や年金手帳が手元にないという場合はどうすればいいのでしょうか。
会社などにお勤めの人は、会社の総務や人事担当の人に聞くと、答えてもらえるでしょう。国民年金の保険料を納めている人の場合は、保険料の通知書や領収書などに記載されていますので、参考にしてください。

また、ねんきん定期便(※)のお知らせに記載されている専用番号に電話すれば、基礎年金番号が記載されている書類を郵送してもらうこともできます。注意点としては、基礎年金番号は電話やメールでは教えてもらえませんので、すぐにはわからないということです。
すぐに知りたい場合は、マイナンバーカードなどの写真つきの本人確認書類を持参のうえ、近くの年金事務所に行って問い合わせてください。

※毎年誕生月に日本年金機構からハガキで送られて来るもので、35才・45才・59才の節目の年には封書で届きます。いざというときに確認することもあるため、1年間は捨てずにとっておくことをおすすめします。

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65歳以上の年金受給中の人はどう対応すればいい?

年金手帳や基礎年金番号通知書は、年金の保険料を納めている人に交付されるものですので、年金を受給している人には、今回の年金手帳から基礎年金番号通知書への切り替えは関係ありません。
年金を受給されている皆さんはよくご存知だとは思いますが、万が一、年金証書を紛失しても、年金の受給が止まることはありません。

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DV被害者が年金手帳・基礎年金番号通知書を再発行をする場合

配偶者からDV被害に遭っていて、配偶者と異なる住所に住んでいる人が、基礎年金番号通知書の再交付などの手続きをする場合は、近くの年金事務所に相談してください。基礎年金番号の変更や、年金保険料免除(本人の前年所得が一定以下の場合)、郵送先変更などの各種手続きが行えます。
手続きに必要な書類については、年金事務所に電話などで問い合わせて、事前に確認しておくことをおすすめします。

参考資料


まとめ

今回は基礎年金番号通知書と年金手帳について説明しました。
何でも紙ベースで管理していた昔とは違い、現在は基礎年金番号を情報として管理しています。年金手帳や基礎年金番号通知書の重要度合いは、時代とともに変わってきていますが、個人が持つ大切な公的書類であることには変わりはありません。紛失しないように、管理しておくことをおすすめします。

日本の年金制度は時代の流れに合わせてさまざまな改正を加えてきました。その結果、複雑な仕組みになっています。年金は「何階建て」などと表現することもあり、筆者の個人的な印象では、増築を繰り返して別館が何棟も連なる和風旅館のようだと感じます。

複雑ではありますが、年金制度は国の重要なセーフティーネットのひとつです。
年金制度は、将来破綻しないように、定期的な見直しが行われているものです。
今後の改正についても、皆様には正しい情報をその都度お伝えしていければと思います。

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この記事の監修者

谷口芳子 【社会保険労務士】

NPO法人や税理士法人を経て現職。社会保険労務士として、社会保険・雇用保険の各種届出、年末調整、労務相談、公正証書作成などの業務を担当。行政書士資格保有。

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