無期雇用派遣とは?メリットデメリットから正社員との違いまで徹底解説
無期雇用派遣と正社員の違いとは? 条件やメリットデメリットも解説!
無期雇用派遣とは、派遣会社と労働者の間で期間の定めのない雇用契約を締結することです。この記事では、無期雇用派遣で働くための条件や正社員との違い、メリットデメリットを解説します。
- 目次
- 無期雇用派遣とは
- 無期雇用派遣とは派遣会社と労働者の間で期間の定めのない雇用契約を締結すること
- 有期雇用派遣・正社員との違い
- 無期雇用派遣で働くための条件とは?
- 派遣会社の無期雇用派遣の募集に応募して採用される
- 派遣会社で一定の条件を満たしてから無期雇用派遣へ転換する
- 無期雇用派遣が誕生したきっかけとなった【派遣法3年ルール】とは?
- 個人単位の期間制限
- 事業所単位の期間制限
- 改正の趣旨
- 派遣会社の義務
- 期間制限の対象外になる人とは
- 50代?60代?無期雇用派遣は何歳まで働ける?
- 無期雇用派遣のメリット
- 待機期間中にも給与が支払われるため収入が途切れない
- 長期間同じ会社で働ける
- 賞与や昇給制度がある
- キャリアアップのための研修制度が充実している
- 無期雇用派遣のデメリット
- 自分で職場を選べない
- 時短勤務などの柔軟な働き方ができない
- 採用のハードルが高い
- 派遣ならではの自由さがなくなる
- 正社員と比べて概して待遇が良くない
- 無期雇用派遣に関するQ&A
- Q:条件を満たしている場合はいつでも無期雇用派遣への転換を希望できる?
- Q:無期雇用派遣を辞める場合はどうすればいい?
- Q:派遣会社に「うちの会社では無期雇用転換制度はない」と言われた場合はどうすればいい?
- Q:無期雇用派遣で働いていた経歴は履歴書にどう書けばいい?
- まとめ・無期雇用派遣はメリットデメリットを把握してから始めよう
無期雇用派遣とは
無期雇用派遣とは、2015年の労働者派遣法の改正により誕生した、比較的新しい働き方のことです。まずは、無期雇用派遣の詳細を確認していきましょう。
無期雇用派遣とは派遣会社と労働者の間で期間の定めのない雇用契約を締結すること
無期雇用派遣とは、派遣会社と労働者の間で期間の定めのない雇用契約を締結することです。
「派遣」と聞くと、一定期間どこかの企業で働き、契約期間が終了したらまた他の企業に派遣されるイメージをもつ人が多いでしょう。
しかし、無期雇用派遣で働く際の雇用契約には期限が定められていません。働けるかどうか未確定な一般的な派遣と異なり、働くことが保証されている雇用契約になります。
無期雇用派遣の働き方のポイント
- 雇用期間は無期限
- 派遣先企業との契約が終了しても、派遣会社との雇用契約は継続する
- 万一、働けない期間が生じても給与は発生する
- 就業先は基本的には派遣先企業だが、派遣会社での業務が発生する可能性もある
- 福利厚生などは派遣会社の内容が適用される
有期雇用派遣・正社員との違い
上記のポイントを踏まえて、有期雇用派遣や正社員との違い、無期雇用派遣で働くための条件を確認していきましょう。
有期雇用派遣との違い
無期雇用派遣 | 有期雇用派遣 | |
---|---|---|
雇用期間 | 無期限 | 一定期間 |
賃金 | 働いていない期間も | 働いた時間のみ |
有期雇用派遣は、派遣会社と労働者の間であらかじめ定められた期間の雇用契約を締結する働き方です。
労働者は派遣会社への登録後、就業する企業が決まった段階で派遣会社と雇用契約を結び、期間が終了した段階で雇用契約は終了します。雇用期間は派遣先企業により異なります。
賃金が発生するのは雇用期間中に実際に就業した時間分のみ。雇用契約をしていない期間の賃金は発生しません。
なお、雇用主は、無期雇用派遣の場合も有期雇用派遣の場合も派遣会社になります。
派遣社員とは?正社員との違いからメリットデメリットまでわかりやすく解説!
正社員との違い
無期雇用派遣 | 正社員 | |
---|---|---|
雇用主 | 派遣会社 | 自社 |
福利厚生など | 派遣会社の内容が | 自社の内容が |
働く方法 | 派遣会社の採用面接に | 自社の採用面接に |
無期雇用派遣の人が長期間一定の企業で働いても、雇用主はあくまでも派遣会社です。そのため、福利厚生なども派遣会社の内容が適用されます。
一方、正社員の雇用主は働いている会社。もちろん、福利厚生なども自社の内容が適用されます。
無期雇用派遣で働くための条件とは?
では、どんな人が無期雇用派遣として働けるのでしょうか?
無期雇用派遣として働くためには以下の2つの方法があります。
無期雇用派遣として働く方法
- 派遣会社の無期雇用派遣の募集に応募して採用される
- 派遣会社で一定の条件を満たしてから無期雇用派遣に転換する
詳細を確認していきましょう。
派遣会社の無期雇用派遣の募集に応募して採用される
1つ目は、派遣会社の無期雇用派遣の募集に応募して採用される方法です。
派遣会社では、自社の無期雇用派遣を募集するケースもあります。当然ですが、無期雇用派遣の募集に応募して採用されれば、最初から無期雇用派遣として働くことが可能です。
ただし、常に募集しているとは限りません。募集要項に「無期雇用派遣」と掲載されていない場合は有期派遣であることが一般的のため注意してください。
派遣会社で一定の条件を満たしてから無期雇用派遣へ転換する
2つ目は、派遣会社で一定の条件を満たしてから無期雇用派遣へ転換する方法です。
「2013年4月1日以降に、同じ派遣会社で、通算5年を超える雇用契約がある」労働者が、無期雇用派遣を希望した場合、無期雇用派遣として働けます。
なお、「2013年4月1日以降に、同じ派遣会社で、通算5年を超える雇用契約がある」人が得られるのは無期雇用派遣を希望する権利です。強制ではないため無期雇用派遣で働くか否かは本人の意思で決められます。
また、条件を満たした労働者が無期雇用派遣を希望している場合、派遣会社は拒否することはできません。
無期雇用派遣の開始時期
無期雇用派遣の開始時期は、申し込みをした段階の有期雇用契約が終了する日の翌日からになります。
例
- 雇用契約の時期:2018年4月1日
- 更新期間:2年
- 更新回数:2回
- 無期雇用への転換申込日:2023年5月1日
たとえば上記の場合、2018年4月1日に雇用契約をして、その後2回更新。
2018年から5年後の2023年4月に無期雇用への権利が発生し、労働者が申込。
2023年の段階ではまだ雇用契約が残っているため、その雇用契約が終了する2024年3月31日を超えたら無期雇用派遣として働くことになります。
通算期間の数え方
何度か解説している「1つの派遣会社で通算して5年超」という期間の数え方を確認していきましょう。
1つの派遣会社で期間を開けて働いた経験がある場合、無契約の期間が6ヶ月未満の場合は以前の契約期間が通算されます。
ただし、以下に該当する場合は通算されません。
これまでの | 雇用契約がない期間 |
---|---|
2ヶ月以下 | 1ヶ月以上 |
2ヶ月超~4ヶ月以下 | 2ヶ月以上 |
4ヶ月超~6ヶ月以下 | 3ヶ月以上 |
6ヶ月超~8ヶ月以下 | 4ヶ月以上 |
8ヶ月超~10ヶ月以下 | 5ヶ月以上 |
10ヶ月超~ | 6ヶ月以上 |
上記の場合は現在の契約期間からカウントされ、通算5年を超えた場合に無期雇用派遣に転換可能です。
無期雇用派遣が誕生したきっかけとなった【派遣法3年ルール】とは?
「派遣法3年ルール」という言葉を聞いたことはありますか?派遣法3年ルールとは、「同一事業所で同一の派遣労働者が勤務できる上限は原則3年」という制限のことです。
個人単位の期間制限
従前は、「同じ業務で3年を超える期間の勤務はできない」ことが原則とされ、専門26業種に限って期間制限がないルールでしたが、2015年の派遣法改正により、すべての業種に適用されるようになりました。
つまり、同じ有期派遣社員については、「課」などの派遣先の事業所における同一の組織単位で、3年を超えて受け入れることはできません。これを「個人単位の期間制限」といいます。
組織とは
- 業務としての類似性や関連性がある
- 組織の長が業務配分や労務管理上の指揮監督権限を有する
この場合の組織とは「課」や「グループ」などを意味するため、同じ事業所内であっても別の課である場合などはこれに含まれないとされています。
※2:厚生労働省|派遣先の皆様へ
※3:厚生労働省|政令で定める26業務
事業所単位の期間制限
事業所単位の期間制限とは、「派遣企業先は同一の事業所において、3年を超えて派遣を受け入れられない」という制限のことです。
この場合の事業所とは、雇用保険の適用事業所に関する定義と同様になります。
事業所とは
- 工場・事務所・店舗のように場所的に独立している
- 経営単位として人事・経理・指導監督・働き方などがある程度独立している
- 施設として一定期間継続する
ただし、派遣先企業が派遣社員の受け入れを3年を超えて希望する場合、事業所の過半数労働組合等の意見聴取手続きを行えば、3年を限度とした派遣期間の延長が可能になります。
これにより、派遣会社の同じ有期派遣社員が同一の事業所内の別の課や、別の有期派遣社員が同一の事業所内の同じ課で、3年を超えて働くことが可能になります。
期間の起算日は、期間制限の対象となる派遣社員を最初に受け入れた日です。そのため、複数の派遣社員を受け入れる企業の場合、後から就業を始めた派遣社員は3年より短い期間で事業所単位の制限がおとずれることになります。
なお派遣先企業が期間を再延長する場合には、再度、過半数労働組合等の意見聴取手続きが必要になります。
改正の趣旨
これまでの「同じ業務で3年を超える期間の勤務はできない」との原則については、同じ派遣社員を更新させることが可能でした。
そのため、派遣先企業が本来は直接雇用すべきであるにもかかわらず、人件費削減の目的でこうした運用を行う例が頻繫にありました。
また専門26業種については、これに該当するか否かを現場段階で判断することが困難な事情がありました。加えて、該当するゆえ無期雇用派遣とされたものの、派遣会社と派遣先企業との契約が満了すると、派遣社員との契約終了が可能になるという問題もありました。
これらはいずれも、派遣労働者の雇用を安定させるうえでの課題となっていました。
そこで、専門26業種を含めてすべての業種に、3年の期間制限を適用することにするとともに、派遣期間を延長させる際には、同じ派遣社員を同一の組織単位において働かせることは認めないこととしました。
その他の場合においても、労働者の立場を代弁することが期待される過半数労働組合等の意見聴取手続きを義務づけることによって、派遣先企業による安易な運用に歯止めをかけることとしました。
一方、これまで専門26業種に従事することから、無期雇用であった派遣社員にとっては、3年の期間制限が適用されることは、不利益変更になります。
そこで無期雇用派遣の制度を新設して、無期雇用派遣社員については派遣期間の制限の対象外としました。
同時に、これまで無期雇用であった派遣社員を無期雇用派遣社員とすることを促すために、当初から無期雇用派遣社員として採用するほかに、同じ派遣会社で通算5年を超える派遣社員を、本人の申し出によって無期雇用派遣社員への転換ができるようにしたのです。
無期雇用派遣社員であれば、従来と同様に同一業務について期間制限のない働き方ができ、また派遣会社と派遣先企業との契約が満了したことによって派遣が終了した後も、派遣会社との契約は終了せず、引き続いて給与の支給を受けることができます。
派遣会社の義務
派遣会社は労働者の働く場所の確保のため、個人単位の期間制限をむかえた労働者に対して、以下のいずれかの措置をとる必要があります。
派遣会社の義務
- 派遣先企業へ労働者を直接雇用してもらえるよう依頼する
- 他の派遣先を紹介する
- 労働者が希望する場合は、無期雇用派遣に転換させる
なお、派遣会社が無期雇用派遣を避けるために、正当な理由なく労働者を雇い止めすることはできません。
期間制限の対象外になる人とは
先ほどお伝えした通り、無期雇用派遣の人は個人単位及び事業所単位の期間制限の対象外です。そのほかに対象外とされる人は、以下のとおりです。
個人単位の期間制限の対象外になる人
- 60歳以上の人
- 期限がはっきりしている業務に派遣される人
- 1か月の勤務日数が派遣先従業員の半分以下、かつ10日以下の業務に派遣される人
- 産前産後休業・育児休業・介護休業等の代替要員として派遣される人
上記に該当する場合は例外として3年の期間制限は適用されないため、3年を超えて働くことが可能です。
50代?60代?無期雇用派遣は何歳まで働ける?
「派遣」と聞くと若い人しかできないイメージをもつ人もいるでしょう。しかし、派遣社員の年齢に上限はありません。それは、無期雇用派遣も同様です。
つまり、無期雇用派遣は一般的な正社員と同様、定年まで働くことが可能なのです。定年の年齢は派遣会社の就業規則で定められているため、あらかじめ確認しておきましょう。
現在は高年齢者雇用安定法の施行により、企業には65歳までの雇用確保が義務付けられています。定年を65歳未満に定めている企業は、以下のいずれかの措置をとらなければなりません。
65歳までの雇用確保
- 65歳までの定年引き上げ
- 定年制の廃止
- 65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
なお、65歳までの継続雇用制度に関しては適用年齢を段階的に引き上げる経過措置がとられていましたが、この経過措置は2025年3月末で終了します。そのため、2025年4月からはすべての企業で上記のいずれかの措置をとる必要があります。
企業は65歳まで雇用を確保する必要があるため、「派遣は若い人しかできない」という訳ではないのです。
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無期雇用派遣のメリット
では、無期雇用派遣で働くことにはどのようなメリットがあるのでしょうか?
待機期間中にも給与が支払われるため収入が途切れない
1つ目のメリットは、待機期間中にも給与が支払われるため収入が途切れないことです。
有期雇用派遣の場合は、派遣先企業で実際に働いている時間のみ賃金が発生します。そのため、派遣先企業が決まっていない待機期間中に給与が支払われることはありません。
一方、無期雇用派遣の場合は、派遣会社と労働者の間で期間の定めのない雇用契約を結んでいるため、待機期間中でも給与が発生します。
また、有期雇用派遣は時給制のため、土日祝日や年末年始などの長期休暇の日数により収入が少なくなってしまう可能性が考えられます。しかし、無期雇用派遣は月収制のため休日の日数で収入が左右されることはありません。
収入が安定することは、無期雇用派遣の大きなメリットです。
長期間同じ会社で働ける
2つ目のメリットは、長期間同じ会社で働けることです。
先ほど「派遣法3年ルール」の解説をしたとおり、無期雇用派遣は期間制限の対象に含まれないので、3年を超えて働くことが可能になります。
「次の職場が見つからないかも…」という派遣ならではの不安が解消されることは、無期雇用派遣の大きなメリットでしょう。
派遣業界からは「若い世代は派遣会社から多くの案件を紹介してもらえても、高齢になるとなかなか派遣先を紹介してもらえない」という声をよく聞きます。本来はあってはならないことですが、年を重ねるごとに紹介可能案件が減ってしまうのが現実です。
長期間働いてキャリアアップをしている人の働き口がないというのはとても残念なこと。しかし、無期雇用派遣ならそのリスクが軽減されます。
賞与や昇給制度がある
3つ目のメリットは、賞与や昇給制度があることです。
無期雇用派遣には、賞与や昇給制度が設けられていることが一般的です。有期雇用派遣の場合は、派遣先企業へ大きな貢献をしても、受け取れるのは働いた分の時給のみです。
その方が割り切れてラクと考える人もいるとは思いますが、なんとなく報われない思いを感じてしまう人もいるのではないでしょうか?
しかし、無期雇用派遣の場合は勤務態度や実績を評価してくれる制度が整っています。そのため、仕事のやりがいを感じられる人も多いでしょう。
ただし注意してほしいのは、賞与や昇給の判断をするのは派遣会社ということ。派遣先企業の業績が上がり社員の賞与額がアップしても、無期雇用派遣の賞与が上がるとは限らないことに注意してください。
キャリアアップのための研修制度が充実している
4つ目のメリットは、キャリアアップのための研修制度が充実していることです。
派遣会社には「キャリア形成支援制度」を設けることが義務付けられています。少なくとも入社してから3年間の間は、労働者に年間8時間以上の教育訓練を受けさせなければなりません。
多くの派遣会社ではさまざまな研修が受けられるような体制を整えており、労働者はビジネスマナーやPC研修はもちろん、派遣先企業に合わせた研修が受けられるようになっています。
対象はすべての派遣社員のため無期雇用派遣だけのメリットではありませんが、研修制度が整っていることは派遣社員にとっても安心材料になるでしょう。
無期雇用派遣なら辞めない限り派遣会社との雇用関係は続くため、より多くの研修が受けられます。
無期雇用派遣のデメリット
一見、メリットだけが際立っているように感じる無期雇用派遣ですが、デメリットにはどのようなことがあるのでしょうか?
無期雇用派遣は他の雇用形態と比べて少し特殊な部分もあるため、デメリットもしっかり把握したうえで検討してください。
自分で職場を選べない
1つ目のデメリットは、自分で職場を選べないことです。
無期雇用派遣は派遣会社からの指示に従って就業するため、労働者が派遣先を指定することはできません。
無期雇用派遣の場合、待機期間があっても給与が発生します。派遣会社としても働いていない派遣社員に給与を支払いたくないため、できるだけ待機期間が発生しないように派遣先をあてがうことが一般的です。
職種や勤務時間など、ある程度の希望は考慮してもらえますが、自分の希望と合わないからといって他の派遣先企業を指定することは難しいでしょう。
また、派遣先企業の事情によっては短期間の就業になるケースも多く、短期間で複数の企業に派遣されるケースも少なくありません。
そのため、新しい職場でもすぐに仕事を覚えられるスキルや周囲の人と馴染めるコミュニケーション能力が必要になります。
時短勤務などの柔軟な働き方ができない
2つ目のデメリットは、時短勤務などの柔軟な働き方ができないことです。
無期雇用派遣として働く場合はフルタイム勤務が基本です。そのため、結婚や出産などのライフスタイルの変化が起こったとしても、時短勤務などをすることは難しいでしょう。
採用のハードルが高い
3つ目のデメリットは、採用のハードルが高いことです。
無期雇用派遣として働くためには、派遣会社の選考に受かる必要があります。しかし、無期雇用派遣は、派遣されていない期間についても給与が支払われるなど有期雇用派遣よりも待遇が良いため、採用の枠は少なめです。
また、無期雇用派遣は複数の企業で働くことを前提としているため、さまざまなスキルが必要とされるため、採用のハードルは高くなります。
ただし、これは最初から無期雇用派遣として働く場合の話。一定の条件を満たして有期派遣から無期派遣へ転換を希望する場合、派遣会社は断れません。
派遣ならではの自由さがなくなる
4つ目のデメリットは、派遣ならではの自由さがなくなることです。
有期派遣の場合は、雇用期間が終了した後にどうするかを自分自身で決められます。一定期間働いた後は長期的に休むことも可能。そのため、趣味や旅行に時間を使うこともできるでしょう。
また、実際に働いてみて自分に合わないと感じた場合は、次の職場を探すことも可能。スキルさえあれば、自由な働き方ができることがメリットになります。
一方、無期雇用派遣は派遣会社に常時雇用される形態になるため、1つの派遣先での就業が終了しても長期の休みはとれません。
細かな違いはありますが、無期雇用派遣は正社員と近い要素もあるため、自由な働き方はできなくなります。
正社員と比べて概して待遇が良くない
5つ目のデメリットは、これまでみてきたように、無期雇用派遣社員には正社員とさほど変わらないさまざまな身分的な制約があります。
しかし、元々派遣先企業にとっては、正社員を直接雇用せずに派遣社員を受け入れるのには、人件費を抑制するという目的があります。したがって、派遣会社に対して支払う派遣料金については、多くの場合、その目的に沿った形で決定されます。
また派遣会社にとっても、無期雇用派遣社員を雇用する際には、単なる雇用のために必要な費用だけでなく、その派遣先が決まらない期間についても、給与の支払いをしなければならないというリスクがあることを考慮したうえで、派遣料金からのマージンを取る必要があります。
これらの理由から、正社員と比べて給与が低く抑えられるなど、概して待遇が良くない場合もあると考えられます。
無期雇用派遣に関するQ&A
最後に、無期雇用派遣に関するQ&Aをご紹介します。みなさんが気になることにお答えしているため、ぜひ参考にしてください。
Q:条件を満たしている場合はいつでも無期雇用派遣への転換を希望できる?
A:希望はいつ申し出ても問題ありません。
有期派遣社員として働き、すでに無期雇用派遣の条件を満たしている場合は、いつ希望を申し出ても問題ありません。
ただし、無期雇用になるタイミングは現在の雇用期間が終了した後。有期雇用契約の途中で無期雇用に転換することはできないことは覚えておきましょう。
Q:無期雇用派遣を辞める場合はどうすればいい?
A:基本的には正社員を退職する場合と同じです。
無期雇用派遣で働く場合、有期派遣のように仕事の切れ目がありません。そのため、正社員が退職するときと同じような手続きが必要です。
まずは派遣会社に無期雇用派遣を辞めたい旨を伝え、派遣会社の指示に従って手続きを進めましょう。法律上では辞める日の2週間前までに退職の意向を伝えればよいとされていますが、退職時のルールは企業により異なります。
退職時のルールは無期雇用派遣として雇用契約をした際の就業規則に記されていることが多いため、あらかじめ確認しておくことが大切です。
Q:派遣会社に「うちの会社では無期雇用転換制度はない」と言われた場合はどうすればいい?
A:労働基準監督署に相談しましょう。
無期雇用派遣への転換条件は派遣法により定められています。派遣法の対象者は、すべての派遣労働者です。そのため、派遣会社により「無期雇用転換制度がない」ことはありません。
派遣会社に上記の内容を伝え、それでも無期雇用転換はできないと言われた場合は、労働基準監督署に相談しましょう。
また、無期雇用派遣への条件を満たさないようにと、正当な理由のない雇い止めをされた場合も労働基準監督署へ相談することをおすすめします。
Q:無期雇用派遣で働いていた経歴は履歴書にどう書けばいい?
A:雇用契約を結んでいた派遣会社名・派遣先企業・無期雇用派遣で働いていたことを記入しましょう。
■記入例
〇月〇日 △△派遣株式会社へ入社
〇月〇日 △△株式会社へ無期雇用派遣社員として就業
〇月〇日 一身上の都合により退職
有期派遣の場合は「△△派遣株式会社へ登録」と記入しますが、派遣会社と雇用契約を結ぶ無期雇用派遣では「△△派遣株式会社へ入社」と記入します。
同様に、退職を伝える際は「期間満了により退職」ではなく、「一身上の都合により退職」と記入しましょう。
まとめ・無期雇用派遣はメリットデメリットを把握してから始めよう
無期雇用派遣とは、派遣会社と労働者の間で期間の定めのない雇用契約を締結すること。2015年の労働者派遣法の改正により誕生した、比較的新しい働き方です。
有期雇用派遣とは異なり、収入は月収制で賞与や昇給もあるため、安定した働き方を求めている人におすすめです。ただし、自分で職場を選べなかったり柔軟な働き方ができなかったりするなどのデメリットもあります。
無期雇用派遣を検討されている人は、メリットデメリットの両方を理解したうえで後悔しない働き方を見つけてください。
人材派遣とは?メリットや給料、残業代など気になるポイントを解説!
人材紹介とは?メリットや紹介方法・その他の人材サービスとの違いを詳しく解説!
参考資料
厚生労働省|無期転換ポータルサイト
厚生労働省|派遣先の皆様へ
厚生労働省|政令で定める26業務
高年齢者雇用安定法改正の概要 - 厚生労働省
厚生労働省|派遣労働者の キャリア形成支援のために
この記事の監修者
新名範久 【税理士・社会保険労務士】
「新名範久税理士・社会保険労務士事務所」所長。 建設、不動産、理美容、小売、飲食店、塾経営といった幅広い業種の法人や個人の税務・会計業務を行う。社会保険労務士として、法人の社会保険業務も担当。1人でも多くの人に、税金に対する理解を深めてもらいたいと考え、業務を行っている。 税理士、社会保険労務士、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、測量士補、CFP、FP技能検定1級、年金アドバイザー2級、証券外務員1種などの資格を保有。