街角の年金相談センターとはどんなところ?【社労士が解説】
「街角の年金相談センター」の看板を見たことはあるけれど、中に入ったことがある人は少ないでしょう。今回は街角の年金相談センターがどんなところなのか、何を相談できるのかを解説します。
- 目次
街角の年金相談センターとは
街角の年金相談センターとは文字どおり、年金についての相談を無料で受けている窓口です。
日本年金機構の委託を受けて全国社会保険労務士会連合会が運営しています。
街角の年金相談センターは、山梨県や高知県など、一部の県をのぞいて、41都道府県の主要な都市などに設置されており、そのほとんどが駅の近くなどの便利な場所にあります。
相談の受付時間は、基本的に年末年始以外の月曜から金曜の午前8時30分から午後5時15分までです。
場所によっては、第2土曜日などに開いていたり、月曜日の受付時間を延長していたりする場合もあります。
街角の年金相談センターの窓口で相談に対応している職員は、社会保険労務士や年金についての業務経験が豊富な人たちです。
年金受給に関する相談業務のほか、加入記録の確認や、年金請求書などの書類の受付も行っています。
実際にどういう相談ができるのか
実際に、街角の年金相談センターでは、どういった相談ができるのでしょうか。
年金受給の年齢が近づいた人が知りたいのは、「将来、自分はいくらもらえるのか?」、あるいは「年金をもらう年齢を繰り上げたほうが得か?あるいは繰下げたほうが得か?」ということではないでしょうか。
もしも離婚をして年金を分割したら(分割されたら)どれくらい増えるのか?(減るのか?)という疑問が頭をかすめる人もいるかもしれません。
街角の年金相談センターでは、そういった個別の問い合わせに対して、将来受給する年金の見込み金額や、試算結果などを教えてもらえます。
たとえば受給年齢を繰り上げ・繰り下げた場合の年金の見込み額を書面で交付してもらえるのです。
また、本来支給を開始する65歳で受給した場合と比較して、自分が何歳になったときに本来支給の金額を下回るのか、あるいは上回るのか、といった、受給額が逆転する年月が個別にわかります。
さらに、離婚で年金分割をした場合には、どのような分割方法があるのか、分割した場合の年金の見込み額なども教えてもらえます。
このように、年金についてぼんやりと疑問に思っていたことも、専門家に相談すれば、年齢や金額などをはっきりと数字で示してもらえますので、将来の見通しも立てやすくなるでしょう。
なお、離婚時の年金分割については、下記の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
【図解つき】離婚時に年金分割をするとどうなる?年金分割制度と手続き方法
年金事務所との違いは?
年金事務所と街角の年金相談センターの違いは何でしょうか?
年金事務所は、年金に関する各種の手続きとともに相談業務も行っていますが、街角の年金相談センターは、相談業務がメインである、という違いがあります。
たとえば年金の裁定請求書(年金を受給するための書類)は街角の年金相談センターでも受け付けていますが、実際の手続きを進めるのは年金事務所です。
以下に挙げたものは、街角の年金相談センターではなく、住所地や勤務先の所在地を管轄する年金事務所で行っている手続きです。
- 基礎年番号通知書の再発行(年金手帳を紛失したときなど)
- 国民年金の任意加入など、被保険者資格に関する手続き
- 保険料免除の申請など、保険料の納付に関する手続き
- 厚生年金・健康保険の手続き
年金の相談に予約は必要?
年金事務所で年金の相談をするには予約して来所する必要がありますが、街角の年金相談センターの場合、多くが予約不要となっており、来所した順に受け付けてくれます。
なお、予約ができる相談センターもありますので、最寄りの相談センターが予約制かどうか、事前に確認してから行かれるといいでしょう(※1)。
予約の際には基礎年金番号が必要ですので、年金手帳や年金証書、もしくは基礎年金番号通知書(年金手帳を紛失し、再発行をした場合)を手元に準備してから予約をしてください。
予約はインターネット予約や、全国共通の予約受付専用電話など でも受け付けていますが、それぞれの相談センターの電話番号からでも予約できます(※2)。
※1:街角の年金相談センター一覧|全国社会保険労務士会連合会
※2:予約相談について|日本年金機構
年金手帳や、基礎年金番号通知書については、下記の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
基礎年金番号通知書とは?今ある年金手帳はどうすればいいかを社労士が解説
年金証書については、下記の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
年金証書とはどんなもの?
どの相談センターや年金事務所で相談するべきか
年金の相談は、基本的に住んでいる地域を管轄している相談センターや年金事務所でなくても、全国どこの相談センターや年金事務所でも受け付けています。
対面で相談する際に提示が必要な書類は、2点あります。
写真つきの本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)と、年金手帳や基礎年金番号通知書、ねんきん定期便など、基礎年金番号がわかるものです。
また、配偶者がいる場合は、配偶者の基礎年金番号も必要となりますので、準備しておいてください。
ねんきん定期便に関連した記事
年金の加入状況や見込額がわかる!「ねんきん定期便」のポイント解説
窓口に行けない場合の相談方法
近くに年金事務所も街角の年金相談センターもない場合や、外出が難しいときなどは、電話で相談をしてみましょう。
電話相談の対応時間などの詳しい案内は、前項の「※2:予約相談について|日本年金機構」のリンク先に記載されていますのでご確認ください。
また、「ねんきん定期便」が届いてから3か月以内の人は、ねんきんネット(※)で年金見込額などを試算することができます。
ねんきん定期便に記載された「アクセスキー」などを入力のうえ、確認してみてください。
※ねんきんネット|日本年金機構
「未納」や「払えない」などの相談は受け付けてもらえるか
自営業や農業に従事する人で、国民年金の保険料を納めていない場合は、日本年金機構から納付勧奨通知書(催告状)のハガキが届きます。このハガキを受け取った人は、そのまま放置してはいけません。
保険料を未納にしていると、老齢基礎年金だけでなく、もしも障害者になったら受給する障害基礎年金や、本人が亡くなったあとに遺族が受け取る遺族基礎年金の受給にも悪影響をおよぼします。
経済的な理由で保険料の納付が難しいときは「保険料免除」の申請をしてください。そうすれば、所得の金額と、扶養する親族の人数によって保険料が免除されることがあります。
保険料が免除されている期間は、年金の受給資格期間に含まれます。保険料を納付した期間と、免除されていた期間を足した期間が合計で10年以上ある場合は、65歳から老齢基礎年金を受け取ることができるでしょう。
また、年金受給額を増やすために、免除期間の保険料を10年間さかのぼって納付することもできますので、ご自身の状況に合わせて保険料を納付するようにしてください。
保険料の免除や追納の方法については、街角の年金相談センターでも教えてもらえます。
街角の年金相談センターを活用しよう
街角の年金相談センターは、ほとんどが立地の良い場所にあるうえに、予約不要で行けるため、年金事務所よりも利便性が高いかもしれません。年金についての疑問や不安があったら、気軽に相談へ行くことをおすすめします。
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この記事の監修者
谷口芳子 【社会保険労務士】
NPO法人や税理士法人を経て現職。社会保険労務士として、社会保険・雇用保険の各種届出、年末調整、労務相談、公正証書作成などの業務を担当。行政書士資格保有。