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年金生活者支援給付金とは?支給要件や種類について解説

谷口芳子 【社会保険労務士】

年金生活者支援給付金とは、所得が低いとされた年金受給者に対して、年金と同じタイミングで給付されるものです。給付金は年金の種類によって違いますので、詳しく解説します。

目次

年金生活者支援給付金の原資は消費税

2019(令和元)年10月から消費税が8%から10%に引き上げられましたが、年金生活者支援給付金は、この引き上げ分を活用して支給されるものです。

年金生活者支援給付金は、年金を含めても所得が低い人を対象に、生活を支援するための制度です。恒久的に支給されますが、給付額は物価の変動に合わせて毎年改定されます。

参考資料
年金生活者支援給付金制度について

年金生活者支援給付金の支給要件と金額

年金生活者支援給付金は、老齢年金に上乗せされる給付金と、障害年金・遺族年金に上乗せされる給付金に大きく分けられます。
それぞれの年金ごとに支給要件が異なりますので、確認していきましょう。

※以下の金額は、すべて令和4年4月時点のものです。

老齢年金生活者支援給付金

老齢基礎年金を受け取っている人の給付金は、老齢年金生活者支援給付金と補足的老齢年金生活者支援給付金の2種類があり、年金も含めた前年の所得によって、どちらの給付金になるかが決まります。

以下の支給要件のうち、所得の要件は3. ですが、市町村から所得情報などが日本年金機構に提供されるため、本人が判断する必要はありません。

<支給要件(以下のすべてを満たしている人が対象)>
1.65歳以上の老齢基礎年金の受給者である
※繰り上げで年金を受給しているときは、65歳になってから支給対象となる

2.同一世帯の全員が住民税非課税である

3.前年の公的年金などの収入金額と、その他の所得を合計した金額が、次のいずれかに当てはまる

  • 78万1,200円以下である→老齢年金生活者支援給付金の支給対象
  • 78万1,200円を超え、88万1,200円以下である→補足的老齢年金生活者支援給付金の支給対象


年金生活者支援給付金の基準額は、月額で5,020円です。この金額を基準に、保険料納付済期間などに応じて給付額が決まります。

老齢年金生活者支援給付金の給付額は、下記の1.と2.を合計した金額になります。

  1. 5,020円 ✕ ( 保険料納付済期間の月数 ÷ 480月 )
  2. 1万802円 ✕( 保険料免除期間の月数 ÷ 480月 )


※480月は、20歳から60歳まで40年間の被保険者の月数です。
生年月日が1941(昭和16)年4月1日以前の人は、生年月日によって180月~468月が基準の月数になります。

保険料納付済期間と保険料免除期間とは

前述のように、給付金を算出するもととなる期間には、保険料納付済期間と、保険料免除期間の2種類があります。
どちらの期間も、年金についての通知書などで確認できますが、保険料免除期間という言葉になじみがない人もいるでしょう。

保険料免除期間とは、所得が低いなどの理由で国民年金保険料を納付するのが難しい人が、申請によって納付を免除されていた期間のことです。
生活保護を受けている人などを除いて、保険料免除の申請をせずに納付していなかった場合は「保険料未納」と記録されてしまいます。

所得が低いことによる「保険料免除」には、全額免除や一部免除などがあり、免除された期間については、老齢基礎年金の受給資格期間として計算されます。保険料免除の申請をせずに未納の扱いになると、この期間がカウントされません。

たとえば、保険料の全額免除期間が10年の人でも、65歳以降は老齢年金を受け取れることになります。年金の額は、保険料を納付した場合より少ない金額です。
障害年金や遺族年金も、支給要件に該当すれば、年金が受け取れます。

これは、基礎年金の半分は国庫負担と決まっていて、保険料を納付しなくても税金から年金給付があるためです。

老齢年金生活者支援給付金の計算に保険料免除期間の月数が入っていて、保険料納付済期間の基準額(月額5,020円)のおよそ2倍の金額(月額1万802円)となっているのは、もともとの年金給付の額が少ないという理由からです。

補足的老齢年金生活者支援給付金とは

補足的老齢年金生活者支援給付金は、年金だけでなく、そのほかの収入も含めた所得が「 78万1,200円を超え 88万1,200円以下」の人に、所得額などを調整して支給されるものです。
給付金の金額は、老齢年金生活者支援給付金の計算式の1.に、調整支給率を乗じたものとなっています。

<補足的老齢年金生活者支援給付金の給付額>
5,020円 ✕ ( 保険料納付済期間の月数 ÷ 480月 ) ✕ 調整支給率

障害年金生活者支援給付金とは

障害年金生活者支援給付金は、老齢年金よりもシンプルな給付のかたちです。これは、障害年金が満額の老齢年金に相当する年金であるとされるためです。
障害等級2級の人は、老齢年金生活者支援給付金と同額の給付金、障害等級1級の人は、その額の1.25倍の給付金になります。

<支給要件(以下のすべてを満たしている人が対象)>

  1. 障害基礎年金の受給者である
  2. 前年の所得が472万1,000円以下である


※前年の所得に障害年金などの非課税収入は含まれず、所得の金額は扶養親族などの数に応じて増額して判定されます。

<障害年金生活者支援給付金の金額>

  • 障害等級が2級の人:月額 5,020円
  • 障害等級が1級の人:月額 6,275円


遺族年金生活者支援給付金

遺族年金生活者支援給付金も、一律の金額です。

<支給要件(以下のすべてを満たしている人が対象)>

  1. 遺族基礎年金の受給者である
  2. 前年の所得が472万1,000円以下である


※前年の所得に遺族年金などの非課税収入は含まれず、所得の金額は扶養親族などの数に応じて増額して判定されます。

<遺族年金生活者支援給付金の金額>

  • 月額5,020円


ただし、2人以上の子が遺族基礎年金を受給している場合は、5,020円を子の数で割った金額がそれぞれに支払われます。一人あたりの給付金に1円以下の端数が出たときは、50銭未満は切り捨て、50銭以上は切り上げて1円となります。

年金生活者支援給付金は非課税

老齢または退職を支給事由とする年金は、雑所得として扱われ、65歳未満で108万円、65歳以上で158万円を超える額の年金を受け取っているときは、所得税と復興特別所得税が源泉徴収されます。
しかし年金生活者支援給付金は、障害年金や遺族年金と同じように非課税です。

年金生活者支援給付金を受け取る方法

すでに年金を受給していて、前年度の所得が低下したことにより、新たに年金生活者支援給付金の支給対象となった人には、9月ごろに日本年金機構から、給付金受け取りの案内と請求書が届きます。

これから年金の受給手続きをする人のうち、給付金の支給対象となる人には、年金の新規裁定手続きの案内の中に、給付⾦の請求書も同封されています。

年金生活者支援給付金は、世帯単位ではなく年金と同じように個人単位の給付ですので、夫婦であってもそれぞれ手続きが必要です。自分で記入することが難しい場合は、代理人の代筆も可能です。
請求の手続きは、一度行うだけでよく、翌年以降に再び手続きをする必要はありません。

給付金が振り込まれるタイミングは、年金と同じく偶数月に2か月分が振り込まれますが、年金とは別の項目で振り込まれます。
年金生活者支援給付金の通知書も、年金の通知書とは別に発行されます。

参考資料


年金生活者支援給付金と生活保護

生活保護制度の主旨には「健康で文化的な最低限度の生活」という言葉が盛り込まれています。憲法の生存権に基づいているもので、テレビドラマなどで取り上げられることもありますので、知っている人も多いでしょう。

生活保護の支給は、最低限度の生活の維持のために、あらゆるものを活用することが前提です。
また、生活保護の支給要件には「年金や手当など、ほかの制度で給付を受けることができる場合は、まずそれらを活用してください」とありますので、年金生活者支援給付金の要件に当てはまる人は、給付金受給の申請をしましょう。

生活保護の相談をした人が、年金生活者支援給付金の支給対象者にもかかわらず請求をしていなかった場合は、請求手続きをすすめる必要があります。

生活保護を申請するほど生活に困窮していないという人でも、年金生活者支援給付金の支給対象になったら、請求手続きはしておきましょう。

まとめ

年金生活者支援給付金は、給付金の案内が届いてから請求手続きをするものですが、案内が届いた人でも、本人からの申し出などにより年金の全額が支給停止になっているときは、給付金も支給されません。

また、日本国内に住所がないときや、刑事施設などに拘禁(こうきん)されているときも、給付金は支給されません。この2つの理由に該当するときは、届出が必要です。

上記の届出方法や、給付金についてわからないことがある人は、給付金専用ダイヤルや、最寄りの年金事務所などに相談することをおすすめします。

年金生活者支援給付金の問い合わせ先情報


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この記事の監修者

谷口芳子 【社会保険労務士】

NPO法人や税理士法人を経て現職。社会保険労務士として、社会保険・雇用保険の各種届出、年末調整、労務相談、公正証書作成などの業務を担当。行政書士資格保有。

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