会社都合退職になる条件とは?メリットデメリットや失業保険への影響も!
会社都合退職になる条件とは? 失業保険や履歴書を書く際の影響も!
退職には「会社都合退職」と「自己都合退職」がありますが、どのような違いがあるのでしょうか?この記事では、会社都合退職になる条件やメリットデメリット、失業保険への影響をご紹介します。
- 目次
- 会社都合退職とは
- 会社都合退職とは会社側の都合が原因で労働者が退職すること
- 会社都合退職になる条件や例
- 会社都合による解雇を行う場合の会社の義務
- 会社都合退職と自己都合退職で変わるポイント
- 失業保険の給付要件
- 退職金
- 履歴書の書き方
- 自己都合退職を会社都合退職に変える方法はある?
- 会社都合退職のメリットデメリット
- メリット①失業保険の支給開始時期が早い・支給期間が長い
- メリット②解雇予告手当を受け取れる場合がある
- メリット③在職中から転職活動ができる
- デメリット①転職時の面接で深堀りされる可能性がある
- 会社都合退職に関するQ&A
- Q:会社都合退職の場合も退職届は必要?
- Q:退職勧奨されたことにより退職した場合は会社都合退職になる?
- Q:残業の多さやパワハラが原因の退職を会社都合退職にするには?
- Q:会社都合退職に該当するケースを自己都合退職にしてほしいと言われたらどうすればいい?
- Q:派遣社員が契約満了で退職する場合は会社都合になる?
- まとめ・退職前には会社都合退職になる条件を確認しておくことが重要
会社都合退職とは
会社員が退職する際の理由は、大きく分けると「会社都合退職」と「自己都合退職」の2つに分類されます。
まずは、両者の違いや会社都合退職になる条件や例を確認していきましょう。
会社都合退職とは会社側の都合が原因で労働者が退職すること
会社都合退職とは、会社側の都合が原因で労働者が退職することです。退職の理由が、倒産や業績悪化による解雇など、労働者の個人的な都合ではないことが特徴です。
また、残業の多さやパワハラなどによる退職も会社都合退職になる場合もあります。
自己都合退職との違い
会社都合退職と自己都合退職では離職理由が異なります。
自己都合退職は、労働者の都合が原因で退職することです。以下のような、会社都合ややむを得ない理由以外の場合が自己都合退職に該当します。
自己都合退職に該当する退職理由
- 会社への不満
- 他社への転職
- 結婚・出産・育児・介護等の家庭の事情
- しばらく仕事をしないで休みたい など
ただし、自己都合に該当する場合でも正当な理由がある場合は、「特定理由離職者」に該当します。
特定理由離職者に該当する退職理由
- 心身の障害や身体機能の減退
- 妊娠・出産・育児等により働くことが困難になった
- 家族の介護や看護などの家庭の事情が急変した
- 転勤などにより配偶者や扶養家族との別居が難しい
- 会社が移転したことにより通勤が困難になった
- リストラにより希望退職した
- 更新の可能性のある労働契約で働いていた人が更新を希望したにも関わらず契約を終了された など
上記のような特定理由離職者に該当する退職の場合は、失業保険上の扱いは会社都合退職と同等になります。
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会社都合退職と自己都合退職どちらになるかはいつ決まる?
では、会社都合退職と自己都合退職のどちらになるかはいつ誰が決めるのでしょうか?
退職後に失業保険を受給する場合はハローワークが判断します。
従業員が退職する際には、会社が会社都合と自己都合のどちらなのかを判断して、離職証明書をハローワークに提出します。後日、退職した人には会社から離職票が郵送されます。
離職票には「会社都合退職」か「自己都合退職」のどちらかが記載されているので、その退職理由に納得できない場合はハローワークに異議申し立ても可能です。
ただし、離職票が届くまでには多少時間がかかります。退職時に会社都合退職と自己都合退職のどちらになるか不安な人は、人事部に問い合わせをしてみるとよいでしょう。
会社都合退職になる条件や例
では、どのような退職理由の場合が会社都合退職になるのでしょうか?ここでは、厚生労働省の「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準」を基に、会社都合退職になる条件や例を解説します。
※1:厚生労働省|特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準
会社が倒産したことによる退職
「会社が倒産したことによる退職」には以下のケースが含まれます。
会社が倒産したことによる退職に含まれるケース
- 倒産・破産・民事再生・会社更生等の各倒産手続の申立て、または手形取引の停止などによる退職
- 1ヶ月に30人以上の離職、および1ヶ月に職場の3分の1を超える人が離職したことによる退職
- 事業所の廃止による退職
- 事業所の移転により通勤が困難になったことによる退職
会社の倒産の他、事業所の廃止や移転により通勤が困難になったことによる退職も会社都合退職に該当します。また、自分がリストラ対象ではなくてもリストラにより大幅に人員が減ったことを理由に退職した場合も、会社都合退職に該当する場合があります。
会社からの解雇による退職
「会社からの解雇による退職」には以下のケースが含まれます。
会社からの解雇による退職に含まれるケース
- 解雇
- 労働契約で明示された労働条件と実際の労働状況が著しく違ったことによる退職
- 賃金の3分の1を超える金額が期日までに支払われない月が2ヶ月以上続いた・もしくは離職前6ヶ月に3ヶ月あったことによる退職
- 賃金が85%未満に低下した・もしくは低下する予定による退職
- 離職前6ヶ月の時間外労働が「3ヶ月連続して45時間」「1ヶ月でで100時間」「2〜6ヶ月で平均月80時間超」のいずれかに該当し、行政機関から指摘されたにも関わらず、事業所が健康障害を防止するために必要な措置を講じなかったことによる退職
- 生活の継続のために必要な配慮を行わない職種転換があったことによる退職
- 3年以上引き続き雇用された期間の定めのある労働契約が更新されなかったことによる退職
- 契約の更新が明示された期間の定めのある労働契約で契約更新されなかったことによる退職
- 上司や同僚などからの嫌がらせによる退職
- 退職勧奨を受けたことによる退職
- 会社都合による休業が引き続き3ヶ月以上続いたことによる退職
- 会社の業務が法令違反に該当したことによる退職
なお、ここでの解雇は従業員に特別な責任がない会社都合による解雇です。従業員が懲戒処分に該当する問題を起こした場合の解雇は、会社都合退職に該当しません。
契約上の労働条件と実際の労働状況が著しく違う場合や賃金の未払い、慢性的な残業や更新予定の雇用契約が更新されなかった場合なども会社都合退職に該当する場合があります。
会社都合による解雇を行う場合の会社の義務
会社都合による解雇を行う場合、会社は以下のいずれかを行う義務があります。
会社都合による解雇を行う場合の会社の義務
- 解雇日の30日以上前に解雇予告を行う
- 30日以上前に解雇予告が行えない場合は、30日分以上の解雇予告手当を支払う
なお、上記の対象となるのは、契約期間の定めのない正社員、および2ヶ月超の有期雇用契約を締結している人が実際に2ヶ月超働いている人、などです。
会社都合退職と自己都合退職で変わるポイント
では、会社都合退職と自己都合退職で変わるのはどのようなことなのでしょうか?ここでは、会社都合退職と自己都合退職で変わるポイントを解説します。
失業保険の給付要件
1つ目は、失業保険の給付要件です。
失業保険とは、失業状態の人が安定した生活を送りながら就職活動が進められるように、雇用保険から給付されるお金のこと。正式名称は「雇用保険の基本手当」ですが、通称として「失業保険」と呼ばれることが多いです。
失業保険は退職理由により給付が開始される時期や期間が異なります。
会社都合退職 | 自己都合退職 | |
---|---|---|
受給資格 | 離職日以前の1年間に | 離職日以前の2年間に |
開始期間 | 受給資格決定日 | 受給資格決定日から |
受給期間 | 別表 |
|
会社都合退職の場合の失業保険の受給期間は以下の通りです。
離職時 | 雇用保険の被保険者期間 | ||||
---|---|---|---|---|---|
1年未満 | 1年以上 | 5年以上 | 10年以上 | 20年以上 | |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ─ |
30歳以上 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35歳以上 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45歳以上 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
上記を見てわかる通り、自己都合退職より会社都合退職の方が失業保険の給付条件は優遇されます。
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退職金
2つ目は、退職金です。
退職金制度のある会社では、自己都合退職より会社都合退職の方が退職金の金額が高くなる規定が定められている場合があります。
また、会社の倒産や解雇による退職の場合、退職金の他に「解決金」や「退職上乗せ金」のような給付がある会社もあります。
退職金に関する規定は基本的には雇用契約書や就業規則で定められているため、あらかじめ確認しておきましょう。
なお、確定拠出年金や企業年金などの制度による退職金は、退職理由によって増減することはありません。
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履歴書の書き方
3つ目は、履歴書の書き方です。会社都合退職と自己都合退職では履歴書の職歴の書き方が異なります。
退職理由別の履歴書の書き方
- 会社都合退職→会社都合により退職
- 自己都合退職→一身上の都合により退職
会社の倒産による退職の場合は「(会社倒産のため)」など、カッコがきで理由を補足してもよいでしょう。
自己都合退職を会社都合退職に変える方法はある?
「自分では会社都合退職だと思っていたのに、離職票には「自己都合退職」の文字が…」そんな場合は、ハローワークに申請することで、会社都合退職に変更できる可能性があります。
ただし、申請時には会社都合退職になる証拠が必要です。
例えば、契約上の労働条件と実際の労働状況が著しく違った場合や賃金の未払い、慢性的な残業や嫌がらせがあったことによる退職の場合は、以下のような現状が証明できるものを持参する必要があります。
会社都合退職となるべき証拠の例
- 雇用契約書
- 給与明細
- 勤務状況のわかるデータ
- 嫌がらせの証拠音声 など
自己都合退職にされてしまう恐れのある場合は、念の為、在職中に証拠となるものを集めておくことをおすすめします。
会社都合退職のメリットデメリット
会社都合退職にはどのようなメリットデメリットがあるのでしょうか?ここでは、会社都合退職のメリットデメリットをご紹介します。
メリット①失業保険の支給開始時期が早い・支給期間が長い
メリット1つ目は、失業保険の支給開始時期が早く、支給期間も長いことです。
「会社都合退職と自己都合退職で変わるポイント」でもお伝えした通り、失業手当の面では自己都合退職より会社都合退職の方が優遇されます。
自己都合退職の支給開始時期は「7日間の待機期間+2ヶ月の給付制限後」ですが、会社都合退職の場合は「7日間の待機期間の翌日」。自己都合退職の支給期間は最大150日ですが、会社都合退職の場合は最大330日です。
失業中の生活を支えてくれる失業保険の受給要件が優遇されているのは、会社都合退職の大きなメリットといえるでしょう。
メリット②解雇予告手当を受け取れる場合がある
メリット2つ目は、解雇予告手当を受け取れる場合があることです。
業績不振などの会社都合で従業員を解雇する場合、会社は解雇日の30日以上前に解雇予告をする必要があります。
例
- 3月31日付けで解雇する場合→遅くても3月1日までには解雇予告をする必要がある
なお、この場合、解雇予告日は30日の日数に含まれません。
もし、予告日が解雇日前30日に満たない場合は、会社は不足日数分の解雇予告手当を支払う必要があります。「今日で解雇」という突然の解雇の場合は、解雇と同時に30日分以上の解雇予告手当を支払わなければなりません。
解雇予告手当の計算式
- 解雇予告手当:平均賃金×30日までの不足日数
- 平均賃金:解雇予告日(解雇日)以前3ヶ月間に支払われた賃金の総額÷該当期間の暦日数」
わかりやすいように以下の条件の場合の解雇予告手当を計算してみましょう。
■前提条件
月給:25万円
賃金の締め日:月末
解雇日:3月31日
解雇通知日:3月10日
まずは、平均賃金を計算するために必要な賃金の総額と該当期間の暦日数を確認します。
賃金の総額は「25万円×3ヶ月」=75万円。
暦日数の合計は90日になります。
期間 | 暦日数 |
---|---|
12/1〜12/31 | 31日 |
1/1〜1/31 | 31日 |
2/1〜2/28 | 28日 |
合計 | 90日 |
平均賃金は「75万円÷90日」=8,333.33円(銭未満を切り捨て)。
30日までの不足日数に解雇通知日は含まれないため、不足日数は21日。
解雇予告手当は「8,333.33円×21日」=174,999.93
円未満の端数は四捨五入のため、175,000円。
上記のケースの場合、会社は175,000円の解雇予告手当を解雇通知と同時に支払う必要があります。
※3:厚生労働省|解雇には30日以上前の予告が必要です
※4:厚生労働省|平均賃金の計算方法
メリット③在職中から転職活動ができる
メリット3つ目は、在職中から転職活動ができることです。
会社都合退職の場合、退職の理由は会社にあります。そのため、転職活動で面接に行く際など、必要以上に引け目を感じずに転職活動を進められます。面接のための休みも取りやすいでしょう。
デメリット①転職時の面接で深堀りされる可能性がある
デメリットは、転職時の面接で退職理由を深掘りされる可能性があることです。
特に解雇の場合は、業績不振による解雇なのか求職者の勤務態度や能力不足による解雇なのかを確認される可能性があります。
面接時に落ち着いて事情を話せるよう、しっかり対策を練っておきましょう。
会社都合退職に関するQ&A
最後に、会社都合退職に関するQ&Aをご紹介します。
Q:会社都合退職の場合も退職届は必要?
A:会社都合退職の場合は、基本的には退職届は必要ありません。会社から退職届を提出するよう言われた場合は、会社都合により退職する旨をはっきりと記入しましょう。
「一身上の都合」と記入すると、会社から自己都合退職扱いにされてしまう可能性があるため、注意が必要です。
【退職届】【退職願】の正しい書き方マニュアル|便箋や封筒はどうする?
Q:退職勧奨されたことにより退職した場合は会社都合退職になる?
A:退職勧奨されたことにより退職した場合は、原則的には会社都合退職になります。ただし、退職勧奨を受け入れて退職した場合でも自己都合退職扱いにしたがる企業も存在するため、注意しましょう。
可能であれば、退職合意書の作成がおすすめです。退職勧奨により退職した内容や退職条件を明記しておくことで、企業とのトラブル発生を防げます。
退職勧奨とは|されたらどうする?会社都合退職になる?違法になるケースとは?
Q:残業の多さやパワハラが原因の退職を会社都合退職にするには?
A:慢性的な残業やパワハラがあった事実を証拠に残して、ハローワークに申請してみましょう。
残業の多さやパワハラが原因の退職の場合、自己都合退職扱いにする会社は多いです。
しかし、厚生労働省の「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準」では、残業の多さが会社都合退職になる判断基準を以下のように定めています。
残業の多さが会社都合退職になる判断基準
- 離職前6ヶ月の時間外労働が「3ヶ月連続して45時間」「1ヶ月でで100時間」「または2〜6ヶ月で平均月80時間超」のいずれかに該当する
- 行政機関から指摘されたにも関わらず、事業所が健康障害を防止するために必要な措置を講じなかった
また、パワハラや嫌がらせによる退職が会社都合退職になる判断基準は以下の通りです。
パワハラや嫌がらせによる退職が会社都合退職になる判断基準
- 上司や同僚等から故意の排斥を受けた
- 上司や同僚等から著しい冷遇を受けた
- 上司や同僚等から嫌がらせをを受けた
上記に該当する場合は、客観的に判断できる証拠と合わせてハローワークに申請すれば、会社都合退職に変更できる可能性があります。
Q:会社都合退職に該当するケースを自己都合退職にしてほしいと言われたらどうすればいい?
A:自己都合退職を希望しない場合は、はっきりと断りましょう。
Q:派遣社員が契約満了で退職する場合は会社都合になる?
A:派遣社員が契約満了で退職する場合は、その後の対応により会社都合退職になるか自己都合退職になるかが決まります。
会社都合退職になるケース | 自己都合退職になるケース |
---|---|
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労働者の意思がポイントになるため、派遣会社に自分の意思をはっきり伝えることが大切です。
まとめ・退職前には会社都合退職になる条件を確認しておくことが重要
会社都合退職とは、倒産や解雇などの会社都合により退職することです。倒産や解雇の他に、慢性的な残業やパワハラなどによる退職も会社都合退職になる場合があります。
会社都合退職と自己都合退職で大きく異なる点は、失業保険の給付要件。会社都合退職の場合は、退職後の生活を支えてくれる失業保険の受給開始時期や受給期間が優遇されます。
他にも退職金や職歴への影響も考えられるため、退職する際は安易に自己退職にせず、理由を考えてから退職手続きを行うよう心がけましょう。
参考資料
厚生労働省|特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準
厚生労働省|離職されたみなさまへ
厚生労働省|解雇には30日以上前の予告が必要です
厚生労働省|平均賃金の計算方法
この記事の監修者
新名範久 【税理士・社会保険労務士】
「新名範久税理士・社会保険労務士事務所」所長。 建設、不動産、理美容、小売、飲食店、塾経営といった幅広い業種の法人や個人の税務・会計業務を行う。社会保険労務士として、法人の社会保険業務も担当。1人でも多くの人に、税金に対する理解を深めてもらいたいと考え、業務を行っている。 税理士、社会保険労務士、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、測量士補、CFP、FP技能検定1級、年金アドバイザー2級、証券外務員1種などの資格を保有。