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後期高齢者医療保険の自己負担割合が上がるのはどんな人?減免についても知ろう

谷口芳子 【社会保険労務士】

後期高齢者の中には、2022年10月から医療保険の自己負担が1割から2割に変わる人がいます。自己負担が上がる背景や、対象となる人の基準、負担増の割合や減免制度について解説します。

目次

前期高齢者は65歳、後期高齢者は75歳から

後期高齢者の医療保険について説明をする前に、日本の医療保険の大きな枠組みについて説明します。

日本の医療保険は、大きく3つに分かれており、「被用者保険」、「国民健康保険」、「後期高齢者医療制度」があります。

このうち「被用者保険」は、企業が単独で設立する、または同種・同業の企業が集まって設立する「健康保険組合」と、健康保険組合が設立されていない企業が加入する「全国健康保険協会(協会けんぽ)」、公務員などの「共済組合」に分けられます。

「国民健康保険」は、自営業や農業の人などが加入する、お住まいの地域の市町村国保です。

医療保険では65歳から74歳を前期高齢者としていて、被用者保険か市町村国保のどちらかに加入することになっています。
75歳からの後期高齢者は、別枠で医療制度を設けています。

後期高齢者の医療費の財源

勤め人が加入者となっている被用者保険は前期高齢者の割合が少なく、市町村国保は前期高齢者の割合が多い傾向があります。

財政面で見ると、被用者保険は保険料収入が多く、医療費の支出が少ないのに対し、市町村国保はこの反対で、保険料収入が少なく、医療費の支出が多くなっています。

それぞれの健康保険の収支バランスを調整するため、健康保険組合と協会けんぽなどからは「前期高齢者納付金」を拠出し、市町村国保の医療費負担を調整しています(前期調整額)(※1)。

別立てで設けている後期高齢者医療制度には、市町村国保からも「後期高齢者支援金」という名前で保険料が拠出されています。
そのほか、後期高齢者医療保険の財源は、半分が税金からの負担です。

2019(令和1)年度の後期高齢者医療保険の収入を見ると、合計​​15.7兆円の収入の内訳は、公費(税金)が7.9兆円で50.3%、後期高齢者の保険料が1.3兆円で8.3%、後期高齢者支援金が6.5兆円で41.4%となっています(※2)。

※1:2022(令和4)年3月 全国高齢者医療・国民健康保険主管課(部)長及び後期高齢者医療広域連合事務局長会議資料(厚生労働省)P8より
※2:上記資料P8「制度別の財政の概要(令和元年度)」グラフより

人口が多い「団塊の世代」が後期高齢者になる

1947(昭和22)年生まれから1949(昭和24)年生まれの「団塊の世代」と呼ばれている、第二次大戦後最大のベビーブーム(赤ちゃんの出生数が急増すること)で生まれた人たちが、そろそろ後期高齢者に仲間入りをします。
2022(令和4)年版高齢化白書によると、2021(令和3)年に1,867万人で人口の14.9%だった後期高齢者の割合が、2025(令和7)年には2,180万人で17.8%になり、一気に増えると推計されています。

近年、医療費の負担割合が見直された背景には、後期高齢者の増加に伴い、支出が増えると予想される医療費を、一定以上の所得がある人にも負担してもらい、現役世代の負担増を抑えようというねらいがあるのです。

参考資料
2022(令和4)年版高齢化白書(概要版)第1章 第1節 高齢化の状況(内閣府)

2022(令和4)年10月に窓口負担が2割になる人

2022(令和4)年9月ごろに、10月1日からの窓口負担割合が記載された健康保険証が、後期高齢者全員に郵送されることになっています。
例年、7月に新しい健康保険証が郵送されるものですが、今年は2回郵送されることになります。
負担割合が1割や3割のままで変わらない人にも新しい健康保険証が届きますので、負担割合が何割になっているかを確認しておきましょう。

負担割合が上がるのは、75歳以上や、一定の障害があると認められた65歳~74歳の人のうち、一定以上の所得がある人です。
所得の基準は、対象の人が1人の世帯と、2人以上いる世帯で違います。

<窓口負担割合が2割となる所得基準>
・75歳以上の人などが1人の世帯のとき
「課税所得が28万円以上」かつ「年金収入も含めた合計所得金額が200万円以上」

・75歳以上の人などが2人以上いる世帯のとき
「課税所得が28万円以上」かつ「年金収入も含めた合計所得金額が320万円以上」

社会保険制度に関する記事はこちらもぜひ参考にしてください。
今さら聞けない!介護保険制度とは?仕組みや保険料を徹底解説!

参考資料

負担増加を抑える3年間の措置

2022(令和4)年10月1日から窓口の負担割合が2割となる人には、2025(令和7)年9月30日までの3年間、負担を抑える措置があります。

この措置では、入院したときの医療費は対象外ですが、外来診療で支払う医療費の負担増加額を、1か月あたり3,000円までに抑えるとしています。
1か所の医療機関で、1割負担から2割負担となったときの差額が3,000円を超えたときは、差額分を支払う必要はありません。
医療費そのものが3,000円だったときではなく、差額が3,000円だったときなので、注意が必要です。

複数の医療機関を受診した場合は、差額分が、高額療養費の払い戻しのために登録されている口座に後日振り込まれます。口座の登録がされていない人には、登録のための申請書が郵送で届きますので、登録をしておきましょう。

後期高齢者医療制度の減免

保険料の減免は、天災や事業の不振などで保険料の納付が難しい場合に、保険料の全額免除や一部を減額してもらう制度で、申請が必要です。
後期高齢者本人だけでなく、同じ世帯の世帯主と配偶者も連帯納付義務者とされていますので、世帯主の収入などで保険料の減免が認められることになっています。

保険料の減免は、新型コロナウイルス感染症の流行により、世帯主が亡くなった場合などにも認められます。

後期高齢者の医療は、全国の市町村が加入する「後期高齢者医療広域連合」が運営しています。都道府県ごとに後期高齢者医療広域連合のホームページがあり、それぞれに保険料の納付猶予や減免についての案内もありますので、お住まいの地域のホームページを見てみるとよいでしょう。

参考資料
令和4年度版 高齢者医療制度に関するお知らせ 新型コロナウイルス感染症拡大による保険料の減免措置が延長されました(大阪府後期高齢者医療広域連合)

保険料は年金天引きが基本

1年間に18万円以上の年金を支給されている人は、後期高齢者医療保険料や介護保険料のほかに、住民税も年金から天引きされる仕組みになっています。
これは、年金受給者が金融機関に保険料や住民税を納めに行く手間を省くためと、市町村が納付勧奨などをしなくても済むようにするための、双方の負担を軽減する仕組みです。

それまで天引きされていた保険料などが天引きされなかった場合は、年金が支給停止となった場合などです。
複数の年金受給権がある人が、いずれかの年金を選択した場合に、選択しないほうの年金が支給停止となります。
ほかには、現況届を期限までに提出しないときも年金の支払いが一時差し止めとなりますので、年金から天引きされない場合があります。

まとめ:詐欺被害にご注意を!

後期高齢者医療保険の負担割合が増えるなどの重要な通知は、書類の形で各個人宛てに郵送されます。公的な機関が、大切なお知らせを電話で連絡してきたり、ATMの操作を依頼したり、住まいへ直接訪問したりすることはありません。

多くの人がそういった実態をわかっているつもりでも、残念ながら詐欺のニュースは後を絶ちません。
今後、医療費の負担割合が増えたことによって払い戻しなどがある人は、重要な書類の到着を待ちましょう。常日頃から注意して、詐欺などの被害に合わないように気をつけてください。

この記事の監修者

谷口芳子 【社会保険労務士】

NPO法人や税理士法人を経て現職。社会保険労務士として、社会保険・雇用保険の各種届出、年末調整、労務相談、公正証書作成などの業務を担当。行政書士資格保有。

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