「シニアのオンライン面接対策講座」講師に聞く、シニアがオンライン面接に受かるコツ
シニアのオンライン面接対策についてシニア就活オンライン講座の講師を務めたシニアジョブ人事部長の山田萌香に聞きました。
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新型コロナウイルスの世界的な流行により、2020年から採用の面接にも影響が及び、オンライン面接が大きく普及しました。
オンライン面接は、新卒採用や若手のみならず、シニアの転職・再就職の場面でも普通に見られるものとなっていますが、急に不慣れなZoomなどのオンライン会議ツールを使ったオンライン面接を受けなければならなくなったシニア層の中には、戸惑う人も少なくありません。
そこで、シニア専門の人材紹介会社で、2021年7月現在、延べ53,000名を超えるシニア求職者が登録するシニアジョブでは、2020年の8月以降、複数回に渡ってオンライン面接の対策を含むシニア向けのオンライン就活講座を開催しました。
今回、シニアタイムズでは、2020年9月21日に開催された「シニア就活オンライン講座・WEB面接対策編」の講師を務めたシニアジョブ人事部長の山田萌香に、シニアのオンライン面接対策についてインタビューしました。
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シニアがオンライン面接で注意すべきこととは?
――オンライン講座の講師を務めてみてどうでしたか?
まず、普段からシニアの方のマッチングを担当しているとはいえ、新卒の私がシニアの方に面接対策をアドバイスするウェビナーの講師に抜擢されるとは思っていなかったので、びっくりしましたし、最初は不安でした。
しかし、キャリアアドバイザーと兼任で採用責任者(※当時。現在は人事部長)もしていて、社長から「自分自身が面接時に応募者をどんな視点で見ているかを伝えると、シニア求職者にも若い面接官の視点がわかって参考になると思う」と言われ、それを伝えることにしました。
スライドを準備して、参加者のシニアの方への就活アトバイスをまとめている時は難しさを感じましたが、面接前のシニアの方に連絡する際にお伝えしていることが整理できたので、とても良い経験になりました。
実際にオンライン講座が始まると、普段面談で接しているのと同じようなシニアの方が、熱心に私の話を聞いてくれていたので緊張も解け、面接テクニックが少しでもシニアの方に伝わるように、頑張ってお話ししました。
――シニアの方はオンライン面接でどんなことに注意すればよいのでしょうか?
シニアの方はオンライン面接に不慣れなイメージがあるかもしれませんが、実はオンライン面接に不慣れなのは、新卒の学生さんも一緒です。
特に2020年に就職活動をしていた21年卒業の学生の方は、これまでとはまったく違う就職活動の環境にいきなり投げ込まれたわけです。
そういった意味では、シニアの方だけがオンライン面接に不慣れなわけではないので、わからないことは素直にわからないと言って教えてもらえばよく、まずは自信を持ってオンライン面接に臨むことが重要ですね。
その上で、シニアの方がオンライン面接で気をつけるべきポイントは4つあります。
- 機器や環境などの設定
- 話し方
- メモの取り方
- 目線
この4点です。
1.機器や環境などの設定
まず、機器や面接を受ける環境の設定は事前にできるので、あらかじめ準備しておき、本番で焦らないようにしましょう。
背景はなるべくシンプルになるように気をつけて、難しいようなら白い布などを引いて隠すとよいでしょう。
バーチャル背景は選考に不利という話もあり、完全な真偽は定かではありませんが、可能な限りは実際の風景がよさそうです。
バーチャル背景の場合もシンプルな背景を選びましょう。
逆光を避け、カメラは目線の高さにセットし、スマートフォンを使う場合は横向きにしましょう。
2.話し方
オンライン面接では実際に対面した時に比べてニュアンスなどの情報が伝わりにくくなり、マイクを通すため、声も聞こえにくくなりがちです。
対面の時よりもさらにハキハキした話し方を心がけ、身振り手振りやリアクションも大きめに実践しましょう。
相手の表情も読み取りにくくなるので、むしろ面接を受ける側が大きな身振りと手振りとリアクションで面接官のリアクションを引き出すようにしましょう。
3.メモの取り方
メモを取る場合は手書きにしましょう。
パソコンでオンライン面接を受ける場合は、そのままタイピングもできますが、タイピング音を拾ってしまうので面接の邪魔になります。
4.目線
目線はカメラの少し上に意識して向けることが望ましいです。
対面と違い、面接官の目を見てもカメラの位置とは違うため、下を向いたうつろな表情になってしまいます。
若い方にも共通する、基本的なポイントになりますが、オンライン面接を受けるシニアの方は特にこうした点を気をつけましょう。
若手面接官がオンライン面接で注目している点とは?
――山田さんは自身が面接官でのオンライン面接では、どんな点に注目しているのでしょうか?
私は普段、シニアジョブの新卒採用や中途採用など、比較的若い方を中心に面接することが多いのですが、年配の方の応募もありますし、お仕事紹介の面談で接することもあって、基本的には若い方もシニアも同じです。
その中でもシニアの場合に注目することが多いことをご紹介しましょう。
まず「面接態度」にはふとした瞬間、その人の人となりが出るため、注目しています。
中には腕を組む、頬杖をつく、タメ口など明らかにNGな行動を取る人もいますし、服装がだらしない人は、おそらく本人が思っている以上に、面接官は気になります。
オンライン面接の場合には、背景や目線、話し方、リアクションにも気を配るようにしています。
経歴で気にするものは、仕事のブランクと退職理由です。
ブランクを気にするのは、スムーズに業務に入ってもらえるかを判断するためであり、また、指導コストがどれくらいかかるのかの判断のためでもあります。
退職理由では、どうしてもポジティブな理由で退職することは少ないものの、理由を通り越して上司や同僚の悪口や批判になってしまうような人は、やはり評価することができません。
体調不良が退職理由の場合には、現在、しっかりと改善できているのか必ず面接官は確認しますし、意外と注視されてしまう退職理由となるのがスキルアップです。
若い人材がスキルアップを目指して転職するのはよくある前向きなものですが、シニアの方は悪いことではないにせよ、即戦力であることが求められる場合も多く、その場合にスキルアップのために転職する方はマイナスのイメージとなる可能性があります。
また、面接官が「当社はあなたがスキルアップできる環境ではない」と考えてしまう場合も、マイナスとなるため、スキルアップを退職理由の全面に出すのも、シニアの場合は注意が必要なのです。
そしてシニアの面接でもっとも重要な面接官の注目ポイントが、いつまで働きたいのか、です。
どの世代でも長く働いてくれそうな人材を探すのに変わりはありませんが、特にシニアの場合、64歳の方が65歳まで働きたいのか70歳まで働きたいのかでは期間が大きく変わるため、いつまで働きたいのかは面接官の注目度も高いですし、自身からアピールすべきポイントにもなります。
採用されやすいシニアと採用されにくいシニアの違いは?
――採用されやすいシニアと、採用されにくいシニアにはどんな違いがありますか?
そうですね、採用されやすいのは、まず、現場の即戦力となる方で、また性格面では謙虚な方、そして相反するようですが、自分のスキルに誇りを持てる方です。
反対に採用されにくいのは、まず面接時や履歴書等で、職歴や経験を簡潔に述べることができない方、またシニアの場合は必ずしも年収アップが可能なわけではないため、年収維持や年収アップへの想いが強い方、そしてそれ以外の条件でもこだわりが強い方、こだわりが複数ある方なども選考が厳しくなりやすいです。
詳しくご説明すると、現場の即戦力というのはシニアに企業が期待する大きなところで、マネージャーかプレイヤーかで言えば、プレイヤーが有利と言えます。
そのため、これまで管理系の仕事に就いていたシニアの方でも、改めて最前線に立つことを考えて、自分に何ができるか経験・スキルの棚卸しが必要です。
そしてシニアの方には自然と貫禄が出るため、自ら意識して謙虚な振る舞いが必要になります。
自然な振る舞いでは「偉そう」と思われて不利になるかもしれませんが、謙虚で最前線で活躍できるシニアは、むしろ企業も積極的に採用したい人材と言えます。
自分のスキルに誇りを持てる方、というのは、一見、プライドが高い方で謙虚さと真逆の採用されにくいシニアのように思えるかもしれません。
しかしこれは、例えば社内成績や表彰歴といった他の社員と比べた評価ではなく、自身の中でしっかりと誇れる経験・スキルを持った方という意味になります。
むしろ、自分の経験・スキルに自信がない、応募先企業でどうスキルを活かせるかわからないというシニアの方は、職歴や経験を過剰に長く喋ってしまいがちです。
応募先の役に立つ経験・スキルを簡潔に話せず、長々と喋ってしまった場合は、良さが伝わらないだけでなく自慢話と捉えられてしまう可能性もあるため、長くとも3分以内で自身の経歴をまとめられるようにしましょう。
60歳を超えると、企業にもよりますが、まだまだ59歳以下よりも年収が下がるケースが多くなります。
そのため、一旦相場よりも低い給与設定の企業に勤めてしまった場合などを除き、年収アップは難しくなり、あまりに高い年収の提示をすると、かなり不利になってしまいます。
反対に、あまりにも相場から低い希望年収を提示した場合も、求職者の方は良かれと思って提示していたとしても、やる気がない、その程度のスキルしかないと企業側から思われて、落ちてしまう場合もあるため。注意が必要です。
さて、年収も含めた条件へのこだわりは、希望の職場を探す上で欠かせませんが、こだわりが強すぎる、またはこだわりが多すぎるシニアは敬遠されてしまいます。
希望する条件がすべて合致するということは、特にシニアになるとかなり少なくなるため、こだわりを無くす必要はないものの、その優先順位をつけておき、優先順位の低いこだわりには時として妥協も必要です。
――求職者の方は気にするけれど、実際は気にしなくてもよいこともあるそうですが?
ありますね、まず、履歴書や職務経歴書が、手書きのほうがよいのか、パソコンで作るべきかを気にする方がいますが、実際の採用担当者の本音としては「どちらでも変わりません」。
よく、「手書きのほうが熱意が伝わる」と言われますが、手書きをより評価することもなければ、パソコンの評価を下げることもありません。
純粋に内容を読んで評価しています。
また、パソコンで履歴書を作る場合、顔写真について貼り付けるべきか、デジタルデータを印刷すべきか悩む方もいますが、これも「どちらでも構いません」。
写真を貼り付ける場合は、剥がれてしまうことを想定して写真裏に名前を記入しつつ、剥がれないように糊でしっかり貼り付け、印刷の場合は白黒でなく、表情が明るくハッキリ見えるカラー印刷を選びましょう。
履歴書の顔写真で失敗しない!シニア転職で受かりやすい履歴書写真の撮り方のコツ
もう一つ、職種にもよるものの、シニアの方でパソコンスキルを極端に気にする方がいますが、これもあまり面接官が特別重視しないポイントになります。
パソコンでの操作が必須となる特殊技術や、MOS資格のようなパソコンスキルを必須とする求人であれば、それらの経験・スキルを厳密に判断しますが、そうでない場合、ことさらパソコンの得意不得意を気にすることはありません。
そもそも、多くの職場がなるべく簡単に操作できるアプリの導入を目指し、新しいソフトやアプリについては社内で教育や研修を行うことが一般的なので、現時点での得意不得意よりも「新しいものを積極的に学ぼうとする姿勢」を評価するでしょう。
極端にパソコンスキルがないことを強調する求職者は、むしろ学ぶ姿勢や積極性がないといった方向でマイナス評価になりかねませんので注意しましょう。
オンライン面接に挑むシニアへのアドバイス
――その他、シニアの方がオンライン面接に挑む際のアドバイスなどはありますか?
はい、これからオンライン面接や転職・再就職を目指すシニアの方には、ぜひ、次の3点を気にしてもらえたら嬉しいです。
- 内定承諾は早めにする
- 体力が許す限りはフルタイムの仕事に就く
- 面接機会は逃さない
それぞれ詳しく解説します。
1.内定承諾は早めにする
もちろん、雇用契約書などをきちんと確認せずにその場で内定承諾してしまうと、後々トラブルになるケースもありますが、中高年の転職・再就職で中小企業への応募の場合、面接時その場で内定が出ることも多くあります。
増えてきているとはいえシニア向けの求人は若者向けよりは少ないため、内定承諾まであまり時間をかけると他の方に決まってしまうことや、企業の心象を悪くすることもあります。
そのため、なるべく早めの内定承諾を心がけましょう。
2.体力が許す限りはフルタイムの仕事に就く
実質的な定年が60歳から65歳に延び、さらに70歳までの就業機会確保が努力義務となったことで、60代前半の方の多くはフルタイムで働くようになり、70歳前後でもフルタイムの方が増えています。
体力的に問題がない場合、副業やご家族の都合も問題がない場合は、極力フルタイムのお仕事を選ぶほうが求人数も多く、条件面やその後のキャリアについてもより有利と言えます。
3.面接機会は逃さない
現在仕事をしている方などは時間も制限されますし、特にオンライン面接の場合は、シニアの方だと人によって準備が必要だったり、すぐに行うことを戸惑ったりする方も多いことでしょう。
また、多少条件が良くなかったり、会社の噂で気になることがあったりすることもあると思います。
しかし、シニアが採用選考を受けられる機会自体少なく、さらに書類選考を突破して面接に進むことができるのもシニアでは少なくなるため、せっかくの面接機会は例え不慣れなオンライン面接であっても貪欲にトライしていただきたいです。
――最後に、オンライン面接に挑むシニアの方へ山田さんからエールをお願いします!
心構えとして、落ちても凹まないというのが、オンライン面接に限らずシニアの方の採用選考では重要です!
シニアの方の中には新卒で就職してから転職を経験したことがない方も少なくなく、就職活動にも、その採用選考で落とされることにも慣れていない方がいらっしゃいます。
そしてシニアの方はそもそも転職・再就職が難しいため、100枚近く履歴書を送っても受からないという方の話も聞きます。
しかし、それで凹んでしまうのではなく、体験を次に活かして成功へと近づいてもらえたら嬉しいです。
また、これも心構えですが、シニアの方は自分から壁を作らないようにしましょう!
同年代の方と仕事をしたい気持ちはわかりますが、若い経営者や社員が活躍する勢いのある会社もシニアの方を求めていますし、そうした会社はシニアだからといって差別することはあまりありません。
かえってシニアの方自身が壁を作ってしまうことで、活躍の幅を狭めてしまうケースをよく見かけます。
オンライン面接もそうで、シニアでなくとも多くの方が初めてオンライン面接を体験しています。
オンライン面接が不慣れだからといって敬遠するのではなく、わからないところは遠慮なく聞いて、積極的に自分のものにしていくシニアの方は、様々な企業で活躍できることでしょう。
この記事の監修者
シニアタイムズ編集部 【編集部メンバー】
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