定年退職後でも失業保険はもらえる!金額・待機期間・もらい方を解説
定年退職後の失業保険 もらい方は?待機期間は?疑問を徹底解説!
定年退職後でも、一定の条件を満たせば失業保険がもらえることをご存じでしょうか?この記事では、定年退職後の失業保険のもらい方や受給額、期間や高年齢求職者給付金との違いを解説します。
- 目次
- 失業保険とは
- 定年退職後に失業保険をもらえる人の条件
- 失業状態でハローワークに求職の申込手続きをしている
- 退職前の2年間に通算して12ヶ月以上雇用保険に加入していた
- 65歳の誕生日の前々日までに定年退職した
- 定年退職後にもらえる失業保険の受給額の計算方法
- 退職前の賃金日額を計算する
- 賃金日額を元に基本手当日額を計算する
- 受給期間を確認する
- 65歳以上で定年退職した場合は【高年齢求職者給付金】が受け取れる
- 高年齢求職者給付金の受取条件と金額
- 失業保険と高年齢求職者給付金の違い
- 失業保険のもらい方
- 求職と基本手当の申し込みをする
- 説明会への参加・7日間の待機期間を過ごす
- 失業認定日にハローワークへ行く
- 失業保険を受け取る
- 定年退職後に失業保険を受給する際の注意点
- 失業保険と老齢年金の両方を受給できない
- 退職後に休養してから求職活動する場合は延長申請をする
- 勤め先の就業規則を確認する
- 失業保険が残っている間に再就職が決まっても別の手当が受け取れる
- まとめ・失業保険と高年齢求職者給付金の違いを把握し計画的な定年退職を
失業保険とは
失業保険とは、雇用保険に加入していた人が退職したときに、再就職までの生活を支援する目的で設けられた手当のこと。「失業保険」と呼ばれることが多いですが、正式には「雇用保険の基本手当」です。
定年退職後は失業手当をもらえないと思っている人もいるようですが、そんなことはありません。一定条件を満たせば、定年退職後でも失業保険はもらえます。
では、どのような人が定年退職後に失業保険をもらえるのでしょうか?
定年退職後に失業保険をもらえる人の条件
失業保険は、「仕事をする意思はあるけれど見つからない人」を支援するための手当です。そのため、大前提として「求職活動をしている」ことが条件に含まれます。
なお、一定条件を満たしている65歳未満の人が定年退職する場合は失業保険が、65歳以上の人が定年退職する場合は高年齢求職者給付金が受け取れます。
まずは、定年退職後に失業保険をもらえる条件を確認していきましょう。
失業状態でハローワークに求職の申込手続きをしている
1つ目は、失業状態であり、ハローワークに求職の申込手続きをしていることです。先ほどもお伝えした通り、失業保険は「仕事をしたいけれど見つからない」人が受け取れる手当です。
そのため、失業状態であり、ハローワークに求職の手続きをしていることが必須条件になります。ハローワークが定めている失業状態は以下の通りです。
失業状態とは
- 積極的に就職しようとする意思がある
- いつでも就職できる能力がある
- 積極的に仕事を探しているにもかかわらず、現在職業に就いていない
逆に、以下のような人は失業状態とみなされないため、失業保険の給付対象にはなりません。
失業保険の対象外の人
- 病気やケガが原因ですぐに働けない
- 家事に専念する
- すでに就職先が決まっている
- 自分で事業を行っている
- 企業の役員に就任している
- 今後は雇用保険対象外の短時間勤務を希望している など
退職後に失業保険をもらいたい場合は、まずハローワークで求職手続きを行いましょう。
退職前の2年間に通算して12ヶ月以上雇用保険に加入していた
2つ目は、退職前の2年間に、通算して12ヶ月以上雇用保険に加入していたことです。
ただし、過去に失業保険をもらったことがある人は、失業保険を受けた後の雇用保険に加入していた期間だけが該当期間になるので注意が必要です。
65歳の誕生日の前々日までに定年退職した
3つ目は、65歳の誕生日の前々日までに定年退職したことです。
理由は、失業保険の年齢の数え方が実際の誕生日の前日に上がることになっているため。つまり、4月1日生まれの64歳の人は、3月31日に退職すると65歳で退職したこととみなされ、失業保険は受け取れないのです。
高年齢求職者給付金ではなく失業保険を受け取りたい人は、必ず誕生日の前々日までに退職手続きを行いましょう。
定年退職後にもらえる失業保険の受給額の計算方法
では、失業保険ではどれくらいの手当がもらえるのでしょうか?ここでは、失業保険の受給額の計算方法を解説します。
失業保険の受給額は、退職前の賃金によって異なります。失業保険の1日当たりの手当金のことを「基本手当日額」といいますが、基本手当日額を計算するためには、まず退職前の「賃金日額」を計算します。
退職前の賃金日額を計算する
退職前の賃金日額は、退職前6ヶ月の平均賃金を基に計算します。
賃金日額の計算方法
- 退職前6カ月の平均賃金÷180
例えば、退職前6ヶ月の平均賃金が月30万円の場合、賃金日額は「180万円(30万円×6ヶ月)÷180」=1万円になります。
なお、計算に賞与は含まれません。
賃金日額を元に基本手当日額を計算する
賃金日額がわかったら、以下の表で給付率を確認し「基本手当日額」を計算します。なお、以下は退職時の年齢が60〜64歳の給付率です。
賃金日額 | 給付率 | 基本手当日額 |
---|---|---|
2,657円以上 | 80% | 2,125円 |
5,030円以上 | 80〜45% | 4,024円 |
11,120円超 | 45% | 5,004円 |
15,950円超 | ー | 7,117円 |
なお、【注】は、以下の①と②を計算して、いずれか少ない方の金額が基本手当日額になります。
①の計算式(C−B)
- A:(賃金日額−5,030)÷6,090
- B:A×0.35×賃金日額
- C:0.8×賃金日額
②の計算式
- (0.05×賃金日額)+4,448
例として、賃金日額が1万円の場合の基本手当日額を計算してみましょう。
基本手当日額の計算例
- A:(10,000−5,030)÷6,090=0.816
- B:A×0.35×10,000=2,856
- C:0.8×10,000=8,000
- C-B:8,000−2,856=5,144
- ①=5,144
- ②=4,948(0.05×10,000)+4,448
①5,144<②4,948のため、基本手当日額は4,948円になります。
基本手当日額の上限額と下限額
基本手当日額には上限額と下限額があります。それぞれを上回るもしくは下回る場合は、上限額もしくは下限額が基本手当日額です。
基本手当日額の上限額と下限額(2023年現在)
- 上限額:7,177円
- 下限額:2,125円
受給期間を確認する
基本手当日額がわかったら、手当を受け取れる期間を確認します。受給期間は、雇用保険に加入していた期間により異なります。
被保険者期間 | 所定給付日数 |
---|---|
10年未満 | 90日 |
10年以上20年未満 | 120日 |
20年以上 | 150日 |
例えば、先ほど計算した基本手当日額4,948円の人の被保険者期間が30年だった場合、失業保険の金額は「4,948円×150日」=742,200円になります。
なお、失業保険を受給できる権利の有効期間は、退職した日の翌日から1年間です。
■受給期間150日の場合
1年間の期限を過ぎた場合は、失業保険の給付日数が残っていても給付は止められてしまうため、早めに手続きを行いましょう。
65歳以上で定年退職した場合は【高年齢求職者給付金】が受け取れる
65歳未満で退職した場合は失業保険の対象になりますが、65歳以上で退職した場合は失業保険ではなく「高年齢求職者給付金」の対象になります。
高年齢求職者給付金の受取条件と金額
高年齢求職者給付金をもらえる人の条件は以下の通りです。
高年齢求職者給付金をもらえる人の条件
- 失業状態でハローワークに求職の申込手続きをしている
- 65歳以上で退職した
- 退職前の1年間に通算して6ヶ月以上雇用保険に加入していた
高年齢求職者給付金の金額は、原則として、失業保険の基本手当日額の30日もしくは50日分です。
高年齢求職者給付金の金額
- 雇用保険の被保険者期間が1年未満の場合:30日分
- 雇用保険の被保険者期間が1年以上の場合:50日分
なお、高年齢求職者給付金は一時金として支払われます。また、老齢年金と合わせて受け取ることも可能です。
※3:厚生労働省|離職されたみなさまへ<高年齢求職者給付金のご案内>
失業保険と高年齢求職者給付金の違い
失業保険と高年齢求職者給付金はどちらも定年退職後にもらえる手当金ですが、条件や金額には以下の違いがあります。
失業保険 | 高年齢求職者給付金 | |
---|---|---|
雇用保険の | 退職前の2年間に | 退職前の1年間に |
退職時の年齢 | 65歳未満 | 65歳以上 |
所定給付日数 | 90日・120日・150日 | 30日・50日 |
支給形式 | 分割支給 | 一括支給 |
老齢年金との | できない | できる |
受給期間の | できる | できない |
損なく手当金をもらえるように、あらかじめそれぞれの特徴を把握しておきましょう。
失業保険のもらい方
失業保険は申し込みをしてからすぐに受け取れる訳ではありません。ここでは、失業保険のもらい方を解説します。
求職と基本手当の申し込みをする
まずは、住んでいる地域を管轄するハローワークに出向き、求職と基本手当の申し込みをします。
必要書類は以下の通りです。
必要書類
- 個人番号確認書類
- 身元確認書類
- 写真2枚
- 本人名義の預金通帳又はキャッシュカード
- 離職票1・2
離職票は、勤務していた会社から受け取れます。
説明会への参加・7日間の待機期間を過ごす
申し込みをすると、ハローワークが申込者に失業保険の受給資格があるかを確認します。受給資格がある場合は、後日ハローワークで行われる雇用保険受給者初回説明会に参加します。
同時に、7日間の待機期間を過ごさなければなりません。待機期間とは、失業保険を受け取るまでに設定されている収入のない期間のこと。受給資格があることを認められた日から7日間が待機期間です。
失業認定日にハローワークへ行く
失業認定日になったら、再度ハローワークへ出向きます。失業認定日は説明会のときに渡される「失業認定申告書」に記載されていますが、基本的には申込手続きを行った日から約28日後です。
失業認定報告書に求職活動の状況を記載し報告し、雇用保険受給資格証を併せて提出すれば、初回の手続きは終了です。
失業保険を受け取る
求職と基本手当の申し込みをしてから、最短で約1ヶ月後に失業保険が指定の口座へ振り込まれます。失業保険は、初回の振込があった後も4週間に1度ハローワークに出向き、失業認定を受ける必要があります。
定年退職後に失業保険を受給する際の注意点
最後に、定年退職後に失業保険を受給する際の注意点をご紹介します。
失業保険と老齢年金の両方を受給できない
1つ目は、失業保険と老齢年金の両方を受給できないことです。
60歳を過ぎてから老齢年金を受け取っている人がハローワークに求職の申し込みをした場合、申し込みの段階で老齢年金の支給が止められるようになっています。
ただし、65歳以降を対象とした「高年齢求職者給付金」を受け取っても、老齢年金の支給は止められません。
退職後に休養してから求職活動する場合は延長申請をする
2つ目は、退職後に休養してから求職活動する場合は、延長申請をすることです。長い会社員人生が定年退職でひと段落し、次の仕事を始める前に少し休養したい人も多いでしょう。
ただし、失業保険を受給できる権利の有効期間は退職した日の翌日から1年間。なにも手続きせずに休養してしまうと、失業保険がもらえなくなってしまいます。
しかし、退職した日の翌日から2ヶ月以内に「受給期間延長申請」を行えば、最長で権利期間を1年間延長できます。
勤め先の就業規則を確認する
3つ目は、勤め先の就業規則を確認することです。就業規則を確認する目的は、定年の規定を確認するためです。
例えば「定年は満65歳」という規則がある場合、失業保険をもらうために65歳未満で退職すると、自己都合退職になってしまう可能性があります。
定年退職ではなく自己都合退職になってしまうと、失業保険の受給開始期間や受取額が少なくなってしまう可能性もあるのです。
ここで疑問に思うことが、「そもそも定年退職は自己都合なのか会社都合なのか」ということでしょう。
これに関しては明確な規定がありません。ただし、就業規則で定められている定年まで働いて辞めた場合、通常の自己都合の場合に必要な2ヶ月間の給付制限はなく、7日間の待機期間の後から失業保険はもらえるようになっています。
退職届を提出してから後悔することのないよう、勤め先の就業規則はしっかり確認しておくことが重要です。
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失業保険が残っている間に再就職が決まっても別の手当が受け取れる
4つ目は、失業保険が残っている間に再就職が決まっても別の手当が受け取れることです。就職は出会いのようなもの。失業保険を受け取っている期間中に次の就職先が決まるケースは多いでしょう。
失業保険の給付は再就職先が決まると止められます。しかし、「まだ失業保険が残っているのに…もったいない」と思う必要はありません。なぜなら、再就職手当が支給されるからです。
再就職手当の金額は、まだ受け取っていない失業保険の受給期間により異なります。
再就職手当の金額
- 失業保険の受給期間の残りが3分の1以上:支給残額の60%
- 失業保険の受給期間の残りが3分の2以上:支給残額の70%
つまり、早く再就職するほどもらえる金額が大きい仕組みになっています。
さらに、再就職後の賃金が前職よりも大幅に低くなった場合は、就業促進定着手当が受け取れる場合もあります。
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まとめ・失業保険と高年齢求職者給付金の違いを把握し計画的な定年退職を
定年退職後でも一定条件を満たせば、雇用保険から手当金がもらえます。手当は退職時の年齢によって異なり、65歳未満の場合は失業保険、65歳以上の場合は高年齢求職者給付金になります。
両者はそれぞれ異なった性質があるため、後悔することのないよう、退職前にあらかじめ特徴を把握しておき、計画的に定年を迎えましょう。
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参考資料
この記事の監修者
岡地 綾子 【ファイナンシャル・プランナー】
2級ファイナンシャル・プランニング技能士。 年金制度や税金制度など、誰もが抱える身近な問題の相談業務を行う。 得意分野は、生命保険・老後の生活設計・教育資金の準備・家計の見直し・相続など。