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自動車整備士の資格種類・受験資格・費用・年齢制限について解説

松澤裕介 【キャリアアドバイザー】

自動車整備士になるための資格の種類や、受験資格、資格取得にかかる費用、年齢制限などについて、キャリアアドバイザーが解説します。

目次

自動車整備士とは、国家資格であり、自動車の点検や修理などを行うために必要な資格です。
車そのものや、ドライブが好きで、車に関わる仕事がしたい人にはおすすめです。

自動車整備士の資格がなくても、自動車整備に関連した仕事に従事することはできますが、資格を有していないと行えない業務も多数あるため、自動車整備業に関わる多くの人はこの資格を持っています。

今回は、自動車整備士の資格や受験方法、費用などについて解説します。

自動車整備士の仕事内容

自動車整備士の業務内容は、大きく分けて3つあります。この段落では、点検整備、特定整備(分解整備)、板金塗装の3つについて、ご説明します。

点検整備

車の点検は、車の性能を維持するために、なくてはならない業務です。定期的に点検を行うことで、事故を未然に防ぐことができます。

点検業務には、大きく分けて「日常点検」と「定期点検」があります。
日常点検とは、車を使用する人が日常的に行うものです。定期点検とは、車ごとに決められた時期に行う点検のことで、車検とも呼ばれます。
車検は、自動車整備士の中でも「自動車検査員」の資格を持った人のみが行える業務です。自動車検査員については、のちほど詳しく解説します。


特定整備(分解整備)

特定整備は、2020年4月以前(※)は分解整備と呼ばれており、自動車を点検する上で、部品などを外したり、分解したりすることです。点検整備をして問題があった部分を、調整・修理し、問題が出ないようにするものも特定整備(分解整備)に入ります。
特定整備や、2020年4月に追加された「電子制御装置整備」(自動ブレーキなどに使用される前方を監視するカメラやレーダーなどの調整、自動運行装置の整備)を行えるのは、国から認可を受けた「認証工場」や「指定工場」のみです。

※2019年に改正された道路運送車両法により、2020年4月からは、分解整備の範囲が拡大され、名称が「特定整備」に改められました。

板金塗装

自動車整備士の中には、板金・塗装などの業務ができる人もいます。
主にダメージを受けた自動車の外装パーツを元の形に修理し、元のカラーと同じ色の塗料を調合をして、塗装をするものです。
板金塗装は自動車整備士として必須のスキルではありませんが、需要は大いにあります。

自動車整備士の勤務先の種類

自動車整備士の勤務先となるのは自動車関連の企業です。続いては、自動車整備士の主な勤務先の種類をご紹介します。

ディーラー

自動車メーカーと特約店契約を結んだ正規販売店がディーラーです。自動車ディーラーやカーディーラーとも言います。
ディーラーでは、車を販売するだけではなく、車を購入したお客様の車検や、修理などのアフターサービスにも対応します。

ディーラーで働く自動車整備士は、点検の内容をお客様に説明することもあるため、人と接する機会が多いのも特徴です。ディーラー勤務は、接客が苦ではなく、車の話をお客様と進んでしたい人には向いています。
好きな車のメーカーがあるのであれば、ひとつの自動車メーカーのみを扱う正規ディーラーに勤務するのも良いかもしれません。

サブディーラー

サブディーラーは販売店ともいいます。メーカーと特約店の契約を結んでいない店舗を指し、複数のメーカーの車を扱います。
サブディーラーのメイン業務は、地域の顧客に密着した車販売や、整備、修理、車検などです。
サブディーラーの勤務では、さまざまなメーカーや車種に関わることができるため、自動車整備士として幅広いスキルを身につけられるでしょう。

自動車整備工場

自動車整備工場は、「認証工場」と「指定工場」の2つに分かれます。
認証工場とは、国土交通省・地方運輸局長の認証を得た整備工場のことで、車検を行うための点検や整備ができます。
指定工場は、認証工場の要件を満たし、さらに自動車検査員が配置されています。車検場のような検査ラインが工場内にあり、車検車両を陸運局に持ち込む必要がなく、「民間車検場」ともいわれています。

ディーラーに比べると、車と向き合う時間が多めですが、お客様へ点検箇所などを説明する場面もあります。
整備業務を正確かつスピーディーにこなすことが必要となりますので、自動車整備スキルに磨きをかけたい人にはおすすめの勤務先です。

カー用品店

自動車整備工場を併設したカー用品店も増えています。
お客様が店舗で購入したカーナビやルーフボックスなどのパーツを取り付けるほか、エンジンオイルの交換、タイヤ交換、タイヤ預かり、車検や定期点検など、業務は多岐にわたります。
国産車だけではなく輸入車(外車)への対応もあるため、幅広い知識が求められるでしょう。
車全般に詳しくなりたい人や、接客が好きな人にはおすすめです。

その他

ここまで紹介したほかにも、大手運送会社やバス会社、損保保険会社、整備スペースを備えたガソリンスタンドなど、自動車整備士が活躍できる場所は多数あります。

自動車整備士の資格の種類


続いて、自動車整備士の1級、2級、3級と、自動車検査員、特殊整備士(自動車電気装置整備士)の資格について、解説します。
なお、すべての資格を取らないと、上の級を受験することができないわけではありません。
今後どのような業務をしたいかを考えながら、受験資格を選んでいってください。

2級自動車整備士がほとんど

自動車整備士として働く人のうち、もっとも多いのは2級の合格者です。
累計データではありませんが、2014(平成26)年の種別の自動車整備士技能検定合格者数(※)を見ると、全合格者29,265人のうち、1,291人(全体の4.4%)が1級合格者、19,967人(68.2%)が2級合格者、7,313人(25%)が3級合格者、694人(2.4%)が特殊整備士(自動車電気装置整備士)合格者であることがわかっています。


2014年に自動車整備士技能検定に合格した人の割合
人数の増減はあるものの、種別の構成比はほとんど変わりません。つまり、ほとんどの自動車整備士は2級資格の保有者だということです。

※厚生労働省「自動車整備人材の確保・育成に関する検討会 〈検討会報告書〉」P10「種別の自動車整備士技能検定合格者」(PDF)より

基本的な整備業務ができる「3級自動車整備士」

3級自動車整備士はもっとも受験しやすい資格です。ただし、誰もが受験できるわけではありません。
受験資格については、のちほど「自動車整備士の資格の取り方」の段落で説明します。

3級自動車整備士として担当できる業務は、タイヤ交換やオイル交換、点検などの基礎的な業務です。
なお、3級自動車整備士の種類には下記の4種類があります。2級を受けるために、すべての資格を取る必要はありませんので、自分の得意分野を見極め、1つ取得するだけでも問題ありません。
通常は「3級自動車ガソリン・エンジン整備士」を受ける人がほとんどです。

3級自動車ガソリン・エンジン整備士

ガソリン・エンジンで動く自動車の基本的な整備を行うことできる資格。受験者がもっとも多い。

3級自動車ジーゼル・エンジン整備士

ジーゼル・エンジンで動く自動車の基本的な整備ができる資格。

3級自動車シャシ整備士

普通・小型・軽自動車のシャシ部分(エンジン・ボディ以外の箇所)の基本的な整備を行うことができる資格。

3級二輪自動車整備士

バイクや原動機付自転車(原付き)の基本的な整備を行うことができる資格。

全般的な整備業務ができる「2級自動車整備士」

2級自動車整備士の資格があれば、ほとんどの自動車整備業務を担当できます。厚生労働省の「自動車整備人材の確保・育成に関する検討会 〈検討会報告書〉」を元にしたグラフでも解説したように、自動車整備士として働く人のほとんどは2級の資格所有者です。
なお、2級のガソリン、ジーゼル整備士の両方の資格を所持している人の求人需要が高いため、両方取得しておくことをおすすめします。

2級自動車ガソリン・エンジン整備士

ガソリン・エンジンで動く普通自動車の全般的な整備を行うことができる資格。

2級自動車ジーゼル・エンジン整備士

ジーゼル・エンジンで動く普通自動車の全般的な整備を行うことができる資格。

2級自動車シャシ整備士

普通・小型・軽自動車のシャシ部分の基本的な全般的な整備を行うことができる資格。

2級二輪自動車整備士

二輪自動車や原動機付自転車の全般的な整備を行うことができる資格。

高度な整備業務ができる「1級自動車整備士」

1級自動車整備士は2002年に試験が始まった比較的新しい資格で、自動車整備士資格の中では最も高いレベルが要求されます。1級の保持者は、整備士を指導する立場としても期待されています。

なお、1級所持者は自動車整備士全体の3、4%程度と非常に少なく、自動車整備士として働いている人は2級自動車整備士であることがほとんどです。

また、1級自動車整備士は、「1級小型自動車整備士」「1級大型自動車整備士」「1級二輪自動車整備士」の3つに分かれていますが、現在までに1級大型自動車整備士と1級二輪自動車整備士の国家試験は実施されておらず、今後の実施も未定のため、資格保有者はいません。
つまり現状では、1級自動車整備士=1級小型自動車整備士ということになります。

自動車検査員

自動車検査員は、車両整備後の検査や、車検を通すための検査を実施する役割を担います。
自動車整備が確実に行われ、不備がないか、国の基準に適合しているか、整備後の最終チェックを行うのが自動車検査員の役目です。

自動車検査員の試験は、自動車整備士2級以上の資格保有者しか受験できません。なお、自動車検査員になるには、整備主任者としての経験が必須となっており、2級自動車シャシ整備士の資格のみだと整備主任者になれないため、ガソリン、ジーゼル、二輪自動車のいずれかの2級自動車整備士資格を有している必要があります。

なお、指定工場では、自動車検査員保有者を1名以上配置しなければならないため、整備工場での需要は高いといえます。
自動車検査員の資格手当がつく勤務先もありますので、年収アップも見込めます。取得を検討する価値は十分あるでしょう。

自動車整備士の年収アップの方法については、下記を参考にしてください。
【2022年版】自動車整備士の平均年収が454万円よりも高い理由+給料アップの方法とシニア整備士の転職術

特殊整備士(自動車電気装置整備士)

特定整備で新たに認証が必要となった「電子制御装置整備」で注目されているのが自動車電気装置整備士です。
この資格は、特殊整備士という分類にあたり、通常の自動車整備士資格よりも専門性が高い資格です。
近年、自動車の電子化が進み、また特定整備に追加されたことによって、取得するとより整備業務の幅が広がります。

自動車整備士の資格の取り方


機械学科などが設けられた大学や高等専門学校、自動車整備専門学校などに通わない場合は、実務経験で受験資格を得ることもできます。
実務経験として認められる勤務先は、下記になります。

  • 認証工場
  • 優良認定工場
  • 特定給油所
  • 整備作業場があるガソリン、自動車部品、自動車用品の販売事業者
  • JAFの路上故障自動車救援業務


(国土交通省「自動車整備士技能検定等にかかる適正な実務経験の証明について」PDF1〜2ページ目より)。

1年以上の整備経験を積むと、3級自動車整備士の受験資格を得ることができます。

実務経験で受験資格を得る場合のメリットは、学校に通うよりも費用がかからないところです。
デメリットは、2級自動車整備士の受験資格を得られるまでに時間がかかってしまうところです。

経済的な事情がある場合は実務経験を積む方法をおすすめしますが、仕事をしながら試験勉強も進めないといけないため、実務経験で受験資格を得るのは少々難易度が高いと言えます。

資格取得の条件

自動車整備士の資格を取るには、下記の3つの条件を満たす必要があります。

  1. 受験資格を得ること
  2. 学科試験の合格
  3. 実技試験の合格


それでは詳しく見ていきましょう。

まずは受験資格を得る

受験資格がないと、自動車整備士技能検定の受験はできません。
前述した「資格のとり方」で受験資格を得る必要があります。

また、級によって、一定の実務経験がないと受験資格は得られません。
主な必要実務経験年数を挙げると下記のようになります。

自動車整備士1〜3級の受験に必要な実務年数


  • 無資格から3級を受験するには1年以上の実務経験が必要
  • 2級を受験するには2年以上(※)の実務経験が必要
  • 1級を受験するには2級自動車整備士(シャシを除く)を取得後、3年以上の実務経験が必要


※実務経験のみの3級合格者の場合は、3級合格後3年以上の実務経験が必要です。また卒業した学校や科によって、求められる実務経験年数は少々異なります。詳しい条件については、「受験資格について - 国土交通省」に記載がありますので、参考にしてください。

自動車検査員の資格取得条件

自動車検査員になるには、以下の2つの条件を満たす必要があります。

  1. 「自動車検査員教習」を受講する
  2. 「自動車検査員教習」の修了試験に合格する


なお、「自動車検査員教習」を受講するには、下記の3つを満たしていないといけません。

  1. 「整備士主任研修」の受講完了
  2. 「整備士主任」としての実務経験が2級自動車整備士の場合は1年以上、1級自動車整備士の場合は6か月以上ある
  3. 勤務先が指定整備工場(民間車検場)である、または指定を受けようとしている


この「整備士主任」になるには、2級自動車整備士以上の資格が必要なため、自動車整備士を飛び越していきなり自動車検査員になることはできません。
自動車検査員になる方法を、改めて時系列で記載すると、以下のようになります。

  1. 2級自動車整備士(シャシを除く)か1級自動車整備士になる
  2. 「自動車検査員教習」の開始前日までに、指定整備工場で整備士主任として、2級整備士の場合は1年以上、1級整備士の場合は6か月以上務める
  3. 直近の整備士主任研修を受講する
  4. 自動車検査員教習を受講し、修了試験に合格する


なお、自動車検査員資格試験に合格したら、地方運輸局に申請を提出する必要があります。また、自動車検査員として働き続けるには、自動車整備士と違い、定期的に研修を受講する必要があります。
3年以上検査員としての業務を行っていない人が検査員の業務を再開するには、自動車検査員研修を必ず受講しないといけないのです。

学科試験に合格する

受験資格を満たしたら、日本自動車整備振興会が実施する「自動車整備技能登録試験(登録試験)」が受験できます。
2級と3級は年に2回、10月と3月に試験が実施されます。1級は年に1回、3月に試験があります。

学科試験は四肢択一式で出題され、3級では初等知識、2級では一般知識、1級はそれらに加え、口述試験があります。

実技試験に合格する

実技試験は、級に応じ、修理や分解・点検、工具の取り扱いなどが出題されます。
なお、2級以上は専門学校の卒業、3級は自動車整備振興会の技能講習所に通った場合、実技試験は免除されます。

自動車整備士の資格取得にかかる平均費用

自動車整備士の資格取得までにかかる平均費用をご紹介します。
ここでは関東圏にある自動車整備士の専門学校を例として取り上げています。

学費(教科書や作業着代などを含む)

  • 2級自動車整備士(2年制):220~260万円前後
  • 1級自動車整備士(4年制):450~500万円前後


受験手数料

  • 学科試験:1級9,300円 / 2級・3級:7,200円
  • 実技試験:14,000円


自動車整備士に年齢制限はあるのか



自動車整備技能登録試験を受けるには、15歳以上で実務経験が1年以上必要です。
なお、年齢の上限はありませんので、何歳になっても自動車整備士の技能検定に挑戦することは可能です。

ただし、自動車整備士の業務では重いものを運ぶ機会が多いため、ある程度の体力は必要とされます。年齢を重ねていくと、体力に関しては苦労する場面もあるかもしれません。
また、自動車整備士に関わらず、新しく何かを始めると、覚える事柄が多いものです。
日々の学びの機会に対し、ポジティブな気持ちになれるか、といったことも考慮する必要があるでしょう。

中高年でも自動車整備士資格を取って働くことは可能か


中高年になってからでも、自動車整備士を目指すことは可能です。
自動車整備士は技術があれば、年齢がネックで仕事が行えないということはありません。
一番の近道としては専門学校を卒業し、試験に合格する方法です。卒業から合格までには最短でも2年はかかりますので、高い意欲を維持し続ける必要があります。

なお、自動車関係の専門学校の中には社会人が多く在籍している学校もありますので、年齢を気にせずに学べるでしょう。

まとめ

自動車整備士の資格があると、多くの勤務先で活躍できることがわかりました。
なお、「自動車整備士の1日の流れと仕事内容を解説!休日・残業・繁忙期・給与体系は?」という記事でもお伝えしたように、自動車整備士は現在不足しています。
少子高齢社会では、高齢者の自動車整備士の活躍が期待されていますので、ぜひ自動車整備の仕事を探してみてください。

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この記事の監修者

松澤裕介 【キャリアアドバイザー】

キャリアアドバイザーとして、転職相談3,000名以上、紹介企業数10,000社以上に対応。年間1,000名以上の履歴書、職務経歴書を作成。主に医療・介護業界の人材紹介を担当。「シニア人材の転職市場・転職の注意点」などのテーマで記事やコラムを監修。

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