介護にかかる費用はどれくらい?在宅・施設・介護度別の平均額を紹介
介護費用はどれくらい必要? 在宅・施設・介護度別の平均費用をご紹介!
親の介護費用や自分が要介護になる不安…40代あたりから介護の不安を持ち始める人は多いでしょう。この記事では、介護の平均費用や期間、自己負担額が軽減できる制度などを解説しています。
- 目次
- 介護費用の平均額と期間
- 介護度により平均費用は異なる
- 在宅介護にかかる平均費用は月額4.8万円
- 施設介護にかかる平均費用は月額12.2万円
- 在宅介護にかかる費用の内訳とケアプラン例
- 施設介護の種類と費用
- 自己負担額が軽減される介護保険制度とは
- 介護保険適用時の利用上限額は介護度により異なる
- 介護保険制度を利用できる人は要介護支援認定を受けた人
- 介護費用に関するさまざまな補助制度
- 居宅介護サービス費が一定額までになる【高額介護サービス費】
- 施設の食費や居住費が一定額までになる【特定入所者介護サービス費】
- 医療費と介護費の合算額に対して上限のある【高額介護合算療養費制度】
- 介護保険に関する各種税金の控除
- 家族を介護する人が利用できるさまざまな制度
- 介護休業制度
- 介護休暇制度
- 短時間勤務等の措置
- 所定外労働の制限
- 時間外労働の制限
- 深夜労働の制限
- まとめ・介護にかかる平均費用を把握して何ができるか相談を
介護費用の平均額と期間
2021年度の生命保険文化センターによる調査によると、介護費用の平均月額は8.3万円、介護期間の平均は5年1ヶ月です。単純計算すると「8.3万円×61ヶ月」=506.3万円が介護費用にかかる平均額になります。
また、要介護者が暮らしやすいよう自宅をリフォームしたり、介護ベッドなどの備品を購入したりする初期費用の平均額は74万円です。(※1)
これらの費用は介護保険を使用した場合の平均費用です。初期費用と月額費用を合計すると約580万円。想像より大きい金額と感じる人も多いのではないでしょうか?
ただし、この費用は全体の平均です。費用は、介護度や在宅介護・施設介護などにより異なります。
※1:生命保険文化センター|「生命保険に関する全国実態調査」/2021(令和3)年度
介護度により平均費用は異なる
介護保険制度では、被保険者の状況により介護度が7段階に分かれています。最も軽い段階が要支援1、最も重い段階が要介護5になります。
介護度による平均費用は以下の通りです。
※1:生命保険文化センター|「生命保険に関する全国実態調査」/2021(令和3)年度を基に作成
基本的に介護度が上がるに連れ、かかる費用も増えることがわかります。要介護度が上がるに連れ介護サービスを利用する機会が増えることや、要支援3以上になると施設での介護を選ぶ人が多いことなどが原因の1つかもしれません。
在宅介護にかかる平均費用は月額4.8万円
在宅介護にかかる費用の平均額は月額4.8万円です。(※1)
在宅介護とは、自宅で介護をすることです。要介護者は基本的に自宅で生活しながら、必要に応じて訪問介護や通所介護などのサービスを受けます。
■在宅介護のメリットデメリット
住み慣れた自宅で生活できるメリットがある一方、介護される人の負担が大きいことがデメリットです。
※1:生命保険文化センター|「生命保険に関する全国実態調査」/2021(令和3)年度
施設介護にかかる平均費用は月額12.2万円
施設介護にかかる費用の平均額は月額12.2万円です。(※1)
施設介護とは介護施設や有料老人ホームに入所して、介護サービスを受けることです。
入所する施設により若干異なりますが、平均月額の中には家賃や食費が含まれます。介護サービス費用は、含まれる施設と別料金の施設があるため注意が必要です。
両者を比較すると、施設介護は在宅介護に比べ費用負担が大きいことがわかります。しかし、その分、介護する人の負担は軽減されるでしょう。
※1:生命保険文化センター|「生命保険に関する全国実態調査」/2021(令和3)年度
在宅介護にかかる費用の内訳とケアプラン例
では、在宅介護にかかる費用にはどのようなものが含まれるのでしょうか?
要介護認定を受けて在宅介護を選んだ場合は、ケアマネージャーが状況に適したケアプランを立ててくれます。いくつか例を見てみましょう。
※2:生命保険文化センター|在宅サービス・地域密着型サービスの支給限度額と利用の目安を基に作成
在宅介護でも介護サービスを利用すれば、同居家族の負担が多少軽減されることがわかるでしょう。介護度が上がるに連れ利用限度額も上がるため、介護サービスを受けられる回数も増やせます。
なお、介護保険は介護度により利用限度額が定められていますが、上記のケアプランはそれぞれの利用上限額の範囲内で立てられたプランです。
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施設介護の種類と費用
施設介護の場合は、入居する施設によって費用が異なります。介護施設には大きく分けて、公的施設である介護保険施設と民間企業が運営する民間施設があります。
それぞれの特徴を把握し、要介護者や家族の希望に合った施設を選びましょう。
介護保険施設は比較的費用が少ないですが、空きが少ないことが特徴です。入居するまでに数年かかるケースもめずらしくありません。
一方、民間施設は費用は高額になりますがすぐに入居できることが多いです。また、食事やレクリエーションに力を入れている施設も多く、要介護認定を受けていないうちから入居可能です。
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自己負担額が軽減される介護保険制度とは
ここで、改めて介護保険制度について確認しておきましょう。介護保険制度とは、介護サービスを受ける費用を国が一部負担してくれる制度です。
介護保険を適用して介護サービスを受けた場合の自己負担額は原則1割、一定以上所得がある人は2割もしくは3割になります。
介護保険適用時の利用上限額は介護度により異なる
介護度は要支援1から要介護5まで7段階に分かれており、介護度により介護保険適用時の利用限度額は異なります。(※3)
※3:厚生労働省|介護保険の解説「サービス利用者の費用負担等」を基に作成
上記を超える介護サービスを受けることは可能ですが、超えた分は全額自己負担になります。
介護保険制度を利用できる人は要介護支援認定を受けた人
介護保険制度を利用するためには、介護認定を受ける必要があります。申請から認定がだされるまでには30日程度かかるため、介護サービスを受けることを視野に入れている場合は早めの申請が大切です。
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介護費用に関するさまざまな補助制度
介護はいつ終わりがくるかわかりません。介護の平均期間は約5年間ですが、人により差が生じるのが現実です。もちろん、その分費用も高額になります。
費用負担が理由で介護サービスが受けられないことを防ぐためにも、介護保険制度の他にある自己負担額が軽減できる制度を確認しておきましょう。
居宅介護サービス費が一定額までになる【高額介護サービス費】
1つ目は、高額介護サービス費です。高額サービス費とは、1ヶ月の介護費用が一定額を超えた場合に超えた分が返金される制度です。自己負担限度額は所得により異なります。(※4)
※4:厚生労働省|高額介護サービス費を基に作成
ただし、高額介護サービス費の対象となるのは介護保険適用の居宅介護サービスのみです。施設の居住費や食費、福祉用具のレンタルや住宅リフォーム費用などは含まれません。
施設の食費や居住費が一定額までになる【特定入所者介護サービス費】
2つ目は、特定入所者介護サービス費です。特定入所者介護サービス費とは、所得や保有資産が一定以下の介護保険施設の入所者に対する制度です。居住費や食費が自己負担限度額を超えた場合に、超えた分が返金されます。(※5)
まずは、制度の対象者かどうかを以下の表で確認してみましょう。
第1〜第3段階に該当する人は特定入所者介護サービス費の対象者となり、以下の負担限度額を超えた居住費や食費が返金されます。
※5:厚生労働省|介護保険の解説を基に作成
なお、上記の金額は特別養護老人ホームの金額です。介護老人保健施設や介護医療院は若干料金が異なります。
医療費と介護費の合算額に対して上限のある【高額介護合算療養費制度】
3つ目は、高額介護合算療養費制度です。高額介護合算療養費制度とは、医療費と介護保険の自己負担額を合算した金額が以下の基準額を超えた場合に、超えた金額が返金される制度のこと。期間は8月から1年間です。(※6)
※6:厚生労働省|高額医療・高額介護合算療養費制度についてを基に作成
介護が必要な状態の人はなにかしらの持病を抱えているケースがほとんどです。医療費と介護費用を合算できる高額介護合算療養費制度があれば、費用面の負担が軽減されるでしょう。
介護保険に関する各種税金の控除
4つ目は、介護保険に関する各種税金の控除です。介護に関する以下の費用は所得から控除されます。
介護保険に関する各種税金の控除
- 介護保険料の社会保険料控除:介護保険料は所得税・住民税の申告時に社会保険料控除に含まれる
- 介護サービス利用料の医療費控除:介護サービス利用料のうち医療系の費用は医療費控除の対象となる
- 介護認定者のおむつ代の医療費控除:日常生活でおむつの使用が必要な人は、医師が発行する「おむつ使用証明書」を提出することで、おむつ代が医療費控除に含まれる
税金は意外と大きな出費になります。いずれも自分から申請が必要なため、該当している場合は忘れずに控除を受けましょう。
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家族を介護する人が利用できるさまざまな制度
「介護離職」という言葉をご存じでしょうか?ご家族の介護のために働く時間がなくなり離職せざるを得ないことを意味する言葉です。しかし、介護にはお金がかかることも現実。そのため、介護のために離職してしまうことは問題にもなっています。
以降でご紹介する制度は、家族を介護する人が利用できる制度です。介護離職を防ぐために、制度の内容を確認しておきましょう。
対象家族に含まれる人
- 配偶者
- 父母
- 子
- 配偶者の父母
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 孫
なお、以降の解説ででてくる「対象家族」には上記の人が含まれます。
※7:厚生労働省|介護休業制度
介護休業制度
1つ目は、介護休業制度です。介護が必要な対象家族を介護するための休業制度です。対象家族1人につき、通算93日の範囲内で3回まで仕事を休めます。介護休業期間中は、介護休業給付金が受けられる場合もあります。
なお、「休業」とはなにかしらの事情があって働けない従業員が休暇を連続して取ることです。
介護休暇制度
2つ目は、介護休暇制度です。介護が必要な対象家族を介護するための休暇制度で、1日もしくは時間単位で休暇を取得できます。
取得できる日数は対象家族1人の場合は1年間で5日まで、2人の場合は1年間で10日までです。なお、休暇とは会社がその労働義務を免除する日を意味します。
短時間勤務等の措置
3つ目は、短時間勤務等の措置です。介護が必要な対象家族がいる従業員の事業主は、以下のいずれか1つ以上の制度を設ける必要があります。
短時間勤務等の措置
- 短時間勤務制度の導入
- フレックスタイムの導入
- 時差出勤制度の導入
- 労働者が利用する介護サービス費用の助成やそれに準ずる制度の導入
対象家族1人につき、利用開始日から連続する3年以上の期間で2回以上利用できます。
所定外労働の制限
4つ目は、所定外労働の制限です。介護が必要な対象家族がいる場合、介護者は勤務先に対して対象家族の介護の必要がなくなるまで残業の免除を請求できます。
利用回数に制限はなく、利用期間は1回につき1カ月以上1年以内です。
時間外労働の制限
5つ目は、時間外労働の制限です。介護が必要な対象家族がいる場合、介護者は勤務先に対して、1カ月で24時間・1年で150時間を超える時間外労働の制限が可能です。
利用回数に制限はなく、利用期間は1回につき1カ月以上1年以内です。
深夜労働の制限
6つ目は、深夜労働の制限です。介護が必要な対象家族がいる場合、介護者は勤務先に対して、午後10時〜午前5時までの労働の制限が可能です。
利用回数に制限はなく、利用期間は1回につき1カ月以上6ヶ月以内です。
まとめ・介護にかかる平均費用を把握して何ができるか相談を
介護にかかる費用の月額平均は8.3万円、平均期間は約5年間といわれています。介護保険制度を利用すれば自己負担限度額は原則1割になりますが、介護保険が適用される範囲内で十分な介護を受けられる保証はありません。
この機会に、家族や自分が要介護状態になったことを想定して何ができるか家族で相談してみてはいかがでしょうか?
現在は、介護保険制度以外にも介護費用の自己負担額を軽減させる制度や、家族の介護を行う人をサポートする制度などがあります。いつ訪れるかわからない介護のために、どのような制度があるか把握しておくことも大切でしょう。
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参考資料
この記事の監修者
多田眞理子 【介護福祉士】
15年以上介護職に携わる介護福祉士。 特別養護老人ホーム・デイサービス・訪問介護などさまざまな介護施設に従事してきた経験から、介護の現状や問題点を痛感している。現在は子育てをしながら介護職を継続中。