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中高年・シニア必見!健康維持の秘訣とは?

高橋正美 【健康管理士一般指導員】

近年になって健康意識が高まっている理由と、中高年になってから始めておきたい健康への取り組みを紹介します。

目次

この20年ほどで、国民の健康に対する意識は大きく変わりました。
高齢化社会に対応する形で、厚生労働省(当時、厚生省)が2000(平成12)年に「健康日本21」という国民の健康増進のための基本的な方針を制定し、それを具現化するため、2002(平成14)年8月に健康増進法を交付し、2012(平成24)年7月に「健康日本21(第二次)」として改正されました。

健康日本21(第二次)では、生活習慣病予防のため、栄養・食生活、身体活動・運動、休養、喫煙、飲酒、歯・口腔の健康に関する改善目標が掲げられています。
今日の高齢化社会においては、1日も長く健康体で過ごすことが、社会貢献にもつながります。

そこで、健康日本21などをヒントに、中高年のための健康維持の秘訣を探っていきます。


参考資料

  • 健康日本21(公益財団法人健康・体力づくり事業財団)
  • 健康ネット(公益財団法人健康・体力づくり事業財団)


なぜ中高年世代から健康意識を高める必要があるのか

高齢化が進む現代社会では、定年後のシニアライフをいかに元気に過ごすかが重要です。

できるだけ健康を維持して日々の生活を楽しむには、体が思うように動かなくなる高齢期になってからではなく、中高年世代から健康への意識を高めていく必要があります。

なぜ高齢になってから健康を意識するのでは遅いのか、その理由について解説します。

 

長年の悪習慣を改善するには時間がかかるため

加齢とともに生活習慣病のリスクは高まります。

年齢を重ねていくと、臓器や器官の老化が進んで、機能低下が起こり、心臓や血管、腎臓や肝臓などが若い頃とは同じように動かなくなります。

結果として、肥満や高血圧、糖尿病、脂質異常症、骨粗鬆症、さらには悪性腫瘍などのリスクも高くなります。


長年の生活で身についた、良くない食生活や生活習慣を、体が思うように動かなくなってから改善するのは大変困難です。

アンチエイジングや健康維持を目指すには、中高年のうちから食生活や運動習慣を見直し、早くから改善する必要があるでしょう。


高血圧に関連した健康記事


肝臓に関連した健康記事

高齢者ほど肥満になりやすいため

年齢と共に、肥満やメタボリックシンドロームになるリスクは高まります。

肥満は、[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]で算出される値が25以上になった状態であり、メタボリックシンドロームはウエスト周囲径(おへその高さの腹囲)が男性85cm・女性90cm以上で、かつ血圧・血糖・脂質の3つのうち2つ以上が基準値から外れた状態(※1)を指します。


加齢によって基礎代謝が低下すると、普通に生活しているだけでは消費エネルギーが少なくなりますので、若い頃と同じような量や質の食事を続けていると、摂取エネルギーが過剰になり、肥満になってしまいます。



上記コラムの「高血圧と肥満の関係」という項目でもお伝えしたように、肥満者は高血圧になるリスクが非肥満者の約2倍にもなるというデータ(※2)があります。


肥満は高血圧だけでなく、糖尿病や脂質異常などの生活習慣病を引き起こしやすいことでも知られています。

万病の原因にもなる肥満を防ぐためにも、体が動く中高年のうちから、運動習慣を身につける必要があるのです。

 

※1:メタボリックシンドロームの診断基準 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

※2:生活習慣病とエネルギー・栄養素との関連 3 1 高血圧(厚生労働省)より


定年退職後の生活変化に備えるため

定年退職をすると、労働の義務や社会的な責任などから開放されるため、元気いっぱいに第二の人生を歩み始める人もいます。

その一方で生活の激変に心身がついていかず、ゆっくり休める時間を「退屈」だと感じ、健康状態が著しく低下して危うくなってしまう人も大勢います。


定年退職前は、毎日の生活パターンとして通勤や勤務などが組み込まれ、日々やることに追われている人は多いでしょう。

定年退職後は仕事がなくなりますので、毎日自分で何をするかを考え、主体性を持って生活しなければなりません。何かに追われるわけでもない、自分で何をやるかを考えなければいけない、そんな状況に耐えらずに「定年後うつ」などに陥ってしまう人もいるのです。


心身の健康を促すには、動きたくない、何をしていいかわからない、などの状況を回避する必要があります。

そこで、中高年のうちから会社出勤以外に外へ出かけるなど、体を動かす習慣を身につけておきましょう。

いざ定年を迎えたときに「やることがない」「日々をどう過ごしていいかわからない」「退屈すぎて地獄にいるようだ」といった状況が避けられるはずです。

 

中高年が日常生活の改善でまず取り組むべきこと

中高年の段階で、どのようなことに取り組んだら良いかをご紹介します。意識的に取り組んで健康寿命を延伸させ、充実のシニアライフが送れるようにしましょう。

定期的に健康診断を受けて自分の体の具合を知る

会社勤めなどをしていると、会社の指示のもと、一般健診や付加健診などが毎年実施されます。

血液検査や尿検査、レントゲン検査、バリウム検査などの一般的な検査のほか、胃カメラ、大腸カメラ、がん検診、女性の場合は乳がんや子宮頸がん検診などを併せて受診する人も多いでしょう。


健康診断の結果表は、体の通信簿のようなものです。どの数値が去年よりもどう変わったのかを把握し、今後その数値に対してどう向き合っていくのかを決める手がかりにもなります。

健康診断を受けていない人は、特定健康診査などを受けるよう心がけましょう。

健康診断の結果を常に意識し、改善のために運動療法や食事方法などを考えていくことをおすすめします。 

健康的な生活リズムを心がける

生活リズムを整えて、健康な状態を目指しましょう。

人はもともと太陽の光を浴びることで活動を始め、日が沈んだら活動をやめて休息に移る体内リズムを持っています。

太陽に合わせて生活をすると、心身への負担が少なく、健康を促進しやすいのです。


夜更かしや朝寝坊をする習慣はやめて、早寝早起きをするように心がけてください。それが健康への第一歩です。毎日同じくらいの時間に寝起きする習慣を作りましょう。

眠りの環境を整える

質が悪い睡眠は、うつ病や生活習慣病にかかるリスクを高めたり、悪化させたりするリスクがあります。不眠症や睡眠時無呼吸症候群などの人の多くに肥満傾向が見られ、糖尿病になりやすいという研究報告もあります(※1)。


良質な睡眠をとるには、以下のようなことを意識してみてください(※2)。


  • 生活リズムを整える
  • 適度な運動を心がける
  • 寝る前に寝付きを悪くするカフェイン、アルコール、ニコチンを摂らない
  • 部屋の明かり、音、温度、湿度を快適なものに調整する
  • 寝具、ベッド、パジャマを快適なものに調整する(高さの合った枕、硬さの合った寝具、清潔なシーツ、締め付け感のないパジャマや下着など)
  • 不安や緊張状態を緩和する(ストレッチ、マインドフルネス、癒し効果のある音楽をかける、など)


不眠の解消に関連した記事


※1:日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌/30 巻 (2021) 1 号/書誌/本邦の睡眠呼吸障害―ながはまコホートの結果から

※2:睡眠|生活習慣編|気になる病気・健康のこと|大阪がん循環器病予防センター


食習慣を整える

食習慣が乱れていると、健康に悪影響をおよぼします。

体は食べたものによってできていると考え、食事の内容やタイミングを見直しましょう。


とくに朝は、太陽の光を浴びて体内時計をリセットする重要なタイミングです。
起床後の1時間以内に脳のエネルギーを補うためには、ご飯やパンなどの糖質を摂ることが望ましいでしょう。
体内時計のリズムを整える効果があるセロトニン(精神を安定させる働きをする脳内の神経伝達物質)の分泌を高めるために、肉、魚、乳製品、豆類などに多く含まれるトリプトファン(必須アミノ酸の一種)を摂ることも大切です。
日中にセロトニンをしっかり分泌させると、夜にはメラトニン(催眠作用があるホルモン)の分泌量が増え、質の良い睡眠につながります。


また、1日3食を必ず食べるようにし、栄養バランスを重視した献立を考えてください。

朝ご飯を抜いてしまったり、夜遅くに夜食を食べたりすると、臓器には多大な負担がかかります。


なお、夜食や間食は摂取エネルギーの過剰につながるので避け、3食で摂取するエネルギー量も、年齢相応になるように意識してください。


1日に必要な推定エネルギー必要量については、日本医師会ホームページで紹介されている「二重標識水法」で算出できます。

下記ページで、自分の年齢と体重をもとに1日の適切なエネルギー量を確認しましょう。

日本医師会ホームページ「健康の森」 


また厚生労働省のe-ヘルスネットの「食事バランスガイド」も参考になりますので、確認してみてください。

食事バランスガイド(基本編) | e-ヘルスネット(厚生労働省)

運動習慣を身につける

余ったエネルギーを消費しつつ、体力をつけるためには、運動習慣が欠かせません。

普段から運動をする習慣がなかった人は、自分が興味を持って取り組めそうなスポーツや運動を探してみましょう。


なお、有酸素運動と無酸素運動を両方取り入れると、健康効果は高まります。

心肺機能を高め、脂肪を消費できる有酸素運動と、筋肉をつけやすい無酸素運動を習慣化すると、老後の健康維持も容易になります。


シニアでも無理なく続けられる運動21選!やり方や注意点も解説


体重と体脂肪率の管理をする

食事や運動の習慣を変えると、体重や体脂肪率が大きく変化することがあります。

ただし急激な変化は体にかかる負担が大きく、体調を崩しやすくなります。体重と体脂肪率を体重計や体組成計で毎日決まった時間に測定し、徐々に減らしていくなどの管理を行いましょう。

大きな変化があるときは、食事や運動の内容を見直します。

すでに肥満の人は、ゆっくりと体重を減らすように心がけてください。

節酒と禁煙を進める

アルコールとたばこは、臓器へ多大な負担をかけます。

アルコールは少量なら健康に良いという見解もありますが、過剰な摂取は控えるべきです。

 

生活の中に楽しみとやりがいを作る

老後は何を楽しみに生きていくのか、どんなことにやりがいを持って生きていくかを考えましょう。

健康は精神面に支えられている部分も大きく、物事に対して意欲的に取り組んでいる人は、健康体であることが多いようです。

中高年になったら、この先もずっと取り組んでいけそうな趣味や運動がないかを、探してみましょう。

 

健康意識を高めるコツ

中高年になってもまだ若いという気持ちがあると、シニアになってからもきっと元気でいられるから大丈夫だと考えがちです。

しかし、老化に伴って、だんだんと無理がきかない体になってきてしまうのは事実です。

どのようにして健康意識を高めたら良いかを確認しておきましょう。

 

健康情報の取得を心がける

健康意識を高めるためには、国や地方自治体などの公的機関や、病院やクリニックなどの医療施設などが公開している健康情報を収集しましょう。

たとえば健康日本21(第二次)のサイトや、厚生労働省のe-ヘルスネットなどには、中高年や高齢者向けの健康情報もわかりやすくまとめられています。

生活習慣病のリスクをしっかりと認識すると、健康維持へのモチベーションも高まるはずです。


参考リンク

 

健康寿命を意識する

健康寿命とは、日常生活に制限のない期間を示す年齢のことです。


2019(令和元)年時点の日本人の平均寿命は、男性では81.41歳、女性では87.45歳で、女性のほうが6歳ほど長生きだということが知られています。

一方で健康寿命はというと、男性は72.68歳、女性は75.38歳です。


つまり、男性は平均で9年弱、女性は12年も不健康な期間を過ごすということです。

男女ともに70代になると、体のあちこちに不調が出て、健康に支障をきたしてしまう人が多くなります。

男女別の平均寿命と健康寿命の差グラフ

出典:健康寿命の令和元年値について - 厚生労働省(P2「健康寿命の推移」より)


老後に介護が必要になると、自由に活動するのが難しくなり、生活の質も低下してしまいます。

そこで、「健康寿命を一日でも延ばす」という考え方を持つと、健康への意欲も高まります。

楽しく充実したシニアライフを送るためには、心身の健康の維持が重要です。一日も長い健康寿命を目指し、意識的に健康への取り組みをしていきましょう。


健康寿命に関してはこちらの記事もご確認ください。

健康寿命ランキングから考える!充実した老後を送るための対策とは?

 

まとめ:中高年から健康を意識して行動しよう

充実した老後生活を送るには、健康な心身の存在が欠かせません。健康への取り組みは、老後になってからではなく、気付いた時点から積極的に始めましょう。

健康に関する情報を集めてみると、食事や運動など、さまざまな生活面の改善が必要だとわかります。

早い段階から行動にうつし、改善に取り組んでいきましょう。

この記事の監修者

高橋正美 【健康管理士一般指導員】

日本FP協会所属のファイナンシャルプランナー(CFP®認定者)として相談業務にあたる中、お客様の急死や、若い仲間の大病による入院などを目の当たりにして、生活習慣病予防の大切さを痛感。医療費等の支出削減を図るためにも、健康管理が重要であることに気づき、健康管理士一般指導員の資格を取得。お客様相談の中で、必要に応じて健康寿命延伸のための情報も提供している。

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