OJTとはどんな研修?OFF-JTとの違いや介護業界のモデルケースも!
OJT?OFF-JTとは? 研修内容や進め方を徹底解説!
新人教育でよく導入されるOJT(On the Job Training)。実際に働く現場での研修を意味します。この記事では効果的なOJTの進め方やOFF-JTとの違いを解説します。
- 目次
- OJTとは?
- OJTとは現場研修のこと
- OJTを実施する企業は60.2%もある
- OJTとOFF-JTの違いはアウトプット中心かインプット中心か
- OJTにはどんなメリットがある?
- 研修生側のメリットは即戦力の育成や不安の解消につながること
- OJT担当者のメリットは自身の知識やマネジメント能力が向上すること
- 企業側のメリットは社内コミュニケーションの活性化やコスト削減が可能なこと
- OJTにはどんなデメリットがある?
- 研修生側のデメリットは成長速度が異なること
- OJT担当者側のデメリットは負担が大きいこと
- 企業側のデメリットは生産性が低下する可能性があること
- OJTの進め方とは?
- ステップ①目標を明確にする
- ステップ②詳細な研修計画を立てる
- ステップ③OJT担当者を選ぶ
- ステップ④OJT担当者教育を行う
- ステップ⑤OJTを実施する
- OJTを効果的に進めるためのポイントはある?
- 成長プロセスを明確にしてOJT担当者に統一認識させる
- 担当者に丸投げせずに社内全体で取り組む
- 適切なOJT担当者を選ぶ
- 研修生の個性を読み取る
- OJTに適している職種はある?
- OJTに適しているのはマニュアル化しづらい職種
- 【ケーススタディ】介護業界でのOJT例
- まとめ・OJT研修はさまざまな業界で導入されている
OJTとは?
企業の新人研修などでよく導入されるOJT。「OJT」という言葉を聞いたことがあっても、どのような研修なのかイマイチ把握できていない人もいるかもしれません。
まずは、OJTがどのような内容なのかを確認していきましょう。
OJTとは現場研修のこと
OJTとは「On the Job Training」の略語のこと。「OJT研修」と呼ばれることも多く、日本語では「現場研修・実地研修・職場内研修」と似た意味があります。
OJTでは、職場の先輩が新入社員などの後輩に対して、実際の業務を通して知識やスキルを教えます。実践形式のため、マニュアルでは学べない知識が身に付く教育方法です。
基本的には1人の研修生に対して1人のOJT担当者が付くため、研修生のレベルに合わせて教育が進められることも特徴です。
業種によっても異なりますが、実施期間は3ヶ月〜1年程度が一般的。多くの企業で導入されています。
OJTを実施する企業は60.2%もある
厚生労働省のデータによると、2022年度に正社員に対して計画的なOJTを実施した事業所は60.2%もあるそうです。
■OJT実施状況
※1:厚生労働省|令和4年度「能力開発基本調査」を基に作成
また、「誰に対してOJTを行ったか」の調査では、新入社員だけでなく、中堅社員や管理職に対しても行っている企業が意外と多いこともわかりました。
※1:厚生労働省|令和4年度「能力開発基本調査」を基に作成
それだけ、OJT研修にはさまざまなメリットがあるということでしょう。
OJTとOFF-JTの違いはアウトプット中心かインプット中心か
OJTと同じように「OFF-JT」という言葉を聞いたことがある人もいるでしょう。
OFF-JTとは「Off The Job Training」の略語のこと。実際の職場ではない場所で、仕事に関する知識を身につける研修です。
OFF-JTの例
- 新入社員向けの全体研修
- ビジネスマナー研修
- スキルアップ研修
- 通信教育やeラーニング など
OJTはマンツーマンで行うのに対してOFF-JTは一度に大人数で行うことが多く、「OJTはアウトプット中心・OFF-JTはインプット中心」の研修方法という違いがあります。
厚生労働省のデータによると、2022年度に正社員に対してOFF-JTを実施した事業所は71.5%でした。
■OFF-JT実施状況
※1:厚生労働省|令和4年度「能力開発基本調査」を基に作成
OJTとOFF-JTを繰り返し行うことで学んだことをすぐに実践できるため、短期間で知識やスキルが取得できる効果が期待できます。
OJTにはどんなメリットがある?
多くの企業で導入されているOJTにはどのような効果があるのでしょうか?
■OJTによるメリット
研修生側 |
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OJT担当者側 |
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企業側 |
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実は、OJTのメリットは研修生だけにある訳ではありません。OJT担当者や企業にも多くのメリットをもたらす可能性があるのです。
研修生側のメリットは即戦力の育成や不安の解消につながること
研修生側には以下のようなメリットがあります。
研修生側のメリット
- 実践的に仕事を学べるため、早く即戦力になる
- すぐに業務の振り返りができる
- 個人の能力に合わせた研修が受けられる
- 仕事に対する不安の解消や孤立防止につながる
- 仕事に対する責任感が生まれる など
OJTの最大のメリットは実践的な仕事を学べることです。研修とはいえ実際に担当する業務を行うことによって、マニュアルでは学べない知識が得られます。
また、すぐに業務の振り返りが行えることにより、「何が問題だったのか」「今後どのようにすればいいのか」など、反省と改善が自然と行えることもメリット。「Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)」のPDCAサイクルで仕事が進められます。
さらに、大勢で受ける研修は研修内容を個々に変えられませんが、OJTなら個人の能力に合わせた研修が受けられます。
その結果、仕事に対する不安が解消されたり、新入社員の孤立防止にもつながるでしょう。実際に仕事を自分で進めたことにより、仕事に対する責任感も生まれるはずです。
OJT担当者のメリットは自身の知識やマネジメント能力が向上すること
OJT担当者側には以下のようなメリットがあります。
OJT担当者側のメリット
- OJT担当者自身の知識やスキルの向上
- マネジメント能力が身に付く
- 先輩としての責任感が生まれる など
OJT担当者側の最大のメリットは、自身の知識やスキルが向上することです。
自分自身がしっかり理解していないと、人に何かを教えることはできません。そのため、後輩を指導することになったOJT担当者は、普段行っている業務を見直すはずです。
今まで曖昧にしていた業務や苦手な業務があった場合は、それらを克服しようとするでしょう。
自分なりのやり方で進めていた業務も「本当にこれで正しいのか」と疑問を抱き、初心に戻って学び直す人も多いはずです。その結果、新しい知識が増えたりスキルが身に付くこともあるでしょう。
このように、人間は人に何かを教える立場になると「勉強しなさい」と言われなくても自発的に学ぶ人が多いのです。
また、OJTを行う際は計画に沿って研修を進める必要があります。研修生の個性や能力を判断しつつ研修を進めることで、自然とマネジメント能力やスケジュール管理能力が身につきます。
担当している研修生が頼ってきたりうまく仕事を教えられなかったりすることで、自分が周囲に甘えていたことに気づく人も多く、職場の先輩としての自覚も芽生えるでしょう。
企業側のメリットは社内コミュニケーションの活性化やコスト削減が可能なこと
企業側には以下のようなメリットがあります。
企業側のメリット
- 社内のコミュニケーションが活発になる
- コスト削減につながる
- 即戦力の育成につながる など
OJTでは必然的にコミュニケーションが増えます。大勢で受ける座学研修は講師が一方的に話して終わってしまうことが多いですが、OJTでは実際の業務を進めるため必然的にコミュニケーションが生まれます。
その結果、遠慮しがちな研修生と先輩の距離感が近くなり、社内のコミュニケーションが活発になるでしょう。
また、外部から特別な講師を招く必要もないため、コスト削減にもつながります。もちろん、新入社員が即戦力になることも期待できます。
OJTにはどんなデメリットがある?
メリットがたくさんあるOJTですが、どのようなことがデメリットになるのでしょうか?ここでは、OJTによるデメリットをご紹介します。
■OJTによるデメリット
研修生側 |
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OJT担当者側 |
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企業側 |
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研修生側のデメリットは成長速度が異なること
研修生側には以下のようなデメリットがあります。
研修生側のデメリット
- OJT担当者の能力により成長速度が異なる
- 体系的な教育は進めづらい など
OJTの場合、研修生の講師はそれぞれのOJT担当者です。そのため、OJT担当者の能力にばらつきがあると研修生の成長速度が異なってしまいます。
また、研修生の本来持っている能力にも差があるため、同じ時期にOJTを開始しても早く研修が進む人とそうでない人の差が生じやすい傾向にあります。
加えて、実際の業務を行いながら知識やスキルを身につけていくため、体系的に学ぶことは難しいでしょう。
OJT担当者側のデメリットは負担が大きいこと
OJT担当者側には以下のようなデメリットがあります。
OJT担当者側のデメリット
- 負担が増える
- OJT計画作成の手間がかかる など
OJTを担当するからといって、OJT担当者の普段の業務がなくなる訳ではありません。企業にもよりますが、一般的には日常業務を行いながらOJT研修も進めるケースがほとんどです。
その結果、OJT担当者の負担や手間は明らかに増えることになります。
企業側のデメリットは生産性が低下する可能性があること
企業側のデメリットは、生産性が低下する可能性があることです。
当然ですが、OJT担当者が研修に時間を費やす分、OJT担当者の仕事の進みはそれまでより遅くなります。
しかし、研修生が短期間で即戦力になることを考慮すると、一時の生産性の低下はそれほど大きなデメリットにはならないかもしれません。
OJTの進め方とは?
メリットの大きいOJTですが、行き当たりばったりで進めてしまうと良い効果がでない場合もあります。ここでは、基本的なOJTの進め方をご紹介します。
ステップ①目標を明確にする
まず最初に行うことは、OJTの最終目標を明確にすることです。
研修生にどのように成長してほしいのか
- 業務上の知識やスキルを身につけてほしい
- 社会人としての自覚をもってほしい など
OJT担当者にどのように成長してほしいのか
- 今よりスキルアップしてほしい
- 自発的な仕事ができるようになってほしい など
上記のように、研修生やOJT担当者としてどのような人物になってほしいのか、理想像を掲げてみましょう。明確な目標を定めると、研修計画が立てやすくなるはずです。
ステップ②詳細な研修計画を立てる
目標を定めたら、そこにたどり着くための詳細な計画を立てます。まずは、最終目標を達成するための段階ごとの目標を定めましょう。
段階目標の例
- 「1週間後までに、取り扱い商品を覚える」
- 「1ヶ月後までに、マニュアル通りの対応ができるようにする」
- 「3ヶ月後までに、イレギュラー対応に応えられるようにする」
- 「OJT終了までに、独り立ちできるようにする」
目標を立てる際は、「いつまでに」「どのような仕事を」「どのくらい」できるように研修を進めるか、細かく定めていきましょう。
段階ごとの目標を定めたら、研修生に与える業務の量と教える順番を具体的に計画します。業務を教える際は、よく起こる失敗例も交えて、注意すべきポイントも伝えるよう意識してください。
失敗例を伝えることで、研修生が自分と同じ立場の人が陥りやすい注意点を意識するはずです。
業務の量は、研修生が「多すぎて無理」と感じさせない量、かつ、「簡単過ぎて退屈」と感じさせない難易度の仕事を、研修生の個性を把握しつつ検討しましょう。
適度な難易度の業務量を与えることで、仕事へ挑戦する気持ちや終わったときの達成感を感じてもらうためです。
ステップ③OJT担当者を選ぶ
詳細なトレーニング計画を立てたら、OJT担当者を選任します。
研修生の成長は、担当者次第で大きく異なります。一般的には、研修生と同じ部署の先輩や近い上司が担当者になりますが、誰でもいいという訳ではありません。
できる限り、以下に当てはまるような担当者を選任しましょう。
OJT担当者に向いている人
- 人の良いところを見つけられる人
- 褒め上手・叱り上手な人
- コミュニケーション能力のある人
- 日常業務とOJT研修の両方をバランス良く取り組める人
- 観察力のある人 など
OJT担当者は能力やスキルがあるに越したことはありませんが、研修生とあまりにも年齢やキャリアが離れ過ぎていると研修生が恐縮してしまい、うまくコミュニケーションがとれない可能性があります。
OJTを効果的に進める上で、研修生と担当者のコミュニケーションは必須です。仕事上やプライベートの悩みを話せるような関係性が理想的。年齢や役職にも注意してOJT担当者を選びましょう。
逆にOJT担当者に向いていないのは以下のような人です。
OJT担当者に向いていない人
- 業務上の知識やスキルが不足している
- 人とコミュニケーションをとることが苦手
- OJTの目標を理解していない など
人とのコミュニケーションは「伝える・受け取る・読み取る」の3つの要素で成立します。そのため、相手の意見を否定的に受け取る傾向のある人には注意しましょう。
ステップ④OJT担当者教育を行う
OJT担当者を選任したら、担当者を育成する教育を行います。効果的なOJTを進めるために、担当者にはまず教育を行う目的を理解してもらいましょう。
教育を行う目的
OJT担当者教育を行う目的は、主に以下の2つです。
OJT担当者教育を行う目的
- OJTを行う目的を理解してもらうため
- 担当者としての意識を芽生えさせるため
1つ目は、OJTを行う目的を理解してもらうためです。OJTは、目的を達成するために計画的・継続的に行うことが大前提。まずは、OJTを行う目的や基本的な取り組み方を理解してもらいましょう。
2つ目は、OJT担当者としての意識を芽生えさせるためです。担当者は日常業務を進めながらOJTも行うため、教育を受けないと「日常業務の延長」としか考えられない人もいます。
しかし、担当者教育を受けることによって、「自分が後輩を育てる」という責任感が生まれる人は多くなります。
OJT教育の内容
OJT担当者教育では以下の内容を学んでもらいます。
OJT教育の内容
- コミュニケーションの取り方
- 指導の仕方
- 説明の仕方
- OJTの進め方
- メンタルケアの仕方
- マネジメントの仕方 など
これらの内容を学んでもらい、効果的なOJTの進め方を取得してもらいましょう。
ステップ⑤OJTを実施する
OJT計画や担当者の準備が整ったら、いよいよOJTを実施します。OJTでは以下のサイクルを繰り返し行うことが基本です。
OJTの基本サイクル
- やってみせる(Show)
- 説明する(Tell)
- やらせてみる(Do)
- 評価・指導する(Check)
①やってみせる
1つ目のステップは、やってみせる(Show)ことです。
まずは、OJT担当者が研修生の前で実際の業務を進めます。ここでの目的は、業務の流れや全体のイメージをつかんでもらうことです。
②説明する
2つ目のステップは、説明する(Tell)ことです。
業務のイメージをつかんでもらったら、業務のやり方や注意点などを説明します。何のためにその業務を行うのか、理由も説明すると自分の仕事の意味を理解してもらえるでしょう。
説明の後には、不明点や質問がないか確認することも大切です。
③やらせてみる
3つ目のステップは、やらせてみる(Do)ことです。
一通り業務の流れを理解してもらったら、実際に研修生に仕事をやらせてみます。ここでは、「できなくても当たり前」という気持ちで見守るようにしてください。
研修生は自分で業務を行うことに不安を感じているため、横でいつでもフォローできる体制を整えておきましょう。
④評価と指導をする
4つ目のステップは、評価と指導をすることです。
業務が一段落したら、担当者は評価と指導を行います。業務がうまく進められなくても、1つは良いところを見つけて褒めるよう心がけてください。もちろん、できていないことを伝えることも大切です。
指導では、次回は今回よりも成長するよう、具体的なアドバイスを行ってください。OJTの特徴でもあるマンツーマン指導が活かせる場面です。
同時に、研修生自身に反省と改善を行わせましょう。まずは、研修生自身にどの程度業務ができたのか自己採点をさせてください。その際、次回に向けての改善点も考えさせましょう。
言われたことをそのまま行うより、自分自身で改善点を考える方がより早く成長するためです。
OJTでは、この基本サイクルを繰り返し行うことにより、実践的な知識やスキルを身につけていきます。
OJTを効果的に進めるためのポイントはある?
OJTでは、計画的な研修を継続することで効果が得られることは大前提ですが、いくつかのポイントを意識することで、より効果のある研修が行えます。
以下のポイントを意識してOJTを成功させましょう。
成長プロセスを明確にしてOJT担当者に統一認識させる
1つ目は、成長プロセスを明確にして、OJT担当者に統一認識させることです。
目標や計画を立てる重要性はこれまでに解説した通りですが、その内容をOJT担当者にしっかり認識してもらうことも重要です。OJT担当者が複数いる場合は、認識してもらう内容を統一させましょう。
OJTでは通常業務も並行して行うため、計画通りに進まないケースも多いはず。イレギュラー対応に追われ、業務を進める順番がずれてしまうこともあるでしょう。
しかし、「研修生にこうなってもらいたい」という目標や必ず行うべきプロセスが明確になっていれば、多少計画から脱線しても、OJTの効果はしっかり表れるはずです。
担当者に丸投げせずに社内全体で取り組む
2つ目は、担当者に丸投げせずに同じ部署全体や社内全体で取り組むことです。
OJTの主役は担当者と研修生ですが、担当者にすべて丸投げしてしまうとうまく研修が進まない可能性があります。
OJT担当者に選ばれるのは一般的に中堅社員が多いため、担当者より上の立場の人がOJTがうまく進んでいるか定期的に確認することが重要。現在の状況や問題点を確認し、フォローやアドバイスを行うことで、担当者の不安も解決されます。
つまり、「研修生⇄OJT担当者」で行うOJTの基本サイクルを、「OJT担当者⇄担当者の上司」でも行うことで、より効果のあるOJTが進められるのです。
「毎週金曜日にはOJTの進捗状況を報告相談する時間を設ける」など、あらかじめ体制を作っておくと、うまく研修が進むでしょう。
適切なOJT担当者を選ぶ
3つ目は、適切なOJT担当者を選ぶことです。
「OJTの進め方」でもお伝えした通り、OJTの成功は担当者に大きく委ねられます。そのため、「同じ課の先輩だからこの人が担当者」を適当に選ぶのではなく、業務上のスキルや人柄を確認した上で、できるだけ適切な人を担当者に選びましょう。
複数の担当者が必要な場合は、担当者のスキルを統一することも重要。対策として「1ヶ月ごとに担当者を変更する」制度を取り入れてみることもおすすめです。
物事の感じ方は人それぞれ違うため、担当者が変わると研修生に良い影響を与えることもあるでしょう。
社員が少なく、担当者を選ぶ余地がない場合は、OJTに入る前にしっかり教育をして担当者としての意識をもってもらうようにしてください。
研修生の個性を読み取る
4つ目は、研修生の個性を読み取ることです。
OJT担当者は基本的には計画に沿って研修を進める必要がありますが、研修生の個性に合うアプローチをすることも大切です。
例えば、「物おじしない人には実践教育を早めに行う」「慎重な人には知識の確認をしっかり行ってから実践にうつる」など、研修生の性格や個性を読み取り研修を進めることで、研修生の仕事へのモチベーションが上がる可能性があります。
これは、与える仕事の難易度も同様。「チャレンジ精神が強い人には、難易度の高い仕事を覚えさせて達成感を味わってもらう」「1つずつ着実に進めたい人には、適度な難易度の仕事を繰り返し行わせ、仕事への不安をなくさせる」など、コミュニケーションをとりながらうまく研修を進めましょう。
すると、研修生も「この先輩は自分のことを理解してくれている」と感じ、信頼関係が生まれるはずです。
OJTに適している職種はある?
さまざまな業界で取り入れられているOJT。どんな業界でも一定の効果はありますが、特に向いているのはどのような業界なのでしょうか?
ここでは、OJTに適している職種をご紹介します。
OJTに適しているのはマニュアル化しづらい職種
OJTに適しているのは、業務をマニュアル化しづらい職種です。基本的なマニュアルはあるものの、実際にはイレギュラー対応が発生しやすい職種や、臨機応変な対応が必要な職種が向いています。
OJTに適している職種
- 営業職
- 接客業
- サービス業
- 技術職 など
上記のような顧客対応が含まれる業務は、相手の反応により臨機応変な対応が求められます。
研修生1人では予期せぬ状況に対応することは難しいですが、OJT担当者が横にいればフォローを受けながら仕事が進められます。
一方、OJTにあまり適していないのは「製造・品出し・レジ打ち」などのマニュアル通りに進めることが重要な職種や機械的に判断できる職種です。
これらの職種は、OFF-JTでしっかり知識や仕事の進め方を覚えてから研修を進める方が研修生の成長が早いでしょう。
【ケーススタディ】介護業界でのOJT例
人手不足が続く介護業界では介護職未経験の人を雇うことも多いため、実践的に学べるOJTは多くの施設で取り入れられています。
実際に、介護職に就いている人のうち63.1%が介護職未経験者でした。(※3)
ここでは、ケーススタディとして介護業界のOJTをご紹介します。
介護職未経験者にとって、現場で知識やスキルが身に付くOJTはとても効率的な研修方法です。先輩が業務を行っている姿を見ることで業務のイメージがしやすく、早くスキルが身につきます。
介護業界では、まずOFF-JTとして介護に関する最低限の知識を学びます。
■介護業界OFF-JTの内容
高齢者との接し方 |
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基礎的な |
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介護技術 |
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知識を学んだ後は実践にうつりますが、OJT担当者は以下のような職業能力評価シートを利用して、研修生の理解度を細かくチェックするケースが多いです。
■職業能力評価シートの一例
出典:厚生労働省|在宅介護業の職業能力評価シートhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000093927.html
知識や技術に関する細かいチェック項目がたくさんあり、それぞれの項目に研修生自身が評価する部分と研修生が評価する部分があります。このシートによりその日に行った業務を振り返ることができるため、自然と反省と改善が行えます。
※2:公益財団法人介護労働安定センター|令和3年度「介護労働実態調査」結果の概要について
まとめ・OJT研修はさまざまな業界で導入されている
OJTとは「On the Job Training」の略語で、職場の先輩が新入社員などの後輩に対して、実際の業務を通して知識やスキルを伝える研修方法です。
OJTを行うことにより、研修生だけでなく教育する立場の担当者にも良い変化が期待できます。
同時に、企業側には即戦力の育成やコスト削減効果などの効果が期待できるため、今後も導入する企業は増えていくでしょう。
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参考資料
厚生労働省|令和4年度「能力開発基本調査」
公益財団法人介護労働安定センター|令和3年度「介護労働実態調査」結果の概要について
この記事の監修者
松澤裕介 【キャリアアドバイザー】
キャリアアドバイザーとして、転職相談3,000名以上、紹介企業数10,000社以上に対応。年間1,000名以上の履歴書、職務経歴書を作成。主に医療・介護業界の人材紹介を担当。「シニア人材の転職市場・転職の注意点」などのテーマで記事やコラムを監修。